39章 新たな龍
内心楽しかったデートを終えて城に戻ったイリスを襲うのは…
デートが終わって次の日になって城にもどって少しの時間を過ごした。私はここで過ごしているのも時間の無駄なので学院に戻ってみる事にしてみようかな。一応クルスに聞きに行く事にした。
「クルス、そろそろ学院に帰ろうかなと思うんだけど」
「えっ!もう帰るの!?」
「うん、ここに居たら暇だから」
「仕事はあるよ」
「それは私がしてもいいような物ではない事は確かだよね」
「う、そうね」
「私は明日出立するわね」
「分かったわ。じゃあ、色々と準備しておくわね」
「色々ってところが気になるけど気にしないでおくわ」
私は身の回りの物を整理して大きなトランクに荷物を詰め込んで読書を始めた。しばらくすると、ミーシャが私を昼食に呼びに来てくれた。私はその後ろに着いていき、テーブルに着いた。私はそのまま食事を楽しんで紅茶をミーシャが淹れてくれている。私は経験的にはまだ抜かれていないが、おいしい入れ方ではもうすでに抜かれていると思う。
紅茶を嗜んだあとに私は自室に帰り、私は再び読書を始めた。好きなことをしていると時間は一瞬で過ぎていくのが良く分かる。ふとおもむろに窓を見てみると朱色に染まった陽光が窓から差し込んできている。私は“もうそんな時間なのか!”と思った。が、いつものような事なので私はあまり気にせず厨房に歩いて行った。少し小腹が減ったので何かを作ろうと思ったのだ。私は、あたりにある物を探してトマトとパスタがあったのでもう少しないかなと思って調べてみると、胡椒と唐辛子もあったのでペペロンチーノとカプレーゼを作った。匂いにつられて何人かの人も来たが、大丈夫想定内だったので。どこぞの三人も来ましたとも脇目も振らず一目散にこの人たち今日は外で芝生の整備担当のはずだったんだけどな。段々人間を超えてきて怖いです。
「おいしいですか?」
「「はい!とてもおいしいです」」
いつもながらよく揃うな声が。私は、ペペロンチーノを作ったフライパンやお皿を洗おうとすると、あの三人が慌てて止めに来た。
「これは私達がやっておきますので大丈夫ですよ」
勢いがあまりに強かったので、私は思わず気圧された。なので私は任せて厨房からでた。そのあと私の使った食器関係をめぐって争いがあった事なんて私は知りませんよ。本当だよ。
そのあとしばらくして夕食の時間になったので、私はテーブルについていた。しばらくして料理が運ばれてきた。私は無言で料理を食べていると最期にデザートが出てきた。私は少し驚いた。いつもはこんな物はないからだ。これはレアチーズケーキじゃあないか。しかもただのレアチーズケーキじゃあないぜ。上のにオレンジの層が出来ている。とてもおいしそうだ。そのケーキと合わせて紅茶も持ってきてもらえた。
時間が経って、私はお風呂に行き早く寝た。朝になり、早くに城を出立した。何かを仕込んだようなのだが、何を仕込んだのだろうか。
「ミーシャ何か荷におかしな物はある?」
「何もありませんね。しかし、大量の茶葉が沢山詰まっていてます」
「そ、そんなに大量に入っているの?」
「はい、大体学院の皆さんに5週分ぐらい配ってもあまりあるぐらいにです」
「え、えぇ、分かったわ」
正直そんなにあっても使いきれるかわ分からないのが事実だ。しかし、使わない訳にはいかないのも事実それを使うには生徒会のみんなに提供する事が出来るので私直々に給仕をすれば良い話。それに、私の腕を上げる贄になってもらおう。その方がお互いとしてもウィンウィンな関係といえるだろう。みんなもおいしいお茶が飲めるそれに私の腕も上がるという完璧な作戦だ。それに余る事はないと思うが、思惑が外れたときはカーミラ先生に渡せば喜んで受け取ってくれと思う。
「これの処理の方法を思いついたわ」
「この数ですので、前に作られたシフォンケーキに入れてはと考えていたのですが」
「確かにそれもいい手なのだけどね。折角の最上級グレードなのだから飲んで楽しみたいの」
「そうですか、わかりました」
「あ、それとね。その紅茶を淹れるときは私が淹れてあげたいからミーシャは私が執務室にいるときなんかに淹れてもらえると助かるかな」
「分かりました。そう致しましょう」
分かってもらえたようだ。馬車の中に本に王国の本を持ち込んでいたのでそれを読んでいると、ミーシャがお昼の準備を始めてくれていたので少し待つと声を掛けてくれたので私はご飯を食べた。やはり外で食べるご飯は最高だ。正確には外ではないのだが、それでも気の持ちようで味は少しでも変わるだろう。
「ねぇ、そういえばこの近くには何があるの?」
「地図的にこの近くになってきますと、小さな村があったりします」
「この辺りは良く通ってもあまり印象が残る事がないから覚えていないのよ」
「確かにそうですね。特徴のあるような地形もしていませんしね」
確かに地形がやたらボコボコでもないし丘陵が広がっている訳でもないし、確かに覚えやすくはないな。と思っていると私はおもむろに本を手にとって再び読み始めた。しばらく時間が経っただろうか、少しウトウトしてきたので眠らせてもらう事にした。寝ていると前にであった龍とは違う龍に出会った。
「ここに来れる者がいたとは」
「ん?、うわ!此処は一体?」
「自然とこちらに来てしまったのか。まぁいい。お主を他の龍と何らかの縁を持っているだろう?」
「え、えぇ。持っています」
「どれ儂とも縁を結ぶ気はないか?」
「それは、良いですが。自己紹介もしていないようでは何とも」
「おぉ、確かに忘れておったわ。何久しく誰とも話していなかったのだ。すっかり忘れておったのだ。場所の説明を先に行い、私から自己紹介をするがいいか?」
「お願いします」
「では、改めて此処は、儂が住んでいる霊樹の中の空間だ。正確には儂の精神世界を霊樹の場所に似せて作った場所じゃ」
「そうなんですか。あ、私の名前はドラゴシア・イリスと言います」
「あい、分かった」
「聞きたい事がいくつかあるのですが、良いでしょうか?」
「なんじゃ?」
「それはですね、私はなぜこの精神世界に来てしまったかという事と縁を結ぶというのを具体的に教えて欲しいという事です」
「ふむ、どれから聞きたいかの?」
「では先に言った方からでお願いします」
「そうさな、少し複雑になるかもしれんの。名前はファフニールじゃ。まず、儂は霊樹の中の空間に住んでいる守護龍というやつじゃ。儂は地の奥底から出てくる龍脈を常にこの体に受けておる、故にパスが出来るのじゃ。龍脈は地脈と同じように地の奥深くに流れておる。その龍脈を少しでも使っている者がいると吸い込んでしまう事があるのじゃ。だからお主もこっちに引きずり込まれてきたのじゃろう。お主こっちに来る前に寝ていたりしてはおらなんだか?」
「確かに私は此処に来る前は馬車の中で睡眠をとっていました」
「だから、入り込んでしまったのじゃろう」
「なるほど、良く分かりました。では、2つ目の事について教えてください」
「縁を結ぶという事は“契約”という形になるのう。お主の中にも闇に属する龍がおるじゃろう?」
「はい、いますね」
「あれと同じような感じで力を加護という形で与えたり武器を授けたりといろいろな祝福をもたらすことじゃ」
「なるほど、当然対価は必要になるのでしょう?」
「そうじゃ、しかし、物好きな龍もおるのう。お主の中におる龍は何も受け取ってはおらぬのではないか?」
「そういった事はあらかじめ“これ”と明言していないので欲しくても縛れないんじゃないでしょうか」
「そういった可能性は確かにあるが、契約にうるさい闇の龍がのう。ちょっと待て、これはあり得ん闇の龍が光の龍になろうとしているだと!儂は何千年と生きているうちに同族は飽きるほど見てきたがこんな変化が起きるなんて不思議な事もあるんじゃのう」
「変化はなんにでも起こりうる可能性の1つの具現化ではないのでしょうか」
「確かにそうかもしれんのう。よし、決めたぞ。お主の中に住む事にしよう」
「え!私の中に来るのですか?」
「うむ、そうじゃ。精神世界の中ならば大丈夫であろう?」
「確かにそうですが」
「これからこちらに来てもらうが構わないか?」
「位置が分かれば馬車で向かいます」
「では、頭に此処の位置の情報を送った」
「分かりました。此処ですね。ちょうど近くを通っているはずなので、すぐにつけると思います」
「儂の森は迷いの霧で包まれているのじゃ。まっすぐ進めばお主ならば難なくおられるだろう」
「ほかの者はどうですか?」
「はいってもすぐに入口に戻ってしまうじゃろう」
「私だけ入ればいいだけの話ですから大丈夫ですね」
「そうじゃ、後で会おう」
そういわれた後に意識が覚醒し、馬車の風景に戻った。
「ミーシャ少し寄り道するよ」
「了解致しました。どちらへ向かうのでしょうか?」
「この迷いの森の方向へ」
「こちらに行くのは良いのですが、何があるのでしょうか?」
「少し興味があってね」
「分かりました。そう致しましょう」
ミーシャが御者におじさんに言うと、おじさんはすぐに向かってくれた。ものの数十分で着いた。そこから私は徒歩で森の中をまっすぐ指示通りに進んでいくと天に届きそうな大きな木が見えた。その木には大きな洞があり人間も百人ぐらい入りそうな感じだ。中に入ってみるととても大きな緑色の龍が横たわっていた。
「ようやっと来たか」
「はい、来ました」
「さて例の話を進めようか」
「私としてはメリットしかないのですが、いいのですか?」
「あぁ、構わんよ」
「では契約をお願いします」
「あい、分かった」
とういうと私の周りに大きな魔法陣が出てきた。
「これは?」
「これが契約の正式な魔法陣じゃ。お主の中におるやつはこれを行っていないだろう?」
「大分昔の事でしたので少し記憶の方には…すいません」
「うむ、良かろう。そやつの分まで儂が行っておいてやろう。儂もするからついでじゃ」
「それは助かります!」
私は契約の魔法陣の中でファフニールと向き合って血の契約を行った。実に簡単に終わってしまった。しかし、今までとは違う力が流れてきた。力だけではなく、それに関する知識まで流れてきた。ファフニールの事が自分の事のように分かるようになった。
「どうじゃ?」
「どうとは?」
「契約を終えての実感じゃよ。まぁ、お主の中におる龍に関してはお主の魂と同じ所にいるので感知しにくかったが、契約はできていたぞ」
「そうだったんですか。そういわれてみればそんな感じがしますね」
「で、調子の方はどうじゃ?」
「知識や力も流れてきて最初は驚きましたが、今は大丈夫です。力も前より強くなっている気がします」
「そうか、それは良かった。これで儂はここの縛りが解ける」
「どういう事なんですか?」
「守護龍と言っても代替わりをするし、近隣にはエルフの森があるじゃろう。そこの者がここに住む事に鳴っているのじゃよ」
「ではあなたはどこへ行くのですか?」
「それはお主の中じゃよ」
「本当に来るんですか?」
「そうじゃ」
「分かりました。私はどうすればいいんですか?」
「何、そのままじっとしてくれとれば普通に入れるぞ」
「分かりました」
少し怖かったので目をつぶっていると何か良く分からないがお日様のような暖かな風が自分を通り抜けた感覚になった。そっと目を開けてみるとファフニールはいなくなっていた。
心の中で“いるんですか?”と聞いてみると“おるぞ”と聞こえたのでうまくいったらしい。良かった。
私は確認を取った後、乗ってきた馬車の方へ向けて歩いていくとミーシャが不安顔で待っていた。
「ただいま」
「ただいまじゃないですよ。ここは迷いの結界が張ってあるじゃないですか!このまま戻ってこなかったらどうしようかと思いましたよ」
「う、心配かけてごめんなさい。で、でも、ちゃんと帰ってきたよ?」
「そうですね」
「とにかく馬車に乗ってソフィーの城に向かおうよ」
「そうですね。時間も迫っている事ですしね」
そういって馬車に再び乗り込み、6日後に城に着いたのだった。
「ミーシャ、思ったんだけど、加護をつけてあげればその分早くつけたんじゃない?」
「確かにそうですね」
「でしょ?なんで忘れてたんだろうね」
「そうですね」
馬車が止まって城の前に着いた。着いたら、ソフィーが出迎えてくれた。
「おかえりなさい」
「うん、ただいま」
今回も読んでいただきありがとうございます。前書きをあんなふうに書きましたが“圧倒的暇”とは誰も言っていない!
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