男とロケット花火
この日、一人の男性が私の家を訪ねてきた。
「すいません、ロケットをください。」
男は私にこう言った。
「ロケットなんてありません。」
私は答えた。
「そんな!どこの家庭にもあると聞いてきたんですよ?」
男は必死な顔で言った。
「あるわけないでしょ。」
私は鬱陶しそうに答えた。
「うう、私の宇宙計画がこんなところで・・・。」
そう言うと、男は地面にへたれこんだ。
ふと、玄関の靴棚の上においてあった袋が落ちた。
袋は男の目の前に落ちると、男は目の色を変えてそれを拾い上げた。
「こ・・・これだ!私の探していたものは!」
そう言うと、それを拾い上げ、私に見せた。
それは、ただのロケット花火だった。
「それで飛ぶ気ですか?」
私は聞いた。
「はい!コレを探していました!」
男はうれしそうに答えた。
「わかりました。それはあげます。」
私がそう言うと、
「ありがとうございます!これで宇宙に行って参ります!」
と、最高の笑顔で答えた。
私も、
「がんばってそれでハジけてきてください。」
と、できる限りの最高の笑顔で男を見送ってあげた。
ヒュルルルルルーーー パアン!
夜、庭からロケット花火が大空に飛び、そして弾ける音が聞こえた。