柔道着さんとまわしちゃん
夏の夏の蒸し暑い日、私が校庭を歩いていると、前方から柔道着が這いよってきた。
「たた・・・・たすけてくれ・・・!臭い!!すっぱい匂いが充満してるんだ!」
柔道着はそう言うと、あたり一帯にすっぱい匂いを撒き散らした。
「あいつ、酷いんだ。こんなに蒸し暑いのに、全然洗ってくれないんだ!」
柔道着はそう言うと、少しずつ這いより、にじり寄ってくる。
「うっ・・・!そ、そうですか・・・、それは大変ですね・・・」
私は我慢出来ずに後ずさる。
「洗ってくれよ・・・、洗ってくれよ・・・」
柔道着はにじりよる。 私は後ずさる。
良心の呵責は私にもある。洗ってあげたい。でも駄目。だって私、あなたを触りたくないもの。
そう思って私が逃げ出そうとしたとき、後方からさらに強烈な匂いを感じて私は体を硬直させる。
振り向くと、後ろから相撲で使う廻しが、なんとも言えない強烈な匂いを発しながら、にじりよってきた。
「洗ってくれ・・・・、洗ってくれよう・・・」
廻しはそう言いながら話ににじり寄ってくる。
前門の狼、後門の虎、も、もう私万事休す・・・! そう思ったとき、一人の大男が現れた。
「もぉーーー、まわしちゃーん、相撲の部活はじまっちゃうのに何処行くノぉー。」
その大男は、まわしをひょいっと拾いあげる。
「だすげてくれーーー!くさいーー!」
まわしの悲鳴が響き渡る。大男は、そんな事はお構いなしに、どすどすと去っていった。
私と柔道着は、その光景をただ沈黙して見つめていたが、
ふっと柔道着が口を開くと、
「あれに比べれば・・・、俺は恵まれているのかもしれない・・・」
そう言葉をポツリと残して、柔道着は這いずり戻っていった。