聖女の鎮魂歌
満月の光を浴びて輝く銀聖樹
その根元に腰掛ける清楚な聖衣のエルフ美女
取り囲む大小様々な魔物たち
明滅しながら宙を舞う霊体魚の群れ
樹幹から四方を見張る警報蝉
鋭い嘴の氷嵐鷲は梢に羽を休める
額に魔眼持つ縦眼羊は下草の中に佇む
角の先端に人面を生やした巨大イモムシが根元に横たわる
それらを優しい眼差しで見回して
エルフ美女は竪琴を奏で歌い出す
魔物たちはうっとりと聴き惚れる
土に返れ
大地に還れ
慈愛深き女神の御許に帰れ
大地に命受けし者よ
大地に育まれし者よ
定めの命終えし者よ
大地に還りて眠れ
母なる大地に抱かれて眠れ
慈愛深き女神の御許に眠れ
それは世界の調和を守るための戦いに殉じた者たちへの鎮魂歌
そして世界の調和を乱したとされ討伐された者たちへの鎮魂歌
歌い終えた彼女は銀聖樹を見上げて祈る
守護獣たちが敵と戦う必要が無くなりますように
主が願う平和な世界が早く実現しますように