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強そうな猫

 昼下がりの裏路地を、強そうな猫がのすのすと歩いていた。


「わぁ、強そうな猫。」


私は声に出す。


すると強そうな猫は、ごにゃぁ…っとため息をついて、軽く座るとコチラをチラリと見て言った。


「我輩は強い猫である。断じて強そうな猫ではない。」


強そうな猫はそう言って首を振るので、私は猫ににじり寄って、とりあえずもふろうとした。


すると強そうな猫は私の手を叩き落として、ふんっとソッポを向いてしまう。


「我輩は人間と馴れ合うつもりは無い!そう簡単に我輩をもふれるとは思うな!」


強そうな猫はこのように言うので、私は都合よく持っていた猫ちゃんジャーキーを取り出して、強そうな猫に与えてみた。


強そうな猫はジャーキーをバシッと奪い取って、はぐりと食べた。


まぐまぐと食べる強そうな猫を見ながら私が微笑んでいたら、猫はふんっと鼻息荒くして言った。


「少女よ、我輩に何を期待する?」


猫は言う。


「仲良くなりたいよ?もふりたい。そして、もふりたい。もふっていい?」


私は聞いてみた。


「駄目だ。我輩は人に何も求めない。故に我輩は人へ何も返さないのだ。」


私は猫に、さらに聞いてみる。


「どうして?」


猫は少し黙り、前足を地面に突っ伏してから語り始めた。


「あれは、我輩が生まれてすぐの事だった。我輩は5人兄弟だった。兄弟は皆みーみー泣いておったが、我輩は生まれた当時から強そうだった。我輩兄弟は、生まれてすぐに、ダンボールに詰められて、薄暗い裏路地に捨てられた。小雨の降る寒い中、みーみーと泣く兄弟達を支える為、我輩は気丈に振舞ったのだ。そのときだ。


まぁ、可哀想な捨て猫。 そう言って、優しそうな人間が我が兄弟達に手を差し伸べたのだ。


兄弟は一匹、また一匹と優しく拾い上げられ、優しく抱えられていった。そして最後が残った。


その時、人間はこう言ったのだ。


まぁ!なんて強そうな猫!私もうこれ以上猫を抱えて歩けないわ。でも大丈夫ね。あなた、強そうだもの。


そう言って優しそうな人間は去っていった。そして私は一匹取り残された。


我輩は人間に何かを期待していた自分を恥じた。


そして、強く生きよう、強そうな猫ではなく、強い猫になろうと決めたのだよ。」


そう語る猫を、私はうんうんと頷きながら、もふっていた。


「・・・、お主、何故もふっている?」


猫は聞く。


「ふふ、ふほふはふふ、もぐもぐもぐ。」


私は答える。


「お主、何を食べている?」


猫は聞く。


「もぐもぐもぐぅー(猫ちゃんジャーキー)。」


私は答える。


猫は、そんな私の口元をジッと見つめると、悲しそうとも嬉しそうとも言えないお顔でコチラをジッと見つめている。


「もぐもぐごくん。ふう~。 ・・・あ、ごめん。 今ので全部食べちゃった。」


私はがそう答えると、猫はいつもの 強そうな顔 に戻っていた。

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