チョコレート仮面とブルマ
その男は、すっぽんぽんで私の目の前に現れた。
「お嬢さん、着るものを何か持っていないかい?」
男は言った。
男はオペラ座の怪人のような”仮面”をつけた、茶色い肌をしたムキムキマッチョな男であった。
「持ってません。」
私はきっぱり答えた。
「しかし、何か着なければ私はこの仮面で大事なところを隠さねばならなくなるではないか。」
男は照れくさそうにいった。
「それで隠せばいいのでは?」
私は聞いた。
「いやいや、いけないのだ。たとえリングの上でパンツをはがされようとも仮面だけは外せない。」
そういって、男は私をじっと見た。
そして突然、男は目を大きくして、私を指差した。
「そのランドセルの中に入っているモノは!ランドセルを!ランドセルを開けてくれ!」
男は急かすように言った。
私はランドセルを開けた。
ランドセルの中に入っていたのは、今日学校の体育で穿いていた”ブルマ”であった。
「間違いない!それは伝説のレスリングパンツだ!それを私にいただけないだろうか!」
男は私に迫った。
私は小さくうなづいて
「交番に立ち寄ってくだされば差し上げます。」
と言葉を返した。
男はうれしそうにうなづいて、私からブルマを受け取ると、その場で穿いてしまった。
「このご恩は一生忘れない!
私の名はチョコレート仮面!プロレスラーだ!今夜、是非私の活躍を是非見ていただきたい!
では、さらばっ!」
男はそういい残し、立ち去っていった。
その夜、プロレス番組を見てみたのだが、やはりチョコレート仮面の姿を見ることはできなかった。