私が犯した罪2
飴と鞭を使い分けるのがとても上手な人だった。
いつも冷たいくせに、ほんのたまに優しくなる。
わがままな私はその優しさが欲しくてたまらず、冷たくされたときにはそれ以降無視を続けるようになった。
(私が話さなくなったら、先生きっと優しい態度とるんじゃないかな?)なんて幼稚な考えで。
「おい」
「なに?」
それでも彼は、わざわざ塾校舎の外まで見送りに来てくれる。
私にしかしていない、ということには最近気づいた。
「ん。」
私が着ていたパーカーのポケットに、手が滑り込んできた。
「なにこれ」
メモ用紙が小さく折りたたまれている。
「家に帰ってから見ろ。」
「は?なんで」
「いいから。」
ほんとなんなの、この人。
少々イラッとしながら、「わかりました。さようなら」
私は冷ややかな態度を取り続け、自転車を漕ぎ出した。
角を曲がり、塾が見えなくなってから自転車を止める。
(家まで待てるわけないじゃん)
ポケットからメモを取り出し、こっそりと開く。
「え?」なに、これ。
そのアルファベットの羅列がメールアドレスだということを理解するまでに数秒かかった。
塾講師が生徒に個人情報渡していいの?
いいわけないじゃない。
この先生、なにしてるの?
そんな冷静な自分と、
やっぱり私は特別扱いされている
まんざらでもない自分。
「どうしようかな、これ……」
考えながら自転車に乗り直し、夜の街を走り始めた。
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