13章 イリス、入学式へ!
お風呂に入っていたイリスだったが、いやな予感がして抜け出した。危なかったかもしれない。後で見てみるとやはりあの人物が……
あの予感は当たったようだ。後からクルスがすごい勢いで浴場の方に来たからよかったと安堵した。
学園SIDE
私は生徒会長をしている、マナリア・カーティスだ。
私はこの学園の生徒のまとめ役をしているものだ。今日もいつも通り、生徒会室に籠り仕事を淡々とこなしていた。しかし、外が何か騒がしい特に異変はないようだが気になる。こなさないといけない書類はまだだが、ちょっと見に行くぐらいなら大丈夫だろう。しかし、道行く人がちらちら何かを見ているその先には我が7学園長と綺麗な女性ともう一人は、小さな推定5歳ぐらいの子ども?いや、エルフか?すごいな初めてみた。まぁそれは一旦おいておいてしかしなんでまたこんな事がそういえば確か学園長が知り合いが学園に来るという用件の許可を求めていたので承認した気がするな。それがあの人達なのだろうしかしあの小さな子が今回入学してくる子かなかなかいい人材だ。お顔が見えそうだ。お、見えたぞ。
な、可愛いさながら女神が地上に降臨したかのような美貌だ。人を引き付けるような感じの子だ。実際ああいう人材はまずいない。そういう面でもあの子が欲しい。まぁ、仕事などは私がみっちり教え込めば仕事ができるようにはなるだろう。
ふと、水晶で出来た時計を見るとかなり時間が経っている。私は慌てて生徒会室に戻り書類の処理をしに取り掛かった。作業をしているが、あの子の事が頭から離れない。何とか生徒会のいいところを見せて生徒会に引き込まなくてはいけないなと心の中で決めた生徒会長であった。
イリスSIDE
お風呂からあがった後、クルスは凄く黒いオーラを出していたが、そんな事で甘やかしてはいけない。そんな事では会えないときはどうしているのか僕は気になって眠れやしない。そんな事せずにこっちに直接来るのは避けたい。なので、ここで僕が来る前の環境に戻さなくてはならない。定期的には帰ると言ったが、毎日帰る訳では無い。前僕がクルス部屋に行ったときのように禁断症状が出るかもしれないが、我慢してもらおう。見ていたらクルスが復活した。ふらふらと立ってお風呂へ向かった。
なので、自室に戻って寝る事にした。しかし、僕は悪い予感がするないつものようになので早めに寝る事にした。僕の明日の予定は、無いな。うん、ないです。そしていつの間にか眠りに落ちてしまった。だが、僕の予感は当たってしまった。何しろベッドの横にクルスが来ていた。開口一言目が、
「イリスの寝顔、可愛かったわよ」
「へ~」
一様素っ気ない態度をとってみる事にした。それが案外良い効果を示した。エネルギーのなくなった植物ではないが一気にダウンし、復活して僕の頬に自分の頬を当ててスリスリしてきた。顔を押しのけて逃げた。なつかれているというのか、それとも遊ばれているのか分からないがそんな事あ関係無い。これもクルスのためだ。なので心を鬼ししているのだ。
「ねぇ、イリスかまってよぉ~」
「こんな調子で僕が離れたときはどうするの?」
「イリスが定期的に帰ってくるっていったからその時にリチャージすれば大丈夫よ、多分ね」
「それを確実に“はい”と言えるようになってほしいんだよね」
「そんなの無理よ、私の宝物を奪うことはなにであってもできないいや、させないわ」
そんな風に思われていたなんて嬉しいと思っていいのか恐怖を感じるべきなのか分からない。だが、ここでは口に出せないなと思った。しかしこんな調子で本当に大丈夫なのか心配になってきた。それから朝ごはんを食べてレイピアを持ち、町に出るべく格闘に特化したメイドさんを借りていくことにした。そのことを伝えると案外簡単に許可を出してくれたので良かった。しかし町に出ると言っても武器屋に行ってケブラーワイヤーの製作を依頼しに行くのと、“ソフィーが服を買ってきなさい”と持たせてくれたお金で服を買わなければならない。仕立ても採寸もあっちで行われるので測らなくても大丈夫だろう。そんな事を思いながら馬車に乗って帝都まで来た。露天などを見ながら付き添ってくれているメイドにいい店の場所を聞いてみた。すると、
「イリス様、ここはフリフリの可愛いドレスが有名です。そして、こちらには刺繍の綺麗なドレスが沢山おいてありますよ」
「こっちのお店は?」
「そこは、私たちのような使用人が着用するメイド服や執事服を製作するお店でございます。なので、あまり関係ないかと」
「1回行ってみない?」
「そう仰いますなら、行きましょうか」
「やったー」
落ち着いた雰囲気の外観のお店の扉を開けるとそこは、古い建物ながら手入れが行き届き1種の絵画を見ているような気分にさせる。奥に進むと1人のお爺さんがいた。入ってくるとすごい勢いでこちらに接近してきた。
「この度のご来店誠にありがとうございます。今日はどのようなご用件でしょうか?」
「展示しているものを少し見ていきたいのですけど宜しいでしょうか?」
「勿論でございます」
と言って新しい執事服を作り始めた。隣にいるメイドさんが僕のそばを離れてはいないものの目を見開いて時折閉じる店内を物色しているのが明らかだ。と言うか僕に合うものを選んでいるんじゃないかな?ならばと思い、
「ねぇ、この中で僕に一番似合うのはどれだと思う?」
「そうですね、こちらのミニスカートを穿いていただいて、二―ソックスを穿いていただけば完璧ではないかと」
「そうなんだ」
この人の性癖バレバレじゃないか!と思いつつ、買う事にした。再び店主の元へ行き購入の事を伝えるとメジャーを持ってきた。
「では、採寸を致しますのでこちらまで来ていただけますか?」
はいと、言う前に口が開いたのは護衛のメイドさんだった。
「私が測る様にと主人に言伝を賜っているので私がいたします」
「そうですか。ではこちらをお使いください」
「了解しました」
「まずは、ウエストから行きましょう」
「はい」
動かないようにしていると、事故を装って抱き着いてくるが何も反応しないようにした。しばらくすると、採寸は終了した。様々なサイズが書かれている紙を渡し、15分待つとすぐに出来上がった。はやっ!と内心で思いつつ受け取りお金を払い外に出た。あたりはもうお昼時だった。人の往来が来たときよりも多くなっている。この辺でお昼ご飯を取る様にしたいが、おいしくて安いところはないかとメイドさんに聞くと、
「所持金からしていける場所はそうですね~」
「ここのお店ですかね」
外見はカフェを彷彿とさせる佇まいだが、冒険者たちも見かける。しかも賑わっている。
「よし、じゃあここにしよう」
「かしこまりました」
「立たなくていいよ、一緒に座ればいいじゃないですか」
「ですが!」
「良いよ。僕が許すから」
「では失礼いたします」
「料理はなにを頼む?僕はこのグラスラビットのから揚げにするよ」
「そうですね。では私は、このツリーベアーの香草焼きにいたします」
ちなみにグラスラビットと言うのは、野ウサギを1回り大きくした兎のことだ。後のツリーベアーも大きな熊の事だ。
学園で制服着ようかななんて思っていたらおいしそうな匂いを漂わせながら運ばれてきた。早速戴こう。口の中に入れると肉のプリッとした食感があり、衣はカリカリだ。控えめに言ってうますぎる!隣に座っているメイドさんもツリーベアーに舌鼓を打っていた。それからお代を払い店から出て、制服の靴を見に靴屋に入った中には沢山のブーツが置いてありびっくりした。しかし、ブーツは“これだ!”と思ったのが早く見つかったしサイズもちょうどだったのでロングブーツで黒色のヒールを買った。これは、戦闘になったときは足音が消せる魔法もあるが、いざと言うときに使えなかったという事を減らすためだ。しかしこんな必要があるのかはわからないが、備えておくには十分だろう。しかも、ちゃんと可愛く刺繍が施されているのでクルスも文句は言わないはずだ。
外に出て僕は、馬車を呼んだらすぐに来た。街の中で途中から妙な視線を感じるんだが、まぁ気のせいと言うことにでもしておこう。だが、もう一つ視線がある。それは、護衛を頼んだメイドさんだ。さっきからこちらをちらちらと見てくる。
「どうかした?」
自分では可愛いか分からないがクルスを撃沈させた上目遣いで小動物のようなイメージをしたものをやってみると案外皆イチコロだ。聞かないのか分からないが、以前ルーシィ―にも同じようにやってみたが顔色1つ変えなかった。これにはちょっとショックを受けた。
「はぅ、い、いえ特に早くあの服を着てほしいなんて微塵もこれぽっちも思ってなんていませんよ?本当ですよ!」
マジな顔でこちらににじり寄ってきた。少しめんどくさくなりそうなので適当に、はぐらかしておいた。それから少しすると馬車が来て乗せて帰ってもらった。本当は魔術で飛べるけどあの魔術を人前で使う訳にもいかないし、仕方なく馬車にした。そして馬車は目的地に着いた。御者のおじさんにお礼を言いお金を払った。すると城の中から僕を呼ぶ声がする。
「お帰り~イリスぅ~」
「う、うん、ただいま」
「怪我とかない?」
「変な視線はあったけど危険なものでもなかったから放置しておいた」
「そうね。でも、来たときは反撃しなきゃダメよ?」
「それは勿論!」
僕は自信をもって答えた。するとクルスは“よし”といった顔になっている。しかし、よくよく考えてみれば今の季節から考えて入学式はもう少しだ。見た目と年齢が合わないと何かと不便な事にもなるが、しかし、良い事もある。例えば、何かと安い料金で買い物できるし、優しくしてもらえる。でも不思議と女の人に狙われる事が多い。見抜かれているのだろうか?まぁ、些細なことか。
そういえばクルス達はいつ帰るんだろうか?良し、聞いてみよう!
「クルス?」
「何?」
「そういえば、いつあっちに戻るの?」
「そうね、入学式がもう少しだから、それが終わったらかな?どうして?」
「単に気になっただけ」
今更だが、僕という1人称の呼び方はやめておいた方がいいかもしれないなと思った。なぜなら、少なくとも、不審に思われる要因は取り除いた方が良いと感じたからだ。権力は使えないしいやでも揉み消す事ぐらいならできそうだなと思った。でも、まぁ迷惑をかける訳にはいかないしね。やめておこう。
それからは自室に帰り、自然に“私”といえるように練習していた。ドアが開くような事はなく、聞き耳をたてられている感じはしているような気がしたときは、足音が経たないように忍び足でドアの前まで行き思いっきりドアを開けるそんな事を何回かしていたらもう慣れてきた。だって、これを1週間ぐらいやっていれば当然である。
「イリス様?御夕食の準備が出来て御座います」
「あ、はい。どうも」
僕の今の姿は、あの仕立ててもらったメイド服を着ているなので、この姿を見られてしまった。結構冷静にしているが、しかし内心はカオスだった。なぜなら、この服を採寸するときに肌を見せてしまっているのだから。いやしかし、見られても良いのかもしれないと思うのでカオスだった。
「やはりそのお洋服がお似合いですね!」
「あ、ありがとう」
そんなに目を輝かせないでお願い!そんな事言ってもクルスがどうせ塗り替えしてくるんだろうなと思いつつ夕日に染まった廊下を歩いていた。するともう目の前に扉が迫ってきた。そうして、中に入るとよりにもよって2人がかかってくるとは思わなかった。
「イ、イリス!」
「か、可愛過ぎる!」
「2人共やめてよ」
「まぁ、そのへんにしてくださいませ」
「まぁそうしておきましょう」
ルーシィ―が間に入ってくれたおかげで何とかなった。流石ルーシィ―、ナイスフォロー!なんていうか絶妙なタイミングだよな?まぁいいか。
「さぁ、ご飯を食べよう」
「「うん」」
2人の声が重なった。それからいつもの晩餐が始まった。
あれから数週間が経ち、入学式の前日になった。
「クルス明日は、私の入学式だよ」
「そうね、楽しみよね?」
「うん。それに友達も新しく作れるし、それに」
「それに?」
「学友でもあり共に王族なら、国の内部や友達になる事で友好条約の締結がしやすくなり、国が平和になるんだったら、余計にその関係を結んだ方が勝ちやすくなる」
「そうかも知れないわね」
それから時は早く進んでいった。ついに待ちに待った入学式だ。僕いや、私の心のドキドキが止まらない!
今回も読んでいただき誠にありがとうございます。
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