金槌
夏の暑い昼下がり、川辺で私は水浴びをしていた。
ごちり
足元に、何か石とも言えない何か堅いモノを踏んでしまう。
足元を見ると、金槌が沈んでいる。
私は金槌を拾い上げてみた。
「ぶはぁ!助かったぜお嬢ちゃん。」
私は金槌から感謝の言葉を貰う。
私は金槌に聞いた。
「どうして沈んでいたんですか?」
私の問いに、金槌は嬉しそうに答える。
「それがよー、突然に暑苦しいわ!!って言って大工が俺を川に投げ込みやがったのよ。俺もよう、泳いで上ろうとしたんだぜ!でもよう俺、か・な・づ・ち・だからなぁ!がははは!!」
金槌は嬉しそうに続ける。
「そういえばよー、俺の友達のバールがよぉ、二股してやがってよ。さすが先端が二手に分かれてるだけあるぜ。ちゃかしてやったらよー、バールようなモノで殴りかかってきてよー。まぁ、本人 バールなんだけどなー?がははは!!」
金槌は嬉しそうに続ける。
「そういやよー、俺が喋ると皆黙っちまうのよ!皆俺の言葉を聞き入っちゃって!俺ってなんていうか、もう常時浮上中って感じ?まぁさっきまで沈んでたんだけどなぁ!がは…」
「暑苦しいわ!!!」
私は金槌に割り込むように大声を出して、ガッと掴むとそのまま川へ投げ込んだ。
「うわぁ!何をする!あ、沈むぶくぶくぶくぶぶぶぶ・・・・」
金槌は、そのまま川底へ真っ逆さまに落ちていく。
私はひとつ、ふうとため息を吐く。
あたりから騒々しさが無くなって、穏やかな川辺の香りが戻ってきたのを感じた。
私は、二度と浮上してこない事を祈って、涼しい真夏の水浴びを楽しんだ。