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第12章 そりゃあんまりだろ!

"その小さなテディベアは、ドアにしがみついたまま、リ・パイの言うことを素直に聞く様子はない。

リ・パイはニヤリと笑う。

(あの女幽霊は無理でも、お前くらいならどうにでもなるぜ?)

リ・パイは再び手を伸ばし、ベッドの上の胴体に巻かれた包帯に触れ、ぐにぐにと揉んでやる。


案の定、テディベアは我慢できなくなったらしい。短い足を動かし、リ・パイに向かって突進してきた。

リ・パイの目の前まで来たところで、テディベアはブレーキが間に合わず、リ・パイのすねに頭からゴン、とぶつかる。

リ・パイのすね毛が一本、深刻なダメージを負った。

続いて、テディベアはめちゃくちゃなパンチ――いわゆる「王八拳」を繰り出し、小さな手でリ・パイのすねをペシペシと叩き始めた。

まるでくすぐられているかのような攻撃に、リ・パイは思わず笑ってしまいそうになる。


リ・パイの笑みを見て、テディベアは自分が馬鹿にされたと感じたようだ。渾身の力でリ・パイに蹴りを放つ!

……が、その反動で、自分自身がしりもちをついてしまった。

ドジっ子っぷりが、なんとも不憫で可愛い。


リ・パイはこれ以上からかうのをやめ、さっと屈んでテディベアをひょいと掴み上げ、目の前まで持ってくる。

テディベアは手足をじたばたさせて抵抗しようとするが、残念ながら、その手足はあまりにも短く、リ・パイに届きそうもない。


「お前、俺の言葉、わかるんだろ?」


リ・パイはテディベアのボタンでできたつぶらな瞳を見つめて尋ねる。

テディベアは無視。ぷいっと顔をそむけ、リ・パイの方を見ようともしない。

こいつ、意外とツンデレか? リ・パイは、そんなテディベアに対し、迷わず「必殺技」を繰り出すことにした……。


……


テディベアはついに耐えきれなくなり、くたっとした様子で顔をリ・パイの方へ向けた。


「そうそう、それでいいんだよ!」


リ・パイは満足げに笑い、手を引っ込める。


「俺が質問する。お前が答える。わかったな?」


リ・パイは簡潔に尋ねる。

テディベアはこくりと頷いた。

ただのぬいぐるみだが、その悔しさがリ・パイにははっきりと伝わってくる。

まあ、悔しかろうがなんだろうが、所詮はゲームの中のNPCだ。

リ・パイは普段はそこそこ善良な人間(自称)だが、現実は現実、ゲームはゲームだ。

こんな陰鬱なホラーゲームの中で、NPC一人の感情まで気遣う必要はないだろう。


「お前、この屋敷のこと、詳しいのか?」


リ・パイは単刀直入に尋ねた。

もしこのチビ助がこの屋敷に詳しければ、何か隠された手がかりを見つける手伝いをさせられるかもしれない。

探索度が上がる可能性があるなら、リ・パイは見逃さない。


テディベアは少し躊躇った後、やはり頷いた。


「ここでいったい何があったんだ?」

「なんでエローラはバラバラにされちまったんだ?」

「2階の女幽霊とあの怪物は何者なんだ?」

「屋根裏部屋には、いったいどんな恐ろしいモンが待ってるんだ?」


リ・パイは心の中にあった疑問を、立て続けにぶつけた。

このゲームの設定からすれば、真相に近づくことでも探索度は上がるはずだ。


テディベアはきょとんとし、やがてがっくりと頭を垂れ、両手を広げてお手上げのポーズをした。

リ・パイは理解した。

(こいつ、喋れねぇのか)

まあ、そりゃそうか。口は糸で縫い付けられてるんだ。これで喋れたら、それこそホラーだ。

リ・パイは周りを見回すが、机の上には紙やペンらしきものもない。

仮にあったとしても、こいつの手じゃペンなんか持てんだろうし。

もっと簡単な方法に切り替えるか。


「エローラは、あの女執事にバラバラにされたのか?」


リ・パイは尋ねる。

テディベアは小首をかしげてしばらく考え込んでいる。何か葛藤しているようだ。

やがて、こくりと頷き、次にぶんぶんと首を横に振り、そしてまたこくりと頷いた。


(……どっちだよ!?)リ・パイは混乱する。

このテディベア、頭のネジでも飛んでんのか?

それとも、この事件は俺が思っているより複雑なのか?


「あの女執事は、いい人なのか?」


リ・パイは聞き方を変えてみた。

このテディベアの立場や正直さがどの程度かは分からないが、一つの方向から質問を続ければ、何か有用な情報が得られるかもしれない。

今度は、テディベアは迷わず、しっかりと頷いた。


「……そうか」


リ・パイは顎に手を当てる。

このテディベアの様子からすると、砕かれた美人(ブロークン・ビューティー)の体をとても大事に思っているのは明らかだ。ちょっと触られただけでも過敏に反応するくらいだ。

ということは、こいつは砕かれた美人サイドの存在である可能性が高い。

そいつが女執事を「いい人」だと言うなら……。

少しは信憑性があるかもしれない。


リ・パイは、これまでに得た情報を頭の中で整理する。

女幽霊は、エローラは女執事にバラバラにされたと言っていた。

さっきのテディベアも、その点は否定しなかったが、反応はややこしかった……。


(もしかして……)

リ・パイの頭に、ピコン!と閃きが走る!


「女執事はエローラ様をバラバラにした。だが、それは彼女を害するためじゃなく、何かやむを得ない理由があったからだ!」

「……そうなんだろ?」


リ・パイはテディベアを見る。

今度は、テディベアはさっきのような複雑な反応は見せず、力強く頷いた。


「2階のあの女幽霊は、エローラの体を乗っ取ろうとしてるんだな?」


リ・パイは正しい方向に進んでいると感じ、さらに質問を続ける。

テディベアは再び頷く。


「ってことは……」

「女執事がエローラ様をバラバラにしたのは、あの女幽霊にエローラの体を乗っ取らせないため……か?」


リ・パイは、点と点が線で繋がっていくのを感じた。

事件の真相が、少しずつ見えてきた気がする。

テディベアは、リ・パイの考えを肯定するように、また頷いた。


`「一部の手がかりを入手」`

`「探索度:40%」`


探索度が上がった!!!

リ・パイは心の中でガッツポーズする。

まさか、適当に質問してるだけで探索度が上がるとは!

ということは、さっきこのテディベアから聞き出した情報は、全部本当だったってことだ!

そう、システムは嘘をつかない。


となれば、確定だ。この屋敷では、女幽霊が悪役NPCで、このテディベアと女執事が味方NPCだ!

……でも、じゃあなんで女執事は包丁を持って俺を追いかけてきたんだ?

マジでただの「おもてなし」だったのか? 俺の勘違い?

それに、あの紅茶には、なんで薬が盛られていたんだ?

リ・パイの心には、まだ小さな疑問が残っている。


まあいい。そんなことは重要じゃない。

今は探索度が40%もあるんだ。もうすぐこのクソみたいな場所から脱出できる!


「そうだ、俺がもし屋根裏部屋に行ったら、死ぬか?」


リ・パイは、ついでに気になっていたことを尋ねてみた。

テディベアは少し間を置いて、それからこっくりと頷いた。


「……やっぱり死ぬのか……」

「屋根裏部屋は絶対に行っちゃダメだな!」


リ・パイは改めて心に誓った。

手に持ったテディベアを見て、リ・パイは、もう特に聞くことはないか、と考えた。

こういう「はい」「いいえ」形式の質問は、ある程度の情報を事前に持ってないと効率が悪い。下手をすると、一つの質問に半日かかってしまう。

今は、まず3階に残っているはずのもう片方の脚を見つけるのが先決だ。


「彼女の右脚がどこにあるか、知ってるか?」


リ・パイはテディベアをじっと見つめて尋ねる。

テディベアは、思わずこくりと頷き、直後に慌てて口元を手で覆った。

その慌てっぷりが、完全に自白しているようなものだ。


「案内しろ」


リ・パイは命令する。

テディベアは必死に首を横に振り、リ・パイの要求を断固として拒否する。


「……ただの胴体だからって、俺が手を出さないとでも思ってるのか?」


リ・パイはズボンのベルトあたりに手をやり、ちらりとベッドの上の胴体――その下腹部の包帯あたりに視線を送る。

リ・パイが何で脅しているのか、その意図は明白だった。


テディベアは全身をブルブルと震わせた!

まさか、人間が……そんな……!


そりゃあんまりだろ!!!!"


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