18章 お菓子と先生
舞踏会が終わって学校が始まった。相変わらず友達ができないイリスに得意の料理の授業が来た。果たしてイリスは良いところを見せられるのか…
快眠から目を覚ました。今朝も昨日と同じようにミーシャさんに着替えをしてもらった。また今日から学校が始まる。学校では友達と呼べる人がそもそもいないので、早く増やしたいと思うが、そんなコミュ力が私にはない。なので、新しい友達を作る事が出来ないかもしれない。
時間が経ち、馬車に乗り、学校に着いた。入学式の時よりはかなり人数が減ったが、はやり人が多い人の波が出来ているのはやはり、寮の方から出来ていた。しかし、馬車で来る大貴族なども沢山いるので、一概に全員が寮から来ている人もいる。ただその割合の大多数はやはり寮の方からの生徒の方が圧倒的に多いことは言わずとも分かるだろう。
それから教室に入ると生徒が徐々に集まってきている様子だった。私が入ってくるとやはり前とは明らかに違う点を見つける事だろう。つまりメイドが来ているという事なのだ。本来は、生徒の隣に常についているメイドはいないらしいが、しかし耳が良い人はこの前の事件を知っているものもいる。まぁ、少しばかり騒ぎになっていたのだから情報操作もしきれていないのだろう。その時、ミーシャさんがすっと出てきて
「イリス様情報操作の方はなるべく広範囲の方へ広げておきましたが、やはり貴族の方々はやはり耳が良かったようです。申し訳ございません」
「いえ、その事に関しては絶対に隠しきれるとは思っていなかったので、大丈夫です」
頷いてさっと下がったようだ。この学院は当然、貴族のお嬢様ばかりの学院なので、このような話題の情報は早く広まっていく事だろう。と眼が得ていると、クレール先生が入ってきた。
「おはよう!皆そろっているな?HRの次は魔術科の生徒は座学だ。忘れ物の無いように移動するように、剣術科の生徒は、グラウンドに集合だ。遅れる事の無いようにな!」
私はどっちに行ったらいいのか分からないので、座学の方へ行った。
最初の授業は魔術の構成や自然の事についての授業だった。やはりこちらの文明レベルが低いからか、小学校や中学校で習う程度の事を話されていて知っている私からしたら、凄く退屈でつまらない時間だった。だが、寝る訳にはいかないので必死に起きておいた。習っている事を延々と聞かされていたら誰でも船を漕ぐだろうなんて自己正当化をして次の授業の部屋に行きました。
「イリス様、授業の内容が分かっていても分かっていなくても船を漕ぐのは先生に失礼ですよ」
「そうだね」
この指摘を受けたときばかりは苦笑いをせざるを得なかった。
あれから授業が終わりお昼になった。ただ、“そもそも学食ってこの学園にもあるのか?た、多分あるよな!”と心の中で虚しいツッコミを入れた。すると、ミーシャがお弁当を持ってきてくれたようだ。せっかくなので、屋上の庭園で食べる事にした。屋上につくと、ちらほらとほかの生徒が見えた。なのでこちらに反応してくれた生徒には笑顔で“ご機嫌よう”と言っておいた。少し歩くとベンチがあったので、そこに座った。ミーシャがお弁当箱を取り出し、お弁当箱と言ってもバスケットのような植物の蔦があしらわれたものだ。中を見てみると、サンドイッチが4切れ入っていた。それを食べているとちらちらとこちらを見てくる生徒たちがいたので、出来るだけ早く食べて庭園から出ていった。
「次の授業は何だった?」
「確か調理ですね」
「お昼食べたばかりなのにね。何を作るのか聞いている?」
「いえ、存じておりません」
スイーツならいいなと考えながら移動していると、調理棟についてしまった。始まるまで此処で待つ事にした。しばらくした後に先生や生徒がこっちに来て部屋の中へ入っていった。そしてチャイムが鳴り、授業が始まった。
「今回は昼食の後という事もあり皆さんお腹はすいている人はいないと思いますので、今回の課題はクッキーです。時間のあったものは、ほかの物を作ってくれても構わないわ。材料の方はここにあるものを使ってくれて構わないわ」
「「はい」」
とりあえず材料は、ミーシャがいつの間にか取ってきてくれたので、それで作る事にした。クッキーの作り方は大体分かるので、まとめてオーブンを大体180℃ぐらいの余熱を魔法で取ったので一気に温度を上げて大体の温度に達したので、クッキーの型を取ってオーブンの中へ入れたので体感的に1時間待たなければいけないので、暇になってしまった。なので、紅茶のシフォンケーキを作るために卵とかの材料があるか見ているのだが、材料を見ていると肝心の茶葉が無い事に気が付いたので、先生に紅茶の有無を聞いたところ“ある”という返事が返ってきたので、取ってきてもらった。牛乳などを混ぜて生地を作るのだが、卵白を泡立てる作業にかなり時間がかかってしまったが、それ以外は何の問題もなかった。一通りの作業工程も終わりあとは、クッキーと一緒にオーブンに入れて完成だ。
「これで一通りの作業が終わったからオーブンに入れるよ」
「いえ、私がオーブンに入れますよ」
「分かりました。では、任せますが、くれぐれもやけどをしないように気を付けてくださいね」
「わかってますよ」
オーブンに入れると同時にクッキーを取り出し具合を見て完成だ。なので、取り出して先生に確認を求めに行った。
「先生クッキーが出来たので確認お願いしますね」
「はい、わかりました。全体の皆さんがまだなので、先に行く事にしますね」
「これなんですけど、どうですか自分ではうまくできた方だと思うんですが」
「形も香りもとてもいいですね!満点をあげてもいいです。でもまだ最終試験が残っていますよ」
「最終試験ですか?あ、味ですね?」
「はい、なので一ついただいても良いですか?」
「はい、大丈夫ですよ。かなり優しい味に仕上げました」
「では」
“パク”っと擬音が出るぐらいに一口で食べた後先生の思考は停止したように止まった。
先生SIDE
このクラスが今年初めての授業のクラスね。初めから実習を入れてみたけど大丈夫かしら?まぁ危なそうな雰囲気なら止めればいいしそれに、危険な事をする人もいないだろうし、でも調理風景を見ているとやっぱり貴族の人は手こずっているようね。部屋の中央の方に王族の方がいるなでも他の貴族と比べると手際が違い過ぎる。メイドさんなんてほとんど何もしていないのに、もう生地が完成している。下手すれば私より手際が良いのかもしれない。てか、あの子本当に可愛いなぁー、目に入れても痛くないぐらいにでも“ここで手を出す訳にはいかない”と自分に暗示を掛けている時にあの子が来た。確か名前は…イリス様だ。何かあったのだろうか?
「クッキーの方がもう終わりそうなので、材料をもらいに来たのですが、ここにないようなのです」
「何が必要なのですか?」
「紅茶のシフォンケーキを作るので茶葉が欲しいなと思って探していたのですが、なさそうなので」
「あ、そういえばおいてませんでしたね。すぐに取ってきますので、少し待っていてください」
「あ、はい。お願いします」
と言ってきてみたものの、肝心の茶葉の場所に心あたりがあるのが、2個所しかない1つは学園長の部屋もう1つは私がいつもの飲んでいる紅茶の最上級しかない。ないが、これは私が頑張ってためた給料をはたいたもの。だが、王族に出す茶葉が普通の庶民用の茶葉でいいはずがないので、仕方なく自分の物を持って行く事にした。
走るとあっという間に部屋についてしまった。待たせていた事を謝罪し、私は茶葉を渡した。
しばらくすると、イリス様がこちらに向いて歩いてこられた。
「クッキーが出来たので確認お願いしますね」
「分かりました。全体の皆さんがまだなので、先に行く事にしますね」
「これなんですけど、どうですか自分ではうまくできた方だと思うんですけど」
「形も香りもとても良いですね!満点をあげてもいいです。でもまだ最終試験が残っていますよ」
「最終試験ですか?あ、味ですね?」
「はい、なので1つ頂いても良いですか」
「はい、大丈夫ですよ。かなり優しい味に仕上げました」
「では」
私はクッキーを採点のために頂いた。口の中に入れるとほんのりとしたバターの香りに加え、優しい甘さが口の中を支配すると同時に心が和んでいく。これは母の味!
イリスSIDE
私は、先生を何とか呼び戻し評価を聞くとかなりの好印象だったようだ。シフォンケーキが入っているオーブンを見て欲しそうしていたので、“学校でこれは食べないといけないですか?”と聞いたところ持ち帰ってもいい事になったので、今晩の食事に招待した。
「あの、紅茶のシフォンケーキは私達だけで食べるのは勿体ないので、先生も今日私たちと夕食を共にしませんか?」
「えっ!良いんですか?」
「はい、勿論!予定が無ければですが」
「予定はありません必ず行きます」
「では、学校が終わったら、学園の玄関横に馬車を呼んでおくのでそれにお乗りくださいね」
と、言い終わると、鐘が鳴ったので休み時間にソフィーのところへ行って馬車の手配のことと夕食の人数が1人増える事を伝えた。するとソフィーは快く許可してくれた。なので早くもう一度料理棟に戻ってシフォンケーキの様子を見に行った。するとかなりいい具合だった。オーブンから取り出してみると、紅茶のいい香りがしたこれをガラスの容器に入れて城の中野キッチンに転移魔法で送っておいた。ちゃんと張り紙に“食べちゃダメ”と書いておいた。なので食べる人はいないだろう。
それからの授業をこなし、私の方は学校が終わったので一足先に帰らしてもらう事にしたが、途中に高い紅茶の葉が沢山売られているところへ寄ってもらって紅茶の葉はどれが良いのかわからなかったので、私のおすすめのグレードの一番高い物を買った。これを先生にあれのお礼にしようと買ったのだ。欲しいものも買い終わったので城に帰った。帰ってから服を着替えた。
「城に帰ってきた事は良いものの、時間をつぶす事が無いから暇だ。あ、キッチンに行かなきゃ」
キッチンに行くと、ちゃんとケーキは置いてあったので、ひとまずは安心した。私は自室に帰るときに馬車が来たので、先生が来たんだと思い玄関の方へ向かった。そして、馬車から降りてきたのは、ソフィーとルーシィーと先生が出てきた。
「イリス――!」
突然後ろから覆いかぶさるようにして私に抱き着いてきた。普段からこのような行動を見ない先生は、困惑いていた。それも、無理はないだろう。学園内の人がいるときなどは、こんなはっちゃけた事をしなかったのだから。この空気を察してかルーシィが口を開いた。
「ソフィア様、大ホールにも通さずにここで客人を待たせてはいけませんよ」
「そうね。じゃあ、ホールへの案内は任せるわ」
「了解しました」
と言って先生をホールの方へ連れ添って行った。
「ソフィーも一旦着替えてホールの方へ来て」
「分かったわ」
ソフィーも自室へ帰って行ったようだ。私は先にホールの方へ行っておく事にした。私は、ミーシャを呼んで、クッキーを渡してメイドさんたちで食べてもらうように頼んでおいた。
「じゃあ、先に私はホールの方へ行っておきます」
「了解です」
私は、ホールの方へ向かった。扉を開けると、先についていた先生が待っていた。いい機会なので今日買ったばかりの紅茶の葉を渡す事した。
「え?これいいんですか!」
「はい、今日の授業の時に無理を言ってしまったので御礼です。よければ受け取ってください」
「本当ですか!これものすごく高い紅茶の葉ですよ」
と言った会話が続き、ようやく受け取ってもらえた。それから時間が少し経ち、ソフィーが来た。
「今回はシフォンケーキを食べてもらうために呼んだ訳だけど、会話が何もないね」
「そうね……じゃあ、私が話題を振るとイリスの可愛さなんかがメインになるけどそれでもいいんだったらいいわよ」
「どうせそれしか出てこないんだからもうそれでいいよ」
「そもそもの話、イリスはさっきから“先生”って呼んでいるけど、自己紹介はしていないの?」
「あ、そういえば忘れていました。じゃあこの場で改めてカーミラと言います」
「よろしくお願いしますね。カーミラ先生」
「はい、こちらこそ」
と、喋っていると、料理が運ばれてきた。それで話をしながら食事をしていった。ていうか、ソフィーによってカーミラ先生が洗脳されたように私についてのすばらしさとかを急に話し出した事をすごく驚いた。それで、今回のメニューの最後の私が作ったシフォンケーキが運ばれてくると、目の色が変わったようにシフォンケーキを眺めている。
「食べないの?」
「いや、食べるのがもったいないなって」
「でも食べなきゃダメだよ。それに、材料さえあったらいつでも作ってあげるからね」
という会話を聞いていて先生は黙々とシフォンケーキを食べていた。全部食べたら名残惜しそうにしている。こればかりは仕方ない。食事も終わり、先生は馬車に乗って先生は帰って行った。
裏方―――
「さっきイリス様が作ったクッキーをみんなで食べてくださいって言われてもらってきたわ」
「そうなの?じゃあ早速みんなで分けましょうよ」
「そうね早く食べたいわ」
「数はいくつぐらいあるの?」
「ざっと見た感じみんな1周は確実に出来ると思うけど」
「じゃあ、みんなにとりあえず渡して余ったらくじにでもして決めましょう」
「「賛成!」」
という事が起きていた。
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