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63.不穏な噂

◎◎ミライ◎◎



ある日、砂漠の大陸南部で変異モンスターが出るという(うわさ)と、動く死体を見たという噂が入ってきた。


シュニー家の宿を利用した冒険者が食堂で話していたのをマリーナが聞いた。その冒険者は雪の大陸の港で、砂漠の大陸からやってきたという商人に話を聞いたらしい。


「それって、まさか······」


マリーナが伝えてくれた話は、どちらも思い当たる(ふし)がある。


仲間のみんなに声をかけ、急遽(きゅうきょ)集まって話し合うことになった。


さすがに何度も食堂を会議室代わりに使わせてもらうわけにもいかないので、少々人口密度は高いが、男性陣が借りている部屋を話し合いの場として使用することにした。


暗黒大陸で遭遇(そうぐう)した、瘴気(しょうき)の影響で変異したモンスターを思い出す。異形(いぎょう)と化したモンスターは通常より凶暴化していて強い。

これと似た、通常とは形態(けいたい)の違うモンスターが砂漠の大陸南部で目撃されたという。


「瘴気の影響以外でもモンスターが変異することってあるのか?」


俺は暗黒大陸出身のアイオスに尋ねた。まだ瘴気によって変異したモンスターだと決まったわけではない。


「瘴気以外で後天的(こうてんてき)にモンスターが変異するなど、聞いたことがない。だが、(まれ)に特異な形態で生まれる個体がいるという話は聞いたことがある」


「ですが、それらの目撃情報は本当に稀です。今回は砂漠の大陸で複数の目撃情報が出ているのですから、特異(とくい)個体の可能性は低いかと」


セレネさんは特異個体の可能性を否定する。ならやはり、瘴気の影響で変異したモンスターだろうか。

続けて、フェンが自身の考えを口にした。


「あまり考えたくない可能性だが······暗黒大陸の瘴気が他の大陸に流れているのでは?」


あり得ないことでは無いと思う。大陸同士は離れているとはいえ、風に乗って流れていく可能性もあるのではないだろうか。

しかし、こんなことは今まで無かったのだろう。俺とカザマ以外は難しい顔で考え込んでいる。


「もし暗黒大陸の瘴気が他の大陸まで流れているとして······だとしても、モンスターが変異するほどの量だろうか。暴露(ばくろ)されている期間も短いはずだ」


アイオスの話では、モンスターが変異するには大量の瘴気を長期間に渡って取り込み続ける必要があるらしい。


「瘴気の観測情報は無かったわね。でも、普通は瘴気なんて見たことないひとがほとんどだから、もし黒い(きり)のようなものを見かけてもそれが瘴気だとは思わないかもしれないわ」


食堂で冒険者に話を聞いたマリーナが話す。

基本的に、暗黒大陸へ魔族以外の種族が足を()み入れることは滅多(めった)にないため、そもそも瘴気の存在自体、知らない者の方が多いらしい。


「瘴気ではなく、変異モンスター自体が暗黒大陸から渡ってきたという可能性はないでしょうか」


言っていて、自分でも無理があると思っているのだろう。モニカが自信なさげに言う。


「そうねぇ······モンスターが独力(どくりょく)で大陸を()えたという話は聞いたことないわね。ドラゴン以外は、の話だけど。

例えば、翼が異常発達した個体とかだったら、もしかしたら海を越えられるかも?」


カーネリアも推測(すいそく)を口にするが、今ここで色々話しても(らち)が明かない。推測ばかりでは話が進まないので、実際に行って見てみるのか一番だろう。


話題を変異モンスターから動く死体の情報に切り替える。


「······動く死体、っていうのは?」


カザマが(おび)えた目で問う。兄はホラー系が大の苦手だ。


死霊術師(ネクロマンサー)が操るゾンビのことだと思う」


兄の問いに答えながら、砂漠の大陸にある(さび)れた遺跡で戦った死霊術師(ネクロマンサー)の女を思い出す。確か後で聞いた話では、名はラヴェンナといったか。


過去へ戻ったことにより、この女の死も無かったことになっている。魔王やガルグのほうが印象が強かったので、噂を耳にするまで彼女も生きているという事実を忘れていた。


「ご存知なのですか?」


セレネさんの言葉に(うなず)く。俺達は以前戦った死霊術師(ネクロマンサー)のことをカザマ達に話した。


アイオスにとってはあまり思い出したくない出来事だろう。表情を(くも)らせて下を向いている。


聞くだけでも胸の悪くなる話だ。セレネさんもカーネリアも忌避感(きひかん)(あらわ)にする。


死霊魔術(ネクロマンシー)なんて、禁術です。なんてことを······」


「仲間も敵も関係なくゾンビとして使役するなんて。どんな神経してるのかしら」


カザマは顔を青ざめさせていた。この先、ゾンビと戦わなくてはならない可能性は高いが、大丈夫だろうか。


「ゾ、ゾンビに()聖水(せいすい)とかないの?あっ、アンデッド系って回復魔法が弱点だったりしない?」


期待を込めてセレネさんを見るカザマ。完全にゲームの知識であるが、それに(すが)りたくなるくらい怖いのだろう。


「いえ、聖水で死霊魔術(ネクロマンシー)を解除できるとは聞いたことがありませんね。回復魔法は何の効果もないと思いますが」


さすがにこの世界では通用しないようだ。カザマは肩を落とす。ゾンビ戦ではカザマを戦力としてあてにしない方がいいかもしれない。


「変異モンスターの件も死霊術師(ネクロマンサー)の件も、放ってはおけない。行動を起こすべきだ」


アイオスの声には若干(じゃっかん)(あせ)りが見られる。どちらも暗黒大陸と魔族が関わっている案件だ。気になるのは当然だろう。


「そうですね。早急に砂漠の大陸へ向かいましょう」


決戦に向けての準備は粗方(あらかた)済んでいる。セレネさんの言葉に反対する者はいなかったため、明日出発することが決まった。


死霊術師(ネクロマンサー)が動き出すのが早い。それに、変異モンスターが暗黒大陸以外で目撃されるなんて、未来では無かった出来事だ。


カザマ達の命を救ったことが、今回の状況の変化と関係あるのか?

小さな変化が(のち)に大きな変化に繋がることもある。これは、その前触(まえぶ)れなのだろうか。


変異モンスターによる被害はどれくらい出ている?死霊術師(ネクロマンサー)が動き出したということは、操る遺体の数がそれなりにあるということだろうか。


ここまで順調に事が運んでいたため、この知らせは俺の胸中に言いしれない不安をもたらした。


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