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あぶらやのらぶ(前編)

冬が来ると無くてはならないのが灯油です 

先月は247ℓ燃やしました

CО₂出しまくってゴメンナサイですが 

これナシでは生きていけぬ、なのです

などと、実感しているいまのうちに

灯油にまつわる話を書いておこうと思いました


ヘイトフルの三本目を目指しています

登場人物にモデルはいません すべて作者の想像の産物です


 あれから半年経った。わたしのまわりの色々なことが、様々に変わった。なによりまず、わたしはずいぶん大きくなった。C組34番でチビッ子のナオミはもういない。A組やB組やC組はとっくにないけれど、もしあったら余裕でA組の十番以内に入ると思う。


 わたしの年が十三歳より十四歳の方に近くなったから。お腹が空けばいつでも佳乃子さんの唐揚げ弁当を食べられるから。等々、わたしがいきなり急発進で成長した理由は、いくつか思いつく。だけどやっぱり一番はあれ、SKGことスペシャルカッツゲンを飲まなくなったことだ。


 SKGはもうどこにも存在しない。|佳乃子さんのキッチンに備え付けの大きな冷蔵庫には一本も入っていない。たとえ発注しても配達されない。とっくの昔に絶品、生産終了、レシピも処方箋も残っていないのだ。かつてスペシャルカッツゲンという、特別な子どものための健康促進飲料が存在したことは、わたしの記憶の中にだけ残っている。


 およそ半年後の、木枯らしが吹き始めた朝のことだった。

 遠くから、だれか泣いているような声がして目が醒めた。谷を越えて吹き寄せる風の音のようにかすかな声。でもここは寂沢村じゃない、サッポロシティのわりと中心部、だけど奇跡的に爆撃を免れた区域に残った、テンテンハイツの二階だったと思い出す。


 その声を、人のむせび泣く声と思って耳を澄ませた。もしかして、この街中のどこかで貴大くんがわたしを呼んでいるかも、などとあり得ない想像をめぐらせたりして。

 繰り返される嘆きの声は次第に、人以外の生きものが発したのかもしれないと思えてきた。


 やかましいというほどじゃないのだ。ワォーンと細く長く尾を引いてふるえる声音はなんとも悲しげで、不穏な胸騒ぎをかきたてた。まだ起きられないとぐずる眠気は、胸騒ぎの不穏さに払い除けられた。


 枕元の時計を見ると、薄闇の中で燦然と輝くデジタル表示は午前五時五十五分。アラームは六時ジャストに鳴るはずだ。ほんの少し早いけど、わたしがいつも起きる六時、そう言っていい時間だった。

 起き出してふと気づいたら、すでに鳴き声は止んでいた。その日はそれきり、朝の六時前に聴いた鳴き声のことを忘れていた。


 次の朝はアラームで目醒めた。せわしく鳴るピコピコ音を止めた途端に、遠い鳴き声のことを思い出して耳を澄ませた。一分ほど経ったころ、それが聴こえた。ワォーン。昨日の朝より声色は、いくぶんか力強く弾んでいる。まるで、アラームの鳴ったことを喜んでいるみたいに。そのときになって昨日の朝は、六時五分前に止めてしまったから、アラームは鳴らず仕舞いだったと気づいた。


 三日目と四日目の朝は、だいたい同じことが繰り返された。六時ジャストにアラームのピコピコ音が鳴る。三回鳴らしてから止める。耳を澄ませて待つ、そこまでは同じだ。

 三日目の朝はアラームからまもなくワォーンと、いくぶん弱々しいけれど細く長く尾を引いた声が三回、たしかに聴こえた。

 それが四日目の今朝は、アラームが鳴った後しばらく待った。待ちくたびれて寝落ちしそうになったとき、か弱いワォーンが辛うじて耳に届いた。どことなく半信半疑、一体全体なんなんだと問い返すような響きのこもったその声は、より長く尾を引いてたった一回、それきり聴こえなくなった。


「あのね、朝の六時ころに遠くでなんか鳴いてるような声がしたの、聴こえた?四日くらい前から毎朝」

 ふと思いつき、勇気を出して佳乃子さんに訊いてみた。

「あー、あの声ね。うん、聴こえた。わりと近所のイヌだと思うよ」

「どんなイヌ?どこにいるの?」

「あら。イヌ好きなの?ナオミちゃんは」

「ええと、どうかな。本物に触ったことないから、わからない」

「じゃあ、咬まれたことも吠えられたこともないんだ」

「咬むの?」

「咬むよ。慣れるまでは一回や二回で済まないくらい、咬むのがふつうのイヌだよ」


 佳乃子さんは素早く器用な手さばきで、お金を数えている。ニヤリと笑いかけたので、半分くらいわたしをからかっているのだとわかった。それでも手は休めず、唐揚げ弁当の代金としてお客から受け取ったお金を数え続ける。


 主に硬貨がどっさり、ときどきお札がひらひら。トレーの中でごちゃ混ぜだったお札と硬貨がみるみる分別され、きれいに仕分けられてゆく。テキパキとして無駄のない手さばきに、わたしはすっかり見とれている。なんて美しい所作、そしてその手でさばかれるお札と硬貨の美しさにも驚嘆する。


 佳乃子さんのキッチンへ来てから、わたしは初めてお金というものを見て、その価値を知った。漠然とした知識はあったけど、寂沢村でお金が必要になることはなく、当然使ったこともなかったのだ。ほかの子たちがどうだったかは知らない。もしかしたら貴大くんはいくらかお金を持っていて、チロルチョコやスリーウエイペンを買ったのかもしれない。本の部屋でわたしにくれたチロルチョコとスリーウエイペン。それらを買ったお金を、貴大くんはどうやって手に入れたのだろう。そのことに気づいて考え始めたら、ドキドキして胸が苦しくなった。


 佳乃子さんのキッチンでは、電子マネー決済は一切ナシ、現金のみが通用した。なぜなのか、理由はきっとあるのだろうけど、わたしにはわからない。お客たちもわからないみたいだ。でも、不平を言う人はいない。お客同士で電子マネーを硬貨に替えたりして、融通し合っている。七百五十円。佳乃子さんの唐揚げ弁当はとても安い、そして美味いと皆が口を揃えて言うのだ。


 佳乃子さんの唐揚げ弁当はとても美味しい。わたしもそう思う。でも、七百五十円という値段がどれほど安いのか、初めはよくわからなかった。でも、いまではよくわかる。毎日次々と買いにくる大勢のお客を見、山と積まれた唐揚げが一個も残らず売り切れるのを見れば、よくわかった。


 佳乃子さんは数え終わったお金を、ふたつのビニールバッグに分けて収めた。大きく膨らんで重たいバッグのお金は、鶏肉や調味料やおコメなど、一週間分の食材の代金として配送業者に支払うためのものだ。それよりだいぶ小さいふたつ目のバッグの中身が、佳乃子さんとわたしがここで暮らしてゆくために使えるお金だった。


 佳乃子さんは小さいビニールバッグから五百円硬貨を五個取り出し、わたしの掌にのせた。今日のおカネレッスンの始まりだ。佳乃子さんがわたしに問いかける。


「いくらある?」

「二千五百円」

「そうね。買いたいものの値段が二千八百円だったら、どうする?」

「百円硬貨をあと三つ、出すの」

佳乃子さんの指先がなめらかに動き、三枚の百円硬貨を取り出してわたしに握らせ、また引っ込めた。

「じゃあ、もし買いたいものが二千百五十円だったら?」

「ええと。三百五十円、おつりをもらうの」

「くれなかったら、どうする?」

「ええと。二千五百円あげました、三百五十円おつりをください、って言う」

「それでも、くれなかったら?」

「シティポリスのダイブツ刑事に来てもらいます、って言うのよね?」

佳乃子さんはにっこりして肯いた。よくできました、のスタンプに代わるにっこりだった。


 ダイブツ刑事はときどきやってくる。わたしの顔を見て元気かと尋ね、佳乃子さんから唐揚げ弁当を定価で買い、風のように去ってゆく。職務の合間に立ち寄ってみた、という感じで。ダイブツ刑事はわたしを、佳乃子さんのキッチンに隠してくれた。なぜなのか、どうしてここなのか、説明はひと言もない。わたしも訊かない。知るのがこわいのかもしれない。わたしにはこわいものがたくさんある。数えきれないくらいに。でも、佳乃子さんをこわいとは思わない。そのことは大きな救いだった。


 次の朝はとても静かに始まった。十五分待ったのに、細く長く尾を引いた鳴き声は聴こえてこなかった。その代わりのように、なにやら不穏な気配が漂ってくる。もちろん、わたしの気のせいなのだろう。きっとそうだと思いつつ、そわそわと落ち着かない気持ちで身支度をして、キッチンへ下りた。


 キッチンはまだ暖まっていなかった。ベンチコートを羽織った佳乃子さんは、片手を腰に当てた姿勢で裏口の前にすっくと立ち、なにやら考え込んでいる。内なる何者かと闘っているようでもあった。


 振り向いてわたしを手招きし、窓の外を見るよう促した。そうするまでもなく、佳乃子さんを見れば雪が積もったのだとわかった。ブーツが雪まみれだし、ベンチコートの裾にも白い縁取りが出来ている。十センチ以上は積もったのだろうと見当がついた。


「雪かき、もう終わったの?わたしもやるのに」

「ああ。後で続きをやってもらうかもね…」

佳乃子さんは浮かない顔つきで、つくづくとわたしを眺めた。そして今更のように、「大きくなったんだね」と、つぶやいた。


 わたしが着ているパーカーとジーンズは、佳乃子さんから貰ったお古だ。貰ったときはゆるゆるだったけど、いまはもうぴちぴちで窮屈そうだと初めて気づき、佳乃子さんは驚いている。お古のパーカーとジーンズがぴちぴちだったこと、いまこの時まで気づかなかったこと、その両方に。

 

「そういえば。聴こえなかったね、イヌの声」

 佳乃子さんがそう言ったので、やっぱり聴こえなかったんだ、つまりイヌは鳴かなかったんだとわたしは思い、なんだか残念な気持ちになった。すると佳乃子さんは、思いがけないことを言い出した。


「けど、雪のせいで聴こえなかったのかもしれないね。雪は音を吸い込んで消しちゃうから。おかげでこっちは、大事な灯油を盗られたのに、ちっとも気づかなかったんだわ」


 それは佳乃子さんのキッチンと、わたしたちふたりの暮らしを揺るがす一大事だった。裏口脇の物置内に設置されてある490ℓ入りの屋外タンクから、灯油が抜き盗られてしまったのだ。月に一度、一世帯90ℓに限って有料配給される貴重な灯油のストックが、全部無くなった。隠してあったはずの送油ホースがあえなく切断され、大き過ぎる490ℓタンクは見事にカラッポだ。こうなると屋外タンクはもはや無用の長物、図体がデカいだけの役立たずでしかない。

 等々、佳乃子さんは口惜しさのあまり屋外タンクに八つ当たりして、口を極めて罵った。怒りにふるえて語るほどに熱くなった佳乃子さんの手袋から、プンと鼻を刺す灯油のにおいが立ち昇った。


 比べてわたしは寒さのあまり、縮こまっていた。灯油が途絶えて久しいストーブにさわったら、あんまり冷たいのでギョッとした。ストーブというのはいつだって、さわれないほど熱いものでなくちゃいけない。明るい炎と熱を失ったら、そこにあるべき存在理由も失ってしまう。なんだか申し訳なさそうにひっそりと佇んでいるストーブは、無力でみすぼらしく見えた。


 そうして忙しい佳乃子さんの代わりに、わたしがおつかいに行くことになった。次の灯油配給日はちょうど一週間先だった。これから七日間もの日々を、灯油ナシで暮らすなんて無理無体だ。そんなのわたしにだってわかる。なにもできやしない。唐揚げ弁当の販売だってきっとできない。わたしたちもお客たちも、大いに困るのだ。


 屋外タンクはもはや安全でないことが、明らかになった。郵便配達は二度ベルを鳴らすものだから。佳乃子さんのつぶやきは意味不明だったが、なんとなくニュアンスは感じ取れた。よくない知らせは一度じゃ済まない、きっとまたやってくるのだ。


 佳乃子さんは屋外タンクを諦め、仕舞い込んであった90ℓ入りの室内タンクを引っ張り出した。灯油を持ち運ぶのに必要な18ℓ入りポリタンクも見つけた。よくよく検分して、どちらも充分に使える状態だと判断した。よしっと。まるで自分に気合を入れるようにつぶやき、だれかに電話を架け始めた。


 だれかって、相手は「あぶらや燃料店」の人だ。真剣勝負のやりとりが延々と続いた。今シーズン灯油の配給単価は百四十円なのに、百五十円なんて高すぎる。佳乃子さんは思いのほか粘った。単価百五十円の灯油を18ℓ、買うためのお金がないわけじゃない。ちゃんとある。それでも佳乃子さんは一歩も引かない。ここで引いたら足元を見られる。甘い顔は見せない。どちらもわたしには難解な比喩だ。でも、女ひとりが被占領下の街で生き抜くためには不可欠であるらしい。


 ひとしきり交渉を重ねた結果、「あぶらや燃料店」から買う灯油の単価は、百四十五円と決まった。18ℓで二千六百十円。唐揚げ弁当ひとつ分の代金を六百十円におまけして差し引き、二千円を支払うことで、佳乃子さんと「あぶらや燃料店」のだれかとの間に、ようやく合意が成立した。


 大きな声では言えない裏事情がいろいろとあってね。言いつつ佳乃子さんはそのほとんど全部を割愛して、ごくシンプルに告げた。「要するにあそこは、配給の90ℓ以外にもこっそり売ってくれるのよ。ちょっと高いのがムカつくけど、この際背に腹は代えられないからね」


 これから為すべき役割の分担は自ずと決まった。佳乃子さんは室内タンクとストーブを送油ホースでつなぐという、肝心要な作業をする。わたしは二千円をポケットに忍ばせ、18ℓ入りポリタンクと作りおきの唐揚げ弁当をひとつ持って、貴重な灯油をとりあえず18ℓ、買いに行く。売ってもらいに行く、という気がしないでもなかった。


 佳乃子さんが書いたメモをもう一度見て、ざっくりと説明してくれた言葉を思い返した。テンテンハイツからまっすぐ北へ向かって歩く。そんなに遠くないからわりとすぐ、二車線道路に突き当たるはず。そこを渡って右の路地に入ればまもなく、「あぶらや燃料店」が見えるはず。短くて簡単な道のりだから初めてでも間違いっこないわと、佳乃子さんはわたしを励まし請け合った。その軽い口調にちょっとだけ、恨めしいような気分になった。


 二車線道路を渡ってすぐ、右の路地に入った。でもその先は袋小路だ。アスファルトの地面とコンクリートの長い塀は傷んでデコボコだが、通り抜けられるほどの隙間はなくて行き止まりだ。なんとなく、人の手によって塞がれたように見えた。通り抜け禁止。表示はなくてもそんな意思を感じた。佳乃子さんから聞いた話とは、ずいぶん違う様相だった。


 うっすらと雪をかぶって薄化粧したいまは、殺伐感が和らいでいた。でも、行き止まりだから通行する者はいない。「あぶらや燃料店」の看板も見当たらない。その代わりのように袋小路の突き当り、ど真ん中になにやら黒いかたまりがあった。


 遠目にその突き当りは、不燃ごみの集積所になっているかと思われた。ひしゃげた事務用デスクと小型家電がいくつか、そしてぼそぼそ毛羽立った黒いカーペットが折りたたまれ、隙間に押し込まれてあるように見えたのだ。

 でも、違った。それは動いた。黒いカーペットの先端がむくりと頭をもたげ、こちらを顧みた。赤茶色の目がふたつ、わたしをひたと見据えた。黒いかたまりは、威嚇の唸り声をあげるラブラドールレトリーバーの顔になった。


 らぶちゃんと呼んであげて。佳乃子さんは言ったのだ。いかつい顔してるけどあの子、ちゃんづけで名前を呼ばれるのが好きなのよ。おしゃべりも好きだから怖がらずにたくさん話しかけて。私のベンチコートのにおいを嗅がせて。そうしたらきっと、すぐ仲よくなれるわ。


 教わった通りに呼んでみた。らぶちゃん。ねえ、らぶちゃんでしょ?そっと近づきながら繰り返した。

「らぶちゃん、こんにちは。佳乃子さんでなくてゴメンね。わたしはナオミっていうの、佳乃子さんのともだちみたいなもの。よろしくね」


 ギリギリ腕が届く距離をとって、恐る恐る手の甲のにおいを嗅がせた。あぶらやのらぶは困ったように片方の眉を(それらしき部位を)、大きく吊り上げた。唸るのをやめてわたしの手の甲と顔と、佳乃子さんのベンチコートを見比べ、悩まし気にクンクンと鼻を鳴らした。ひとしきり情報分析を試みたものの、処理しきれなかったナゾの部分について、問いかけるようにアォンと高く尻上がりに鳴いた。


 佳乃子さんからおみやげがあったのを思い出した。下味をつけずにボイルした鶏むね肉一枚分のコマ切れを取り出すと、あぶらやのらぶはガバッと跳ね起きて突進してきた。太く長く頑丈そうなチェーンがぴんと張った。 

 らぶの鼻先が届かないあと一歩分を、わたしのほうから歩み寄った。ボイルチキンを差し出す手の主であるわたしを、らぶは自分のテリトリーに受け入れた。よし、の合図をかけた途端、ボイルチキンは食べつくされた。


 もっとくれろとせがむように、わたしを見上げる黒ラブの赤茶色の目を見つめ、語りかけた。朝の六時に鳴いた子はらぶちゃんでしょ?だれかを待ってたの?佳乃子さんを呼んだの?いつもと違うことがなんかあった?それともただ、お腹が空いたから?


 らぶが座り直したとき、あばら骨が浮き出て見えた。だからと言って、らぶが痩せっぽちなのかこれくらいでふつうなのか、わたしにはわからない。被占領下の市街地でつながれている大型犬にとっては、欠食・空腹状態が日常で、ふつうなのかもしれない。

 それにしても。すがりつくようならぶのまなざしに見つめられると、このまま連れて帰りたい気持ちが芽生えて疼いた。けれども、なにはともあれ、まずは灯油だ。灯油を手に入れずして、帰るわけにいかないのだ。


 ふと、視線を感じて目を上げた。路地の突き当りに沿って左側に、レンガの倉庫があった。その戸口に人がいて、らぶとわたしをじっと見ていた。レンガ倉庫の扉に、かすれて消えかけたのか擦って消そうとしたのか、判然としない文字があった。三歩近づくと、それは辛うじて「あぶらや燃料店」と読めた。





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