25章 学院と馬
学院で新しい授業が始まる事を聞いたイリスは…
朝日に照らされ今日が始まったと自覚させられる。私の一日が始まった。
今日も学院がある早く用意をして、馬車に乗り込む。何一つ変わった事が無い。刺激が足りない。何か面白い事って無いかな。最近は何もないし、行事なんて今年度はもう終わっちゃったし、“これから何をすればいいのよ!”って叫びたくなる衝動に駆られつつ頑張って学院に行っている。最近は座学ばっかりで、毎日が退屈だ。このような事を思っている間に学院に着いた。
教科書などが入ったカバンを手にソフィーを一緒に馬車を出る。何故かカバンは部屋に置いてあった。ソフィーに聞いてみたところ。“自分のだ”という風に言っていたので、今は借りるという形で私が持っている。しかし、この鞄見た目スリムなのに結構中に入って凄く使い勝手がいい。触り心地もいい皮をなめしてあるのかとても滑らかで触っていて心地よい。
自分の教室について、鞄をおろしておいた。すると、クレール先生が入ってきた。
「イリスさんはいるか?」
「はい、いますよ」
「会長が呼んでいたから、あとで出向くように」
「分かりました」
なんの用件か分からないが、とにかく朝のHRが終わったら行ってみようと考えているうちに朝のHRが終わっていた。なので立ち上がって生徒会長の部屋に行った。ドアを開けると構成メンバーが全員そろっていた。何があるのかわからない。すると隣にいた人がジェスチャーで“ここに座って”と指していたので、取り敢えず座っておいた。急にみんなが立った。私はびっくりしたがその場の雰囲気で一様立ち上がっておいた。
「これより定例会議を始める」
会長の一言で始まったらしい定例会議だが、なぜ私がここにいるかというのは、すぐに分かった。
「今回の議題はここにいるイリスさんの事だ。私は、生徒会副会長に推薦する。意義のあるものはいるか?」
幸い?手を挙げている人が一人もいなかった。
「では、採決に移る。副会長に就任させて良いと思う者は挙手」
全員が手を挙げた。
「多数決の結果可決された。では、これで定例会議を終わります。解散!」
そういうと、皆は部屋から出ていった。
「会長話が旅過ぎていて何が何だかわからないんですけど」
「あぁ、説明する前に始めてしまったからね。まぁ、聞き給え、まず、君には、生徒会副会長の座についてもらいます。学院の事についてもっと知ってもらうためです。理由は、今後、生徒会の会長を前提として生徒会の動きを覚えていてほしいというのが、本音でね迷惑だった?」
「いえ、いつかは入りたいと思っていたので、逆に好都合です」
「そうかそれは良かった」
「ところで、前にもらったジャガイモの入ったものあれとてもおいしかったよ。ありがとう」
「喜んで頂けたようでよかったです」
「でもいいのかい?」
「何がです?」
「私ばかりこんな待遇を受けて。聞けば、学院長の城に住んでいるようじゃないか」
「そうですね。それはそれと割り切っているから大丈夫。それに、メイドさんたちも私が作ったクッキーを食べてくれたりしてくれているからですよ」
「ため口まだダメかい?」
「そういえば、そんな約束をしてたね」
「私も口調変えるから」
「じゃあ、お好きな方でどうぞ」
「そうですか。では、こちらの話口調で宜しいですか?」
「二言はありませんよ」
と言ったものの、違和感は半端ない。これは、簡単になれるようなものではないので、徐々に慣らしていく他無い。実に目上だった人が目の前にたたずんでいるのだから。大臣や宰相などと話すときはこんな感じなのかと思っていた。
それから部屋を出た。生徒会室を出てすぐに教室に戻った。教室に戻ると、クレール先生にまず事情を聴かれた。まぁ、当然ちゃあ当然なんだけどね。学院関係の上層部が通達してきているのだから。それは、どのような事情かは気になるよねと自分の中で解釈しておいた。
「どんな事を言われたんだ?」
「生徒会副会長に任命されました」
「えぇ!」
「そんなに驚く事なんですか?」
「そ、そりゃあね~。生徒会に入るという事は学院の内部構成の基礎になるという事に他ならないからね」
「そうなんですか?まぁ、推薦されてすぐ可決されましたけど」
さっきの事を話していると、クレール先生は、とても驚いた顔で聞いていたが、途中から何かを理解したような顔になっている。まぁ、そんな事があり、クレール先生との話が終わった。すぐに席に戻り、授業に必要なものを出して次の部屋に行った。座学の授業だ。
座っていると、先生が入ってきた。あまり面白くなかったので、聞き流しながら教科書を読んでいた。当てられる2回程当てられる事はあったが、それ以外はあまりというか何もなかった。
授業が終わると周りの生徒が“疲れた~”だとか、当てられちゃったよぉ~”とか言っている人がいるが今日は久しぶりのカーミラ先生の料理教室だ。最近はめっきりなかったからかなり嬉しい。自分の中の料理のレパートリーが増えていくのが無性にうれしくなってくる。これからの時期は寒くなってくるから暖かいもの作ってみたいし、ベーコンの入ったコンソメスープでも作ってもいいかなとか思いつつ歩いていると、教室についてしまった。固形のコンソメなんてこの世界には無いから、先に来てみんなよりも早く下準備を終える。ちゃんと許可も取ってある。下準備を終えて、火を入れ終わって大体味を確認して味が出えきたら、丁度授業開始の鐘が鳴っている事に気が付いた。
「授業を始めるわよ。今日は、ロールキャベツを作るわね。材料は前の黒板に書かれている物を前から取ってね」
私は早くから始める事が出来た。理由は今もだが、スープを作っているからだ。だからいつもより早く作業に取り掛かる事が出来た。材料を取りに行こうとすると、ミーシャが取りに行ってくれていたらしく、材料が置いてあった。手順をちょっと教えて、ミーシャに切らせてみた。すると包丁を握りしめて勢いよく振り下ろそうとしていたので、一度止めて、持ち方などを細かく教えた。不器用そうに切り始めた。私は、料理を教える母親になった気分が味わえた気がした。隣のコンソメの出来具合いを確認するとベーコンのパンチの効いたうまみと、野菜のうまみが合わさり、とてもおいしかった。ロールキャベツも、もう出来てみたいだったから爪楊枝で刺して硬さを確認して、一つ取りだしてみて、半分に切って中にどれだけしみ込んでいるか見て半分食べてみた。結構おいしかった。しみ込んでいたので、肉汁が溢れてきて大洪水になっている。いい眺めだ。とてもおいしそうだ。
できたものをお皿に乗せて完成だ。これをカーミラ先生の場所に持って行って、両方見てもらった。両方ともおいしそうと言って“食べてくれても大丈夫”という前に既にもう食べていた。だが、おいしかったんだろう。幸せそうに食べてくれているというのが、何よりの証拠でおいしいと顔が言っていた。それに、手が早く動いている。これは、多分全部食べる勢いだ。だがまぁ、持って帰っもソフィーが食べるから良いと思うけどやはり作った側としては、作り立てを食べてもらいたいというのが、本音ではあるが、執務室に籠っていて仕事をしているのだから邪魔はしてはいけないと思って視線を再びお皿に戻すと、何もなかった。“ふう、おいしかった”と言っていた。まぁ、全部食べられたからといっても、別に困る事でもないので、別にどうという事はない。
「全部食べちゃいましたか」
「あ、ごめんなさい。全部食べちゃったわ」
「別に気にしてないので、別に全部食べてもらっても構わなかったので、大丈夫ですよ」
「そうならいいんだけれど」
こんなやり取りをしていると、鐘が鳴ったので、用意をまとめてこの部屋から出ていった。教室について次の授業は何かと確認をしたら、最近生徒が追加してほしいと意見箱の中に入れた事で新たに追加された馬術だった。なので次の馬術用に作られた競技場に向かった。競技場に行くと、もう人が大半集まっているような状況だった。制服を汚れるといけないので、用意ミーシャが持ってきてくれた服を着た。結構引き締めてくれるようなタイトなものだった。競馬のジョッキーが着ているような物だった。
少し楽しみだったというか馬には普通に乗れるのだが今更教えてもらう事が無いような気がするが、まぁ、これはこれで楽しいと思う。鐘が鳴って何故かクレール先生が、やってきた。
「馬はあの馬小屋の中にいるから各自連れてきなさい」
奥にある小屋にしては大きな場所に行き、馬を連れてきた。私の連れてきたのは、全身真っ白の馬だ。白馬と呼んでいいものだった。
「連れてきたら、その馬に名前を付けてやれ」
う~ん、名前か。そうだ。ワルキューレの馬の名前をもらって“スレイプニル”にさせてもらおう。ありがたい名前を付けておいた。
「さぁ、騎乗の練習を始める。鞍を掛けろ。あ、そうだ。この中に馬術に憶えのあるものはいるかいたら前に出てきてくれるとありがたい」
と言われたので、私が前に出る事になった。ミーシャも一緒に出てきてくれた。鞍のかけ方は省くが鞍のところを持って足掛けにかけ、一気に上がる。これで、馬に乗った事になる。
「これで良いですか?」
「あぁ、これで大丈夫だ。元の場所に戻ってもらっても構わない」
「では、戻っておきますね」
「先程の実演のように乗ってみてくれ」
「「はい」」
全員が返事をしたようだ。先程見せたのが良かったのがほとんどの者は乗れたようだ。数人は乗れていないというか馬を怖がっているせいか乗れていないらしいがそれは、慣れだというほかないので、私からは何とも言えない。私は馬を走らせたりして、楽しんでいたのだが、クレール先生にヘルプを頼まれた。ヘルプされたので、私なりの教え方で教えておいた。“ここはどうすれば”と聞いてくる人もいたので、出来るだけ丁寧に教えた結果乗れる人は格段に増えたような気がする。うん、増えた、そういう事にしておこう。こればかりは出来る子は上達するのが早いし、出来ない子はとことんできないものなので仕方がない。触れない人に無理やり触らせても、心に傷をつけてしまい余計に触れなくなってしまう。私の教え方としては、絶対に無理強いしない事にした。
「おかげで乗れるようになりました」
こんな事言ってもらえるととても嬉しい。まぁ、そんな事があり、クレール先生の手伝いをしていた。鐘が鳴るころには、数名の生徒を除き、ほどんどの生徒が馬に乗れるようになっていた。クレール先生からも御礼を言ってもらえたし、良い事が多い授業になった。
再び教室に戻り、お弁当を食べた。そういえば、この学校には、現代のカフェ的なものの存在する一度寄ってみるのもいいかもしれないな。と思ったので即行動に移した。意外に近かったのが意外だ。広大な敷地を持つ学院の中で、私たちの教室のすぐの場所にあるなんて知らなかった。まぁ知らないのも当然かもしれない。理由は教員や生徒会が使っているから、他の生徒が来れない事があるし、近くに木が植えてあるのだが、それが入口を隠しているので、見えなかったからというのも理由の一つにはなるだろう。まぁ、入ってみよう。
中に入ると、日本の老舗の喫茶店を思わせるような内装だった。個人的にはこのような内装は好ましい。どこか落ち着く感じがあるからだ。カウンター席に座ると初老の白髪交じりのマスターが出てきてくれた。
「珍しいお客様ですな」
「何がです?」
「いや、最近は利用客がめっきり減ってしまい教員や生徒会の人達が良く来てくれるようになってくれたのです。なので、その他の人が来てくれたので、珍しいと」
「あぁ、そうだったんですね」
「すみませんね、私の話なんか聞いてもらって」
「いいえ、気にしないでください」
「そうですか、そう仰るなら。さて、気持ちを切り替えて。ご注文は何に致しましょうか?」
「お勧めをくださいますか?」
「はい、デザートなどは?」
「それもお勧めでお願いします」
「承りました。少々お待ち下さい」
少し待っていたら、マスターが帰ってきた。この香りはもしかして
「...ディンブラ?」
「お気づきになりましたか。良い鼻をお持ちで」
「いえいえ、ただの趣味の延長線みたい物ですよ」
「そうだとしても、アールグレイ等の有名なものではないのでその年でこのディンブラの知識を持っている事は凄い事ですよ」
「そうですか。そこまで言われると少し嬉しいですね」
「さて、こちらがご注文のロールケーキです」
「ありがとう。早速頂きますね」
「はい、どうぞ」
ディンブラの紅茶は入れ加減が絶妙だ。相当な数の紅茶を淹れてきたんだと思う。じゃないとこんな絶妙な加減で紅茶は淹れられない。ロールケーキもそうだが、焼き具合などがすごくいい感じで出来ている。感動の逸品だ。口に入る度に口元が綻んでしまう。すぐ食べきってしまったが、また来ればここにロールケーキがある。と思い、お代と御礼を言い、学院の方へ帰って行った。それから、あまり面白くない座学を終わらせて、家路に着いた。
今回も読んで頂いてありがとうございます。100話で終わらせるみたいな事を言って4分の1が過ぎましたが、終わる様子が浮かびませんねぇww




