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【第2話】導きの神リュミエル

 ……私は神だ。無数の命を送り出してきた、導きの神リュミエルだ。

 突如として、わしの目の前に大男が現れた。


 だが──なぜ、今、私はこのように地べたに正座し、震え、泣いているのだろうか。


 


 「……さぁ、説明しろ。丁寧になァ。言葉ひとつ間違えたら──その輪っかごとぶっ壊す」


 


 眼前の“人間”──いや、“悪魔”にも劣るこの男のせいだ。


 召喚したのはこちらだ。願いを叶える力もある。転生先の世界も、スキルも、すべて用意していた。


 なのに──ヤツは、最初の一言で私の名前を遮り、次の瞬間には、平手で私の顔を殴っていた。


 


 “神ごときが喋るな”と。


 


 ……神ごとき? 我は万象を司り、世界の理を──


 


  「お前、まず“存在を許されたこと”に感謝して黙って頭下げとけや。……できねぇなら、“ありがたみ”ってやつを叩き込んでやるよ」



 一瞬、意味がわからなかった。

いや、理解したくなかった。

自分は“神”である。崇められる存在。人々に祈られ、信仰を集めてきた。それが、目の前の男からはまるで“ゴミに与えられた慈悲”のように扱われている。


屈辱。

困惑。

恐怖。

それでも最も強く心を支配したのは──


「畏怖」だった。

私はこの男を恐れ、敬ってしまったのだ。


ツラを張るどころではない。

さっきの平手の重みは“神”の名を持つ自分にとって耐え難いものだった。

威厳も、尊厳も、その手のひら一枚で粉々にされた。

 


 今も、また一発。右から左へ、頬を貫くような平手打ち。


 私は言葉を失い、咽び泣きながら、もはや天界でも見たことのない“新種の悪夢”に命乞いしていた。


 


 「……《万象喰らい》……すべてを喰らい、変質し……自在に操る……」


 


 震える手で、唯一の希望である(チートスキル)を差し出す。


 私は祈った──願わくば、これで満足して去ってくれと──


 

 「……よくできましたァ」そう言って、笑ってみせた。

 その言葉を聞いて私は安堵した…やっと解放されるのかと…。


 「ところで“神様”──さっき俺に向かって口ごたえしたよな?」

 

 

 そんな祈りは、当然のように打ち砕かれた。

 業火のような視線。燃える煙草の火を、私の額に──


 

 「ぎゃああああっっっ!!!」


 私は絶叫を上げる。この音が、声が、世界のどこかに届くなら──


 いいや、届いても意味はない。奴のような“災厄”が現れた時、神すら無力なのだから。


 

 「てめぇにはもう飽きた」


 

 そう言われた瞬間が、一番怖かった。私の存在が、退屈という理由で“処分”されるのだと感じたからだ。


 

 私が異世界への穴を指差したときの奴──虚偽なら容赦なく叩き潰そうとする眼

 私は必死に否定した、断じて騙そうなんて意図はなかった。

 奴は一切の容赦のかけらもなかった。


「だったらてめぇが最初に行くのが筋だろうがァ!」



 腹に蹴りを喰らい、私は裂けた地面へと落ちた。


 涙も、誇りも、神性すらも──すべて、あの一撃で剥ぎ取られて。


 


 “どうか、あの異世界が、彼を受け入れないように”


 


 そう願った私は、もう神ではなかったのかもしれない。

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