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わかめ男の最初の襲撃は無残なる敗走に終わった

しかしながら凡そわかめ男の境涯に”反省”の二字はない

反省とは他人がする事であって

わかめ男がすることではないのである


再びの襲撃は正にその失敗の当日であった

既に日も上がり陽光燦燦たる中をわかめ男が行く


しかし、如何に存在感が薄いとはいえ

街中を走る屍というのは目立ちすぎるのではないか?

心配無用である、なぜなら過疎化の著しい

この田根盛町たねもりちょうには人がいないのである

何一つとして魅力がないこの町にはもはや

死にかけの老人と腐りかけの引きこもりと

夜行性のパリピしかいないのである


とてとて歩き回りながら獲物を探していた

わかめ男は一つの豪壮な邸宅の

ガレージのその中に、鮮やかな赤色の

見事なまでのスポーツカーが座しているのに目を留めた

車の知識のまるでないわかめ男にもそれが

大層高級な品であることは容易く察せられた


何かのテレビコマーシャルの刷り込みであろうか

わかめ男の脳中には、そのスポーツカーの操縦席にて

肩をそびやかす眉目秀麗なる青年実業家の姿が映し出された


なるほどこれ程の大邸宅を所有するのは大金持ちに相違ない

ならば隣席には大層な美姫を侍らせているに相違ない

わざわざ田根盛町こんなところに住まうのは人目を避けるため

つまり相当な大立者に相違ない

よぼよぼの老人がこんな車に乗っていたら物笑いの種となる

つまり所有者は青年から壮年であるに相違ない

なんならきっと超イケメンであるに相違ない


そう思うとわかめ男は腹の底より満々たる怒りが湧きあがってくるのを感じた

わかめ男は土左衛門である、ぼろぼろに腐った汚い屍である

そしてそうなる前ですら、ハゲのアホ面の中卒であったのだ

再生数二けたに満たぬ場末のyoutuberであったのだ

それに比してこいつは金があって女があって

無限の未来があるのだ


「いいさ、いいさ、テメエは金があるんだろう

 そのご大層なスポーツカーを乗り回して

 馬鹿な世間様の注目を集めるがいいさ

 金にしか興味のない女どもを引っ張り回して

 遊び回ればいいさ」


そう絞り出すと

わかめ男はどこからかするするとわかめを取り出した


「テメェの愛車をナァ、磯の香で満たしてやるぅっ!!!」


そう叫びファサアと広大なわかめをシーツの如く

そのスポーツカーに覆いかぶせると

わかめ男は泣きじゃくりながら

遁走したのであった。

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