表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢の引退カフェ経営。静かに暮らしたいのに、元婚約者が「君の淹れる紅茶じゃないとダメだ」と泣きついてくる。知らんがな。  作者: 綾瀬蒼


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/50

第22話 娘の学園お受験と、魔王直伝の『護身魔法』

 時は流れ、愛娘エリザは6歳になった。

 今日は、帝国屈指の名門校『帝国立魔法学園・初等部』の入学試験日だ。


「ううっ……エリザ……本当に行くのか? パパと離れて暮らすなんて……」

「パパ、なかないで。寮にはいるわけじゃないよ? 毎日おうちに帰るよ?」


 朝のカフェ『オアシス』にて。

 真新しい紺色のブレザーに袖を通したエリザが、ボロボロ泣いている父親(皇帝)の背中をさすっていた。

 ジーク様は「いっそ学園を王宮の敷地内に移築するか……」と危険な独り言を呟いている。


「ほらジーク様、鼻をかんで。エリザ、ハンカチとティッシュは持った?」

「うん! あと、おじちゃん(魔王)がくれた『非常用魔石』と、ママ特製の『マドレーヌ』も持ったよ!」


 私はエリザのリュックを確認し、背中をポンと叩いた。


「いい? 先生の言うことをよく聞いて、魔法を使う時は『手加減』よ。半分……いいえ、十分の一くらいの力でね」

「はーい!」


 一抹の不安を抱えつつ、私たちは試験会場へと向かった。


 ◇◇◇


 試験会場には、緊張した面持ちの貴族の子供たちが集まっていた。

 試験内容は二つ。『魔力測定』と『実技面接』だ。


 まずは魔力測定。水晶玉に手を触れ、その輝きで魔力量を測るというオーソドックスなものだ。


「次、エリザ・フォン・ガルディア様」


 試験官に呼ばれ、エリザがトコトコと水晶の前に立つ。

 周りの親たちが「あれが噂の皇女殿下か」「カフェの娘だろう?」とざわめく。


「では、手を乗せてください」

「はい!」


 エリザが小さな手を水晶に乗せた。

 その瞬間。


 カッッッ!!!!


 太陽が爆発したような閃光が走り、会場中がホワイトアウトした。


「目が、目がぁぁぁ!!」

「な、なんだこの魔力は!?」


 パリーン!!

 小気味よい音がして、測定用の水晶(国宝級)が粉々に砕け散った。


「あちゃー……」

「……またやったか」


 保護者席の私とジーク様は同時に顔を覆った。

 エリザは「あれ? 壊れちゃった。もろいねぇ」と無邪気に首を傾げている。

 試験官は泡を吹いて倒れかけていたが、なんとか気を取り直して次の実技へと進んだ。


 ◇◇◇


 続いて、実技面接。

 中庭にて、カカシに向かって得意な魔法を披露するというものだ。


「ではエリザ様。何か簡単な攻撃魔法を見せていただけますか? 小さな火のファイアボールなどで結構ですので」


 試験官の先生が優しく促す。

 エリザは少し考え込み、ニコッと笑った。


「わかった! じゃあ、おじちゃんに教えてもらった『ごしん(護身)まほう』をやるね!」

「ほう、護身ですか。感心ですねぇ」


 先生が微笑ましく見守る中、エリザはスッと右手を掲げた。

 そして、無邪気な声で詠唱する。


「――深淵より来たりて、全てを無に還せ。極大消滅呪文ヴォイド・エクストラ!」


 ズオォォォォォォッ……!!

 

 上空に直径50メートルほどの『ブラックホール』が出現した。

 周囲の空気、光、音、そして的のカカシが一瞬にして吸い込まれ、消滅していく。

 学園の結界が悲鳴を上げ、校舎のガラスがビリビリと震える。


「ぎゃああああああ!!」

「ご、護身!? これのどこが護身だぁぁぁ!?」

「世界が終わるぞぉぉぉ!!」


 先生たちが抱き合って絶叫する。

 私は慌てて止めに入った。


「エリザ! ストップ! それは『国を滅ぼす時に使うやつ』でしょ! もっと可愛いやつにして!」

「えー? じゃあ……『プチ・メテオ』!」


 エリザが杖を振ると、ブラックホールが消え、代わりに空から燃え盛る隕石(直径2メートル)が降ってきた。


「ぜんぜんプチじゃなーい!!」


 結局、ジーク様が剣で隕石を一刀両断し、事なきを得た。

 校庭には巨大なクレーターができ、先生たちは腰を抜かして白目を剥いている。


 エリザは不思議そうに私を見た。


「あれぇ? おじちゃん(魔王)は『悪い虫がつかないように、これくらいはやれ』って言ってたよ?」

「おじちゃんには後でお説教しておきます(怒)」


 ◇◇◇


 試験終了後。

 学園長室に呼び出された私たちは、土下座せんばかりの勢いで学園長(震えている)から合格通知を渡された。


「ご、合格です……! 文句なしの主席です……! ですので、どうか校舎だけは破壊しないでください……!」

「ご迷惑をおかけしました。お詫びにこれを」


 私は持参した『特製マドレーヌ(精神安定効果付き)』を箱ごと差し出した。

 一口食べた学園長は、涙を流して落ち着きを取り戻した。


「……はぁ、美味しい。生きているって素晴らしいですね」


 帰り道。

 エリザは合格通知を胸に抱き、ジーク様と手をつないで歩いていた。


「パパ、みてみて! ごうかくだよ!」

「ああ、すごいぞエリザ。……だがパパは心配だ。あんな魔法を使ったら、男の子たちが怖がって近寄ってこないんじゃないか?」


 ジーク様が本気で心配している。

 私は苦笑した。


「あら、いいじゃないですか。悪い虫除けには最適ですよ」

「……それもそうか。よし、入学祝いにパパがもっと強い結界魔法を教えてやろう」

「あなたも余計なことを教えないでください!」


 最強幼女の学園生活は、入学前から波乱の予感しかない。

 とりあえず、明日からのお弁当には、先生へのお詫び用クッキーを常備させておこうと、私は心に誓ったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ