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悪役令嬢の引退カフェ経営。静かに暮らしたいのに、元婚約者が「君の淹れる紅茶じゃないとダメだ」と泣きついてくる。知らんがな。  作者: 綾瀬蒼


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第23話 学園のボス登場! そして伝説の『クッキー降伏』

『帝国立魔法学園』の入学式翌日。

 ピカピカの制服に身を包んだエリザは、教室の中心で注目の的になっていた。


「あれが噂の皇女殿下よ……」

「入学試験で校庭にクレーターを作ったって本当?」

「ブラックホールを出したらしいぜ……」


 クラスメイトたちは、遠巻きにヒソヒソと噂話をしている。

 どうやら「歩く災害」として恐れられているようだ。

 エリザ本人は、そんな視線など全く気にせず、「きょうのおやつはなんだろう?」とリュックの中身を確認していたけれど。


 そんなエリザの机に、ドン! と乱暴に手をつく影が現れた。


「おい! お前がエリザ・フォン・ガルディアか!」


 立っていたのは、赤髪をツンツンに逆立てた、偉そうな少年だった。

 取り巻きの男子生徒を二人従えている。典型的なガキ大将スタイルだ。


「僕はこのクラス……いや、この学年を仕切るマクシミリアンだ! 父上は帝国騎士団の副団長だぞ!」

「ふーん。エリザはエリザだよ」

「なっ、なんだその態度は!」


 マクシミリアンは顔を赤くした。

 彼は入学前、自分が一番強いと思っていたのに、試験でエリザに話題を全てかっさらわれたのが気に入らないらしい。


「いいか! 皇女だろうが関係ない! この学園では実力が全てだ!」


 彼はビシッとエリザを指差した。


「放課後、裏庭に来い! 僕と魔法で勝負だ! 負けた方が勝った方の『子分』になる……それがこの学園のルールだ!」

「こぶん?」

「そうだ! 僕が勝ったら、お前のおやつを毎日半分よこせ!」

「……えっ」


 エリザの表情が変わった。

 おやつを半分。それは、彼女にとって宣戦布告以上の重みを持つ言葉だった。


「おやつは……わたさない」

「だったら勝負だ!」


 ◇◇◇


 放課後の裏庭。

 噂を聞きつけた生徒たちが、野次馬として集まっていた。


「いくぞエリザ! 僕の『フレイム・ランス』を受けてみろ!」


 マクシミリアンが杖を振ると、彼の頭上に小さな炎の槍が三本出現した。

 一年生にしては高度な魔法だ。周囲から「おおーっ」と歓声が上がる。


「どうだ! 降参するなら今のうち……」


 ヒュンッ。

 炎の槍が発射される――直前。


「……『パックンフラワー』」


 エリザがボソッと呟き、地面に手を触れた。


 ズゴゴゴゴッ……!!

 

 地面が割れ、そこから巨大な植物のツタが飛び出した。

 ツタの先には、直径2メートルはある巨大な「食虫植物のような花」がついている。


 ガブゥッ!!


 巨大な花は、マクシミリアンが放った炎の槍を、一瞬で丸呑みにしてしまった。


「は……?」

「もぐもぐ……ゲップ」


 花は満足そうにゲップをして、スルスルと地面に戻っていった。

 あたりに静寂が訪れる。


「……え、今のなに? 植物魔法?」

「パパ(皇帝)におしえてもらったの。『いやなものは食べちゃえ』って」

「魔法の概念がおかしいよ!?」


 マクシミリアンは腰を抜かしてへたり込んだ。

 自分の最強魔法が、謎の花に「捕食」されて終わったのだ。プライドはズタズタである。


「くっ、くそぉ……! 僕の負けだ……! 煮るなり焼くなり好きにしろ!」

「……おなかすいたね」


 エリザは勝負のことなど忘れたように、リュックから可愛い包みを取り出した。


「マ、ママの特製クッキー、たべる?」

「は? ……同情する気か! そんなものいらな……」


 グゥ〜〜〜。

 マクシミリアンのお腹が、盛大に鳴った。

 魔法を使って空腹だったのだ。


「……ひとつだけ、もらってやる」


 彼は悔しそうにクッキーをひったくると、口に放り込んだ。

 その瞬間。


 サクッ。ホロロ……。


 バターの芳醇な香りと、優しい甘さが口いっぱいに広がる。

 それは、帝国の無骨な菓子しか知らない彼にとって、衝撃的な体験だった。


「……う、うま……っ!?」

「おいしいでしょ? ママがつくったの!」

「なんだこれ……サクサクなのに、口の中で溶けた……!? こんな美味いクッキー、食べたことないぞ!?」


 マクシミリアンは目を見開き、震える手でもう一枚を求めた。


「も、もう一枚! 頼む、もう一枚くれ!」

「いいよー」


 エリザが缶ごと差し出すと、マクシミリアンだけでなく、取り巻きの男子たちも群がってきた。


「僕にもください!」

「すげぇ美味い!」

「エリザ様、一生ついていきます!」


 気づけば、裏庭は「クッキー試食会」と化していた。


「……分かった。僕の負けだ、親分」


 口の周りをクッキーの粉だらけにしたマクシミリアンが、エリザの前で片膝をついた。


「約束通り、今日から僕は君の子分だ! だから……明日もそのクッキーを持ってきてくれないか?」

「うん! おともだち、だね!」


 エリザはニッコリ笑って握手を求めた。

 こうして、学園のガキ大将は、わずか一枚のクッキーによって陥落した。

 

 その光景を見ていた上級生たちは震え上がったという。

 「あの皇女、武力ブラックホールだけでなく、精神支配(餌付け)まで使いこなすのか……」と。


 最強幼女の学園支配は、着々と進行中である。

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