腕泥棒
「すいません・・・。腕をなくしたんですが、お嬢さん、、知りませんか?」
片腕のない小柄な男が尋ねてきた。
「腕なんて簡単になくすものなんですか?」
私は聞いた。
「ええ、見ててください。」
男はそう言うと、私の腕を掴んだ。
そして、少し捻るように力を入れると、私の腕はぽろりと取れてしまった。
「ぁ、簡単ですね。」
私は言った。
「そうなんですよ。僕が歩いていたらいつの間にか取れてしまって・・・。」
男はそう言いながら私の腕を物色し始めた。
この腕、ちょうどいい大きさ、これならなんとかなるでしょう。この腕、もらっていいですか?」
男は言った。
男は私の腕を愛でるように抱かかえた。
「でもそれ、私の腕ですよ?」
私は言った。
「大丈夫ですよ。」
男は嬉しそうに言った。
男は、私の手をなくしたほうの肩にカチャリとはめこんだ。
「ほらサイズもぴったり。」
男はそう言うと、少しずつ後退し始めた。
そして突然、大急ぎで逃げてしまった。
「ちょっと!私の腕!!」
私はすぐに男を追いかけた。
しかし、子供の私の足ではすぐに突き放され見失ってしまった。
「くそ。今度あったときはあいつの首をもいでやる!」
私は大声で叫んだ。
そういえば、なぜあんなに簡単に腕が取れたのだろう。
私は、自分の体を見てみた。
なぜか、自分の体はマネキンのように見えてきた。