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カジノジャック!  作者: オックス君
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余計な歓迎

心地よい夜風が吹くホテルのエントランスで、俺は今、招かざる者に歓迎されてしまった。

棒私立大学の麻雀サークルの卒業旅行でアメリカに来た俺たちは、現地の置き引きにあった。幸い盗まれたのは俺の鞄だけで、その鞄のなかには衣類や日用品、洗面器具なので、証明書類、現金などは別の鞄に分けて管理していたので、大丈夫だった。しかし盗まれた鞄の中にはグランドキャニオンで買ったお土産や写真を撮ったカメラがあったので何としても取り戻したいのだが、警察は掛け合ってくれないだろうという諦めが頭の中でとぐろ巻いている。

そんな頃、松井薫と早乙女一男が近づいて、早乙女が相変わらずの落ち着いた様子で

「もうそろそろ心の整理がついた頃合いかな。チェックインしたから部屋に行こうぜ。」と言う。

こいつはこのサークルの4人のなかでも一番麻雀のイロハを理解していて強い。しかも長身、イケメン、スポーツできて、頭も切れるリアル出木杉君だ。松井は大阪出身の中肉中背の男で、甲乙つけ難いような顔の持ち主だ。しかし聡明で包容力があり面白いから、結構モテる。

「まあ、海外じゃよくあることだしきにせずにね。」と紅一点の前原加奈が言う。ショートカットで童顔というロリッ気漂う子だが1年中ミニスカかホットパンツしか履かないちょっと変わった子でもある。

「お、おう。」と俺が気の無い返事をすると、

「そんな間抜けな雰囲気醸し出してるから狙われるんやで泉くぅ〜ん。」と揶揄う様に言ったので、機嫌悪そうに返事した。

「仕方ねぇだろ、相手も狡猾なもんだから俺がスマホ弄ってる時にスリやがった。畜生!」

「HAHAHA、流石アメリカンクオリティ!やることがちゃうで。」

「それって股の事に関しても別格クオリティかぁ!?」

「そりゃそうだろ、この国のソープ嬢はうまか棒の扱い方も日本の女とは違うからな。」 と少々いき過ぎた内容の話を部屋にむかいながらしていると、前原が顔を真っ赤にしながら顔を伏せていた。やばい、こいつの存在を忘れていた。彼女はこういうのに関してはうぶなので、凄く恥ずかしがる。

サークル活動中にはこういうのが多々あった。サークル結成時は、前原は元々口数が少なく、遠慮深い子なので空気になることがあった。その上彼女はプライベートでテニスをやっているので、サンマになることが多い。だがなんだかんだいって彼らと付き合いだして約4年、みんなこの状況は慣れっこだ。次の第一声は必ず前原だ。今回も気不味い空気が流れる中で前原が気をつかって、

「今夜行くレストラン、美味しかったらいいね〜。」と言う。

「その前にホテルの部屋に札が貼られてないことを祈るよ。」と早乙女が縁起でもないことを言う。

部屋に入ると価格の割には清潔感漂う部屋だった。しかし部屋は幾つかの絵があった。怖いもの知らずの早乙女が一枚一枚捲っていくと、どうやら外れを引いてしまったらしく、「あ、やべ。」と声を漏らしていた。

「ここは眠らない街ラスベガスやで、ギャンブルで負けた奴がこの部屋で自殺してもおかしないやろ。」と考えまいとしてたことを松井が寸分違わず言いいやがった。

今夜は聖書を抱いて寝ることにしよう

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