草のお墓
この日、私とママはお庭に生えた雑草を退治していた。
私は、庭の真ん中に生えた大きな雑草に手をかけた。
そしてそのまま思いきり草をひっぱる。
「えい!」
ぶちっ 「痛い!」
草は地から抜けず、葉がちぎれた。そして、同時に声も聞こえた。
ふりむくと、一人の少年が私の後ろでへたりこんでいた。
「な、なに?」
私は、おどろいた。
少年はよく見ると、片腕がなかった。
少年は言った。
「その草、抜くのをやめてくれないか?」
私は首を横にふった。
「こんな大きな草を庭に残したままにしちゃったら、ママに怒られちゃうよ。」
しかし、少年は泣きつくように言った。
「お願い!考え直して!
ほら、この草をよく見てよ。
この瑞々しい葉っぱ、丈夫な茎、深く張った根っこ、すばらしいと思わない?」
私はそれを聞いて、少し考え直した。
「そう言われてみればすごい草なのかも。」
私はじっくりと草をみた。
しかし、それはどこからどう見ても、ただの雑草である。
「・・・。」
「・・・。」
2人は沈黙して見つめ合った。
「コロちゃん サボっちゃ駄目よ。」
いつのまにか、ママが私の前でたっていた。
そして、ママは草を見下ろし、言った。
「まぁ、こんな大きな草を放置しないでよね。」
ママは草をつかみ、おもいきり力をいれた。
「あ、ママ!ちょっと抜くのはまって・・・。」
私は静止しようとした。
だけど、もう遅かった。
ズボズボー
「ぎゃーーーー!」
少年の声が庭中に響いた。
草は引っこ抜けた。
振り返ったそこに、少年はもういなかった。
私は、その草を拾い上げると庭裏の森のそばに埋めてあげた。