表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Astrolibra-星々の余白-【公式設定資料集】  作者: 夢想の月
特別付録/ちょっとした小話
5/7

閑話1:賢者、温泉に行く。

本編、あまりにシリアスでまともにギャグ閑話なんて書けないんですよ。

三柱――勇者・魔女・賢者。

彼らは、それぞれの権能を用いて三つの神具を生み出した。


勇者は「衡断の儀衡」。

魔女は「裁価の瞳」。

そして賢者は、生命体に極めて近い機構を持つ人形を定期的に創り、魂を移動することで実質の代替わりをしている。

その身体には「バグ」も「バッテリー」も存在しない。

あるのは、繊細で美しい器と、魂の重みだけ。


陶器のように白く、滑らかな肌。

銀の絹糸のような長髪に、整った顔立ち。

高身長に、気品すら漂う美貌。


――ただし、社畜である。


仕事に追われる日々の中で、銀髪は輝きを失い、

目の下には綺麗なクマ。

それすらも、肌が白すぎるがゆえに目立ってしまうという仕様。




ーーーーーーーーーー




ある日、魔女ミーティアが様子を見に来たとき、

賢者セファルは机に突っ伏して書類と一体化していた。


「……セフ、あなたは温泉に行くべき。

一度リセットされてきなさい。あとドーナツあげる」


ティーセット片手にそう言い放ったミーティアに、

賢者は抵抗する力もなく、そっと頷いた。


「2日だけでいい。仕事は私がやっておくから」




ーーーーーーーーーー




そして、セファルは温泉へ旅立った。


辿り着いたのは静かな山間の宿。

柔らかなお湯に包まれ、心身はゆるゆると解けていく。


山菜尽くしの膳、地元の銘菓、ふかふかの布団――

「……これが……生きるということ……」

そう呟いたその顔には、久々の血色とツヤが戻りつつあった。




ーーーーーーーーーー




一方その頃、禁域では――


ミーティアが、紅茶とドーナツで優雅にお茶をしながら、背後から宇宙色の魔法の腕(触手ではない)を十数本召喚し、とんでもない速度で書類を片付けていた。


「この内容なら、無効ね。はい次。これは即通す。で、これは……炎上の予感がするわね、却下」


紙が空中を舞い、スタンプが魔法で押されていく音と、ペンを走らせる音、勇者カインのダンベルを持ち上げる声だけが響く。うるさい。




ーーーーーーーーーー




2日後、帰還した賢者は、ほぼ空っぽになった書類棚を見てフリーズする。


その視線の先では、ミーティアが今日もドーナツを食べていた。

その背後にはまだうごめく宇宙色の腕たち――。


「………あの、やっぱり私……向いてないかも……」




ーーーーーーーーーー




ちなみにカインはというと、

「いやぁ、ミーティアと仕事してる方が効率いいよな!最高!」

と言いながら横で筋トレしていた。


賢者はその光景を見ながら、温泉のパンフレットをぎゅっと握りしめた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ