15章 天界での話と魔術
部屋に帰ってからミーミルさんに呼ばれる感覚が伝わってきた。
入学式が過ぎ、夕食を食べた後私は自分の部屋に帰ってきた。しかし、する事も無いのでいつもより早く寝た。いつもと違う空気で気疲れしたのか思いのほか早く寝られたみたいだ。それからしばらくすると最近はなかった“あの感覚”に襲われた。あの感覚とは半ば強制的にミーミルさんに呼ばれるときの感覚だ。“またこれか”と思いつつ意識が覚醒すると、そこにはテラスのような空間が広がっていた。
「来た!」
不意に声を掛けられたので、背中がビクッと跳ねた。だが、状況をちゃんと理解できたせいか急に落ち着いた。後ろを“パッ”と振り向くとやはり、ミーミルさんがいた。
「こんばんわ?なのかなぁ。いいや、今日はどのような御用で?」
「そうね貴方の魔術の異常さを私の隣にいる人に見せてあげてほしいのよ」
「でも、新しい魔術でもない限り、私が見せられるような物はないよ。そういえばなんだけどその人の紹介をしなくてもいいの?」
「あ、そうだった。こっちの人は魔術の研究機関の所属のケルヴィムだよ。まぁ分かると思うけど女性だからね」
「了解しました」
「私話していいの?」
「はい、どうぞ」
「新しい魔法で人間に使いこなせない魔術ならいろいろあるけど、まぁどのような効果を持つ魔術が知りたいのかな?」
「そうですね、割と戦闘向きな魔術や転移魔術は覚えているので、回復系の魔術ですかね」
「そうですか、かなり沢山ありますよ」
「そうなんですか?例えばどのような物があるんですか?」
「えっとですね挙げればきりがないんですけど、獣人に変化したりして自己回復の能力を高めたり、単に回復をかけたり、呪いなんかを解いたりしてっ手言うのも回復魔術の一環ですね。さらに、今挙げた魔術の数々は通常の人間には使えない物になっているの」
「結構沢山あるんですね。まぁ、取りあえず、獣人の変化の魔術と回復の魔術、これはもしあればでいいんですが、魔眼なんかありますか?」
「以上の2つは比較的簡単に出来るので大丈夫でしょう。しかし、魔眼は種類がこれもまた多いのですよ。しかし、なのでどのような物がいいのか要望してもらえるのなら出来るかもしれません。しかし、私自身は使えないので、禁書庫から持ってきますねしばらく待っていてもらえますか?」
「はい、教えて頂くのでしたら待ちましょう」
「大体5分もあれば帰ってこれると思うのでしばらくの間2人で会話でもいていてはいかがですか?」
「そうですね。適当に時間を潰す事にします」
そういうと何やら詠唱をして背中に羽を展開し、飛び去って行った。しばらくは見えていたがすぐに見えなくなった。なので、時間潰しにミーミルさんに話しかけた。
「ねぇ、聞きたい事があるんだけど良い?」
「えぇ、いいわよ。で、何が聞きたいの?」
「今、私が言っていた魔術の中で使える魔術ってあるの?」
「そうね、残念ながらないわよ。魔眼の部類は、禁術の領域に入るし、神から特別に許可が出たから教える事が出来るのよ」
「そうだったの!てっきり普通に教えてもいいものなのかもしれないと思っていたのに」
「まぁそんな話は置いておいて、イスに座って飲み物でも飲めばいいじゃない」
「そんな事言ったって頼めないよ」
「なんで?」
「頼み方が分からないんだよ」
「あ~、そういえば教えるのをすっかり忘れていたわ。でもまぁ簡単よ念じるだけでいいんだから」
「まぁ、それなら」
イメージしながら念じると1杯の紅茶が出てきた。どうやら聞くや意識にアクセスして今強く欲しがっている物を選択して複製しているようだ。複製と言っても香りがものすごくいい鼻を近づけるだけでアールグレイの優雅な香りが鼻孔を抜けていくこの高揚感に浸りながら次に味を確かめる。口に含んだ瞬間、ほのかに柑橘系の爽やかな香りがあり何だか癒される。それをチビチビ飲みながらさっきの話の続きを話していると帰ってきたようだ。
「お待たせしました」
「いえ、そんなに待っていませんよ」
「そうですか、それならばよかったです。これが魔眼に関する書物です」
「予想以上の数ですね予想はしていましたがまさかこんなにあるとは思ってもいなかったです」
「神話の時代の物からありますしね。あなた方が分かるところの“ゴルゴンの魔眼”などが該当しますね」
「そうなんですか!いや、神話の中に出てきているような物を私が操れたら凄いですよね?」
「そうですね、基本的に魔眼を操れる人は存在しないい等しいので」
私は他人が持っていない能力を得られるという事に対して俄然意欲が沸いてきた。パラパラとページをめくっていると“ん!”となる物を見つけた。
何々、“龍姫の魔眼”能力は、相手の魅了と、剣技の能力の上昇、外見の変化と書かれている。なのでこれに決めた。なぜなら、外見の変化という物に少しいや、かなり興味があったからだ。
この魔眼等は、使える人がいないらしいので自分で試行錯誤するしかないかと思った。しかし、まぁ回復系統の魔術を先に教えてもらうべきだろうと思った。
「回復系統の魔術を教えてほしいと言いましたが、どのような効果を求めていらっしゃるんですか?私からアドバイスするとすれば、死者蘇生の魔術はお勧めしませんね」
「なぜですか?」
「それはですね、魔族だと勘違いされて討伐の対象になったり、死霊魔術師だと思われるからですよ。死霊術師だと人々から嫌悪の目で見られたりするのでやめておいた方が良いとおもいます」
「そうなんですか分かりました。じゃあ、呪い等にも打ち消す効果がある魔術はありますか?」
「調べてみます。少し待ってください………見つけましたよ」
「本当ですか?」
「はい」
「有って良かったです。サポート系の仕事が来るか分からないですが、これがあればバッチリじゃないですか?」
「確かにそうですね。じゃあ、魔術を教えますが、1番簡単な獣化の魔術の方から教えますね。まず手順としては、体全体を魔力で覆うようにしてなりたい種族や動物を頭の中で思い浮かべながら魔力を一気に放出させるとできますよ」
体全体に巡らせて、種族などのイメージを入れて一気に放出させるするといつもと違う感覚に支配されたその感覚というのが、嗅覚や聴覚だった。この特徴から私は犬になった事が分かる。しかし、この姿になっても会話が出来るというのもなぜか不思議な感覚に襲われる。視覚の高さが違ったりして違和感がかなりある。戻し方は、放出した魔力を収束させるように戻すと自然とできた。
「これはやはり出来ましたか。空間の創造や接合が出来る時点でうすうす気づいていましたがね。じゃあ、次ですね。準備は良いですか?」
「はい!いつでもいいですよ」
「思ったより消耗していないんですね。まずそこに驚かされます。まぁ、この調子なら回復魔術のできそうですね」
「はい!もちろんです」
「そうですか、ではまた手順の説明を致します。次は対象の部分や味方の陣営の位置などを考えて手に魔力を集める感じでやっていく感じですイメージとしては、暖かく優しい物をイメージしてください」
「分かりました」
「こちらとしても向上心や意欲があった方が教える側としてもうれしく感じるからその心がけは良いと思うよ」
「はい。わかりました」
向上意欲は持っているだけでかなり練習に取り組む姿勢や教えてくれる人への信頼感が高まると思う。しかし、イメージはできたものの、どうも対象が無いから分からないが、微かに自分の手に温かみが感じられる。不思議と安心できるような温かさで癒される気がする。
「こんな感じですか?」
「えぇ、出来ているよ。ところで倦怠感や頭痛なんかは無い?」
「はい、今のところないみたいです」
「本当なの?」
「えぇ、倦怠感なんかも全く感じませんし、体の不調なんてありません。恣意て言えば、お腹が減ったグリですかね」
「そうなの?」
「なぜですか?」
「今教えた魔術は、かなりの魔力を使うはずなんですが、こんなに普通に返してこられて私は内心困っているのです」
「その原因は恐らく龍の力によるものだと思いますが」
「いや、そんな事はありません。なぜなら、まだ契約を行っていませんから、正式な力の提供はできないはずですが少し混じっているのも事実なので完全に違うとも言い難いですね」
「それは少し混じっているだけで完璧には力が出せていないという事ですよね?」
「はい、そうなります」
「そうだったんですか。以前に自分の中にいる龍と話した事があって、“自らこの力を求めたときに力を授ける”とか言っていたので、半信半疑だったのではっきりしてよかったです」
「そうなんですねというか、話がそれましたが、魔眼の事に関してなのですが、どのような物がよろしいのですか?」
「そうですね、見ていて“龍姫の魔眼”という物があったと思うのですが、その能力が良いのでそれにしたいと思います」
「このような魔眼の類の物は私もこの目で見た事が無いので、何とも言えませんが、おそらく出来ると思います」
「何か根拠はあるんですか?」
「根拠なんて大層な物なんてありませんが、龍の力があるのだからトリガーはそろっているので、自分が欲しいと望めば、発現するかもしれないと思われます」
「なるほどです。そういうのは、気持ちが作用するようになってくるというのがやはり妥当な線を行っていると私も思います。そもそも、気持ちがトリガーなら、この空間で“欲しい”と願えば、出来るんじゃないですか?」
「いやぁ~、そればかりはやってみないと分からないですね。私自身使えないので。ですが、試してみる価値はおおいにあると思います」
「やはりそう思われますか?」
「あくまでもこれは、個人の見解なので何とも言えないのですがおそらくは」
「さっきから空気になっていたミーミルさんはどう思いますか?」
「えっ私!」
「他に誰がいるんですか?」
「そうね、私自身としては、自分の未知の領域に足を踏み入れる事はしたい人だからな、やってみるのもいいんじゃない」
「そうですね、じゃあやってみましょう。“ポン”とやって出来る物じゃないと思いますがね」
「ですが、出来ればとんでもなくすごい事です」
そこまで言うならと思い自分に問いかけるようにして龍に話しかけた。すると返事がすぐに帰ってきた。
(起きてる?)
(どうした主よ)
(魔眼の力という物は私でも使えるのか聞きたいんだ)
(その答えは簡単だ。主が望めば、この力は主に合わせていくようになるだろう。しかし、龍の力は人間の考えた魔術とはその質が違う。なぜなら、我が力は人間の体を崩壊させるからだ。そのため、自分たちが使えるように考えられたのが、今の人間が使っている魔術だ。この説明から分かる通り、人間の魔術ばかり使っていると、龍の力に対応できなくなるかもしれんな)
(まぁ、大体の事は分かったよ。自分が望めば力は私に答えてくれるんですよね)
兎にも角にも、願ってみる事にした。すると、自分の体が光に包まれだし、目や体や暖かくなった。私は光に対応できず、目を閉じた。光が収束して少しした後、閉じていた目を開けてみると、身長が伸びているようだった。視覚なんかも少し違う気がする。獣化したときのような感じ方ではなく、人に近いが何かが違う感じだ。なので、ミーミルさんに聞いてみる事にした。
「どうかなってます?」
「龍に近い身体付きになっているわね。特に特徴的なのは、頭の角よ。後、瞳の色が金色色になっているわ」
「ケルヴィムさんはどう思いますか?」
「そうですね、人間自体が変わった訳では無いのですが、外観がすごく変わりました。女性になってますねさっきまでは服を着ていただけなのですが、完璧に龍族の少女になっています」
「鏡か何かありませんか?」
「そんな物ある訳ないでしょ!」
「あ、そうだ。氷で作れば良いんだよ」
「そうだね、はいどうぞ」
「ありがとうございます」
鏡で自分を見てみると、これは普通に龍族になっていた。あんなにハードル高かったのに、あっさりできてしまった自分が怖い。変化があった点は角が生えたり、視覚が変化したり、身長なんかも伸び、さらには、瞳の色が金色になっていた。7歳相応の少女になったかと思っていたが違った。10代中盤の美少女になっていた。
「できちゃいましたね?」
「そうね」
「私もまさか出来るとは思っていませんでした。これで、あなたの対応性の高さが身に染みました。これは、もう人間の出来る領域を遥かに凌駕している。つまり、これは神の領域になりますね」
こんな事を言っているうちに意識が離れていった。
15章になりました。毎回読んでいただきありがとうございます!
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