28章 襲撃
春休みが終わったイリスだったが…
あれから少し経ち、新入生が入ってくる時期になった。生徒会の中でもその話題でかなり忙しく走り回っている。会長もいつもより雑務が多くなっているので“書類なんて見たくない”という声がたまに聞こえてくるので、手伝っているのだが、減ったと同時に新しい書類の作成の要請書が届くので頭がパンクしそうになっても仕方ない。いつも集まらない生徒会のメンバーもこの時ばかりはさすがに来ている。会議室書類の山になっている。でも、何とかやっているような状況に至っているのでまさに“猫の手も借りたい”という言葉が一番しっくりくる状況はあまりないと思う。少しして、みんなが休憩を挟むそうなので、せっかくなので、適当にお菓子を作る事にした。簡単な物なのですぐに出来るから待っていてという有無を知らせてから近くの調理室を借りてお菓子を作り始める。スコーンにする。理由としては、片手でも食べられるし、美味しいし多くのフレーバーの物が作れるので、持ってこいだ。
作っているとレモンピールのいい香りがしてきた。オーブンで焼いて完成した物を紅茶と共にカートに乗せて執務室に持って行った。かなり匂いが届いていたらしく、みんな待っていたようだ。
「お待たせしました」
「みんな頂くわよ」
「「いただきます」
「どうぞ」
と言って紅茶も出していった。みんなはおいしいと言って食べてくれている。喜んでもらえているようで安心した。食べていると少し口についていたらしく、ミーシャが取ってくれた。補足だが、凄く恥ずかしかった
。そのまま和やかにスコーンを食べていると、スコーンがなくなっていたので、仕事に戻る事にした。なので、食器を集めて洗いに行った。しかし、ミーシャがやってくれるようなので、任せておくことにした。
なので、自分の執務室に行って書類の整理を始めた。書類を片付けていると扉が開いたので、目を向けるとそこにはソフィーが来ていた。本来なら学院長という肩書きを持っているソフィーも同じように苦労しているはずなのだが、どうしたのだろうか?
「ソフィーどうして此処来たの?」
「こっちにも手が欲しいと思ってイリスならと思って来たのよ。でも、こっちも終わってないみたいだから辞めておこうと思ったところよ」
「少し位なら手伝えると思うよ」
「そう?」
「うん、だから少し待っていてくれるなら助力するよ」
「じゃあ、手が空いたら来てね」
「分かったよ」
というと部屋から出ていった。しばらくして終わったので、書類を持って行くのをミーシャには任せられないので自分で持って行った。それから学院長のところへヘルプに行く事を伝え言った。
「来たよ」
「あぁ、ありがとう」
取り敢えず自分的に出来そうな物は自分でやってできないような認証が必要な物はソフィーに渡してこなしている。しばらく、黙って作業していると、すぐに終わった。ソフィーの方も終わったらしく、立ち上がっていた。
「終わったの?」
「ちょうど終わったわ」
「よかった。役に立ててよかったよ」
「ありがとう、書類がかなりあったから助かったわ」
「私は自分の執務室に戻るからまた用があったら来て」
「分かったわ。ところで、昼食はもう取ったの?」
「みんなまだだと思うよ」
「じゃあ、みんな呼んで来てご飯を食べに行くわよ」
「分かったわ」
廊下を心なしか弾むように歩いて会長達が集まっている部屋に着いたので、声を掛けて呼んだ。すると全員が“行く”と声をそろえて答えたので、取り敢えず馬車の置いてあるであろう場所へ行くと、大型の馬車と共にソフィーが待っていた。
「一度私の城に寄って行くから着替えていくのなら待つしどうする?」
「全員このままで行きましょう」
会長が答えそれにみんなも頷いている。
「分かったわ。じゃあ、そのまま馬車に乗って頂戴」
馬車に乗り込み馬車が動き出した。別に私だけならワープも出来るのだが、人に見せるのは良くないという理由で緊急時以外は使ってはいけない約束になっている。なので、馬車で行くことになる。みんなは城のある方へ来た事がないのかやけにわくわくしているのが見ていてわかる。城に着くと、ソフィーは私も一緒に出るように促したので降りた。多分じゃないな、確実に何をするのか分かった。ドレスだ。着せ替え人形にするんだと思いながら城の中へ入った。
メイドさんたちにどうやって伝えたのかわからないが、ドレスやワンピースを持ったメイドさんたちに囲まれた。それから、今まで以上に着せ替えられた。ようやく出られた。ミーシャも少し嬉しいのか口元が綻んでいる。私もしっかり着せられ、周囲から“傾国の姫”や“聖女”なんて単語がたびたび聞こえる。心の中で“自分たちが私に着せたんでしょ”と、言いながら、再び馬車に乗り込んだ。すると、外に向かってサインを出していたのが目についた。まぁ、結託していたという訳では無く単純に“良かった”という事なのだと思う。
私たちの乗り込んだ馬車は、再び動き出し街の中心街のレストランに行くようなのだが、通り過ぎるような勢いなのだが、大丈夫なのだろう。なんて思っていると、馬車が止まった。なので、多分着いたのだろう。
馬車の扉が開くとそこは、いつもよりもワンランクの上のレストランの食事になった。私自身はここに入った事はないのだが、おいしいんだろうなと考えながら入って行くと煌びやかな装飾が施してありいい感じのところになっている。奥の方を見てみると、バーカウンタみたいな感じになっていておじさまがバーにいるみたいだ。だが、まだ私には必要がないので別に確認しには行かなかった。ソフィーの後ろをついて行くと、VIPルームに連れていかれた。まぁ、他の人がいないという点では良いのかもしれないな。後は他に口外できないような機密情報を話すときにはいいかもしれないと感じるような場所でもあった。でもこんなに厳重にする必要があるのだろうか?疑問に感じる点もあったが、そんな些細な事をいちいち気にするのはもうやめた。
「お料理のコースですが、どうなされますか?」
丁寧な口調でギャルソンが語り掛けてくれた。みんなは答えて言っているが、肝心の私はまだ決まっていないのだが、どうしよう。価格帯があまりずば抜けていないような物にしようと答えようとした瞬間にソフィーに“私と同じものを”といわれてしまった。まぁ、いいかと思いながら少しの間持ち込んだ書類を見ながら食事を待っている。
「イリスさん、働きすぎではないか?」
「いえ、そうなことは」
「そうか、だがこのような場所で書類を持ち込むのはどうかと思うよ」
「そうですね、やめておきましょう」
「そうした方が良いと思う」
時間がもう少し経つとギャルソンが食事を持ってきてくれた。フランス料理のような物だった。この場だと出てくるパンはバゲットだろう。余談だが、オリーブをパンにかけると、とても美味しくなる。お勧めです。
「みんな乾杯ね!」
それぞれの飲み物を持って“カチン”グラスを当てて音を鳴らした。そこから各自持ってきてもらったスープなどを飲んだりして歓談を楽しんでいた。すると、したの方から爆発音が聞こえてきた。近くの窓を見てみると、数人の人影が見えた。ので、多分したで襲撃に来たのだろう。武器を見てみると相当な手練れである事が分かるが、下っ端の人物であろう人間の武器まで相当な物が使われてるという事が分かる。しかも、正面という事は自分たちの腕に相当自身があるらしい。ここの区画は貴族街に面しているので治安隊の到着も早い事が分かるだろう。だからこの判断なのだ。言わずとも狙いは私なのだろう。階段からの音がまっすぐにこちらに向かってきている。久しぶりに体が動かせる口実が出来たので喜んでいいのか、慣れたからと澄ました顔をしているのが良いのかよくわからない。なんて思っていると、狙いは私ではなく、ここの店の客を狙った犯行みたいだ。耳を澄ませて聞いていると沢山の足音が聞こえていたのが、1階で足音が別れているのが分かった。
「ここは動かない方が良いかもしれないわね」
そういった会長の言葉を聞いたみんなはじっとしている方が賢明だと思ったらしくここでじっとしているみたいだが、反対に私は立ち合ってみたい気持ちがある。よし、足音がこっちに向かってきた。簡単な魔術でも当てれば、気絶して終わり最悪その場所だけ凍らせて氷の壁でも作るか、それとも連れていかれたようにして、返り討ちにして一網打尽というのも面白いと思ったところで、やっと来たようだ。じゃあ、最後の作戦にしてみよう。
「なんだ、上玉がいるじゃねぇか」
下卑た笑みを浮かべながら私の手を強引に引いた。ソフィーは何食わぬ顔で見ている。他の人達は顔を青くしてみているようだ。
「私は一体どうなるんでしょうか?」
「それはお楽しみだ!」
「そうですか」
「なんだ、怖くねぇのか」
「正直に言うと全然ですね」
「強がってっれるのも今のうちだ」
と言って幌付きの馬車に押し込まれた。やがて仲間も戻って来たのか馬車が走り出した。しかし、すぐに止まったと油断していると急に走り出したので、頭をぶつけてしまった。それから、結構な時間が経ってようやく止まった。どうやらアジトに着いたようだ。私は降ろされた。少し歩かされて殴られたりしたが、どうってことはなかった。魔術で身体強化しておいて正解だった。演技で痛がっているふりをしていると奥の方から豚、いや失礼。脂ギッシュおじさんが出てきた。近くに来られて凄い体臭が臭いのがさらにイライラさせるポイントだな。
「なんだ、今日はやけに上玉を捕まえてきたじゃねぇか」
「襲撃して金だけ奪うつもりだったんだが、こんな上玉がいたからよ俺たちで可愛がってやろうと思ってな」
「おおう、それはいい考えじゃねぇか」
うん、そろそろいいかなこんな縄はすぐに抜け出して立ち上がって帰ろうとすると男たちは周りを取り囲んできたので、魔術を使って小さな氷の玉を作って試しに当ててみた。あっけなく当たったので、ため息が出そうになった。
「帰りたいので通してもらえませんか?」
「行かせねぇよ!」
と言って突進してきたので、投げ飛ばしてもよかったんだが、あえて筋力強化に集中させてみたするといとも容易く男の突進は防げてしまった。私から出てきた感想は“つまらない”だけだった。期待外れもいいとこだ。こんなやつらに期待していた自分が馬鹿に見えてきた。
「なんだこいつ、強すぎるぞ」
「別に本気も出していないのですが」
「なぁっ!嘘をつくんじゃねぇ!」
「嘘なんかじゃないですよ。まるっきり事実だけを言っているんですよ」
「数で潰せ!」
そんなに追い詰めたつもりはないんだけど、もう早く帰りたいし、魔術で気絶させて保安隊に場所を知らせて終わりかな。と考えていると男達が一斉にとびかかって来たので、全方位にイシツブテを飛ばしていい感じに気絶させてから、縛り上げて閃光弾を思いっきり打ち上げて保安隊に場所を知らせてしばらく待っていると、来たので身柄を預けて帰って行った。
レストランに再びかえって来て、食事の続きをした。会長達に色々聞かれたが、“特に話すこともないわ”という風に言って馬車に乗って、城に帰った。
今回も読んでいただきありがとうございます。
今回は私も書くのが2回目の戦闘?シーンになっています。




