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からっぽけっと
”ぽけっと”の中はからっぽだった。
それでも、私は”ぽけっと”の中で何かを握っていた。
秋の空は青くて高くて、風は北風。木枯らし3度目。明日は雪でもふるだろう。分厚いコートも網のように風を逃がし、私の体を震わせた。
私は”ぽけっと”に手を突っ込んで、そして握りこぶしをしていた。
寒くて寒くて私は体を震わせていた。
けれども私は暖かくって、そして幸せだった。
私は、高い空を見上げつつ、ずんずんと歩いていた。そんな時だった。
わぁっ
私は声を荒げた。突然、子狐が飛び掛ってきたのだ。
私はバランスを崩した。そして”ぽけっと”から手をだして、受身をとった。
その瞬間、思った。
あ、盗まれた って。
子狐はそのまま立ち止まらず、振り返らず、山に消えていった。
私は、立ち上がり”ぽけっと”に手を突っ込んだ。
さきほどまで暖かかったはずなのに。それなのに。
ぽけっとは冷え切っていた。