クソ野郎、異世界へ。
書き始めたばかりでしたが、クソ野郎度が足りてなかったので改めて仕切り直します。
「……さてと。異世界転生か。で? あんたが神様?」
俺の目の前に白いローブを着た白髪のジジィがいた。
「う、うむ。我は貴様を導く神、名を“リュミエ──”」
「──誰がテメェなんかの名前を聞きたがったんだよ」
いきなり飛んだ右の平手打ち。
「な、なにを──っ!?」
神様のツラが歪み、頭の上に浮いてるらしい光の輪っかがグラリと傾いた。
「喋るなっつってんだよ、神ごときがよォ!」
男はスッと手を振り払って──
今度は左の平手打ちが、反対側の頬を鋭く打ち据える!
「お前、まず“存在を許されたこと”に感謝して黙って頭下げとけや。……できねぇなら、“ありがたみ”ってやつを叩き込んでやるよ」
目の前でぐらつく神の身体を見下ろし、俺は冷たい笑いを浮かべた。
「……神が頭下げて土下座すんの、なかなか見れるもんじゃねぇよな?」
俺は片足でそいつの後頭部を踏みつけてやった。ぐりぐりと、容赦なく。
「……く、くるって──っ!」
は? 今なんつった、コイツ。
「“狂ってる”ってのはな……」
俺は神の胸ぐらをひっつかんで、ズルッと持ち上げる。
「言葉じゃなくて、“行動”で証明すんだよ。──ほらよ」
拳が一発。肉を叩く音が、天界とかいうクソ空間に鈍く響いた。
「ぐぼぉっ……!?」
唾と一緒に、金色の光が神の口からぶちまけられた。
「……おいおい、神様。吐くモン間違ってんじゃねぇか? 神なら“祝福”でも垂れ流しとけよ」
俺はポケットからタバコを取り出して火を点けた。
「……で、俺様に何をくれるって?」
神はヨロヨロしながら、光る何かを差し出してきやがった。震えながら、必死こいて。
「……《万象喰らい》……すべてを喰らい、変質し……自在に操る……究極の能力──」
「──へぇ。いいじゃねぇか」
俺はそれを、まるで“渡されるべくして渡されたモン”みたいに受け取ってやった。別に欲しかったわけじゃねぇ。ただ、渡させることに意味がある。
「……よくできましたァ」
そう言って、笑ってみせた。やさしく、な。
バカな神はこれで終わると思って汚ねぇツラでにやけてやがる。
再び火を点けて、もう一本、タバコをくわえる。こいつは神へのサービスだ。
「ところで“神様”──さっき俺に向かって口ごたえしたよな?」
固まったにやけツラの額に、火をジリジリと押しつけてやった。
「ぎゃああああっっっ!!!」
「“痛み”ってのは、命よりわかりやすいからな。頭が悪い奴には、こうして教えるしかねぇんだよ」
とどめの一蹴りで、神ごと吹き飛ばして天界の柱をへし折ってやった。
「ちょっとはわかってきたか? ここじゃ“てめぇの世界”は終わりなんだよ」
煙を吐き出しながら、俺は手の中のスキル結晶を空に放った。
「さて──この力で、何を喰ってやろうかねぇ?」
フッと笑いながら、片手でポンと掴む。
「そういやよ。異世界のこと、何にも聞いてねぇなァ?」
俺はちらりと視線を向けた。──あの神ならまだ生きているだろ。
「……聞いてねぇんだよ、てめぇの口から。来いよ。説明しろ。“俺様に”な」
沈黙。……クソが。
「──5秒やる。今すぐここに来い」
淡々と数を数える俺様の意識が、四を数え終える寸前、滑り込むように神の声に遮られた。
「ま、待て! 説明する! 今すぐに──!」
「──ごッ」
「がぼぇッ!!」
再生途中だった神の身体に、俺の膝が思いっきりめり込んだ。
「……言ったろ? “5秒”ってのは俺が決めんだよ。あんたが喋る時間じゃねぇんだ」
ズルズルと引きずって、神を正座させる。
「さぁ、説明しろ。丁寧になァ。言葉ひとつ間違えたら──その輪っかごとぶっ壊す」
「……りょ、りょうひゃいしましたぁ……」
崩れかけの天界。そのど真ん中で、神が正座してやがった。滑稽なくらいに小さくなってよ。
「さぁ、丁寧に説明しな。聞いてやるよ、異世界の“おはなし”ってやつをよォ」
俺がそう言うと、神──リュミエルとかいう雑魚は、ビクビクしながら口を開いた。
「は、はい……異世界は……その……魔王が……支配しており……」
声ちっせぇし、目ぇ泳ぎすぎだろコイツ。ま、内容も案の定って感じだ。
「魔王はとても……強大で……」
「うるせぇ!!」
ついでに一発、バシンと頭を叩いてやる。いい音が鳴った。お、輪っかも傾いたな。
「てめぇの“強大な魔王”とか、クソほどどうでもいいんだよ。もっと面白ぇ奴いねぇのか?」
神は口パクパクさせながら、なんとか次を出そうと必死みてぇだ。
「そ、その……異世界の人々は……絶望の淵に立たされており……」
「絶望? おう、聞き飽きたわ。テンプレ臭ぇ話すんなや」
ダラダラとクソつまらんナレーションしてんじゃねぇっての。
俺はそいつの顎をガシッと掴んで、無理やり顔を上げさせる。
「おい、もっと楽しく説明しろよ。俺様はなぁ、“娯楽”を求めてんだよ」
すると神は目を泳がせながら、絞り出すように口を開いた。
「えっ、ええっと……魔王は……実は……ちょっと…メンタル弱くて……」
「は? 何それ? ふざけてんのか?」
「ち、違います! 本当です! でも……彼は……ビビりで……攻撃してくる敵にもすぐビクビクして……」
ぷっ。……ダメだ、耐えらんねぇ。
俺は思わず、顔を手で覆って笑っちまった。
「おいおい、それ魔王じゃねぇよ。ただのヘタレ野郎だろーがよ」
神はまだ何か言おうとしてたが、もう飽きた。
「……もういい、クソが」
ガッと神の頭を掴んで、右、左、右──平手打ちのラッシュをぶちかます。この音だけはホンモノだな。
「次はもっと面白ぇ話持って来いよな、なぁ? “神様”?」
神は膝をついたまま、ガタガタ震えてた。もう喋る気もねぇらしい。
「てめぇにはもう飽きた。さっさとその異世界にどうやったら行けるか教えろ」
俺の言葉に、リュミエルは顔面蒼白で地面を指差した。
「こ、この穴にはいれば……異世界へ繋がっており……」
俺はジロリとそいつを睨む。
「……罠じゃねぇだろうな?」
「ち!違います! 断じて違います!」
ふぅん。じゃあ──
「だったらてめぇが最初に行くのが筋だろうがァ!!」
そう叫びながら、腹に思いっきり蹴り入れてやった。
「うおっ!」
声にならねぇ悲鳴をあげながら、カスは穴の中に落ちてった。
──チンケなカスの断末魔。たまんねぇな、これ。
「はぁ……あー、面白れぇモン見れたわ」
煙草に再び火を着け紫煙を吐き出す。
俺はニヤリと笑って、その穴の縁に立つ。ためらい? そんなもん一切ねぇ。
「よし、次は俺様の番だ。覚悟しとけよ、異世界──」
裂けた地面を滑り落ちるように、俺の身体も一気に奈落へ。
光と影の向こう。新しい“世界”が、口を開けてやがる。
書きたいモン書けると気持ちいいんだわ