4-2.決戦 リッド vs ザロード
自身が持つ剣の切先を突き出してザロードが叫ぶ。
武道場に上がるどよめき。
オレの代わりに声を発したのはピスコだ。
「ダ、ダメよ! リッドにはアイラ様をお世話する仕事が......」
「怖いのか? 女の影に隠れてみっともない。おいみんな見ろ! これが気高きアイラ様の従者だぞ!」
「何事だ?」
クラスメイトのざわめきを止めたのはアイラだ。
アイラはザロードとオレを一瞥し、ふむと一言唸った。
「リッド、戦え」
有無を言わさぬ鋭い視線。
しかしその視線を向けた相手はオレではない。ザロードだ。
「お前はあたしの下僕。下僕をバカにすることは主人を蔑むのと同意。それだけじゃない、そのふんぞり返った無礼な態度には虫酸が走る! 誇り高きヴァンパイアの面汚しめ!」
怒っている。あのアイラが。混血のザロードに向かって。
ピスコの隣に立ち、彼女の頭に手を置いている様子から、恐らくザロードが不純物と口走った事にも怒ってるようだ。
「アイラ様! 私は決してその様なつもりは......」
狼狽えるザロード。
おいアイラ、怒ってるんならお前がこいつを裁いてくれ。そっちの方が色々丸く収まるんだが。
「だがこれはお前が売られたケンカだ。あたしが出張るのは筋違い。そうだろ?」
まるでオレの心を読んだような的確なお言葉。お見事です。
「面白い余興じゃない! 混血対眷属! どっちが勝つか見物ですわ!」
シャルロットの嬉々とした声にアイラ達の戦い以上に武道場が沸き上がる。
これはもう、引き下がれそうにない。
「審判はあたしがやってやる」
そしてアイラが直々に審判か。
まずい展開になった。
負ければアイラのメンツに泥を塗り、従者はクビ。
それは避けたい。そうなればついでにオレの学園生活も終わりを告げるだろう。
普通に戦っていいなら、ザロードを瞬殺する自信はある。
だがそれは出来ない。眷属が混血を倒すなんて異常事態だ。
最悪、オレがヴァンパイアハンターだとバレる可能性がある。
考えがまとまらないまま、武道場の中央で剣を構える。
「クソ......貴様のせいでアイラ様に不信感を持たれてしまった。貴様だけは絶対に許さん! 楽に負けられると思うなよ!」
「不信感持たれたのは自分のせいだろ」
いかん、イラッとしててつい本音が口から。
「うるさい! 死ねぇえええっ!」
ザロードの剣が脇を通過する。
フェイントからの突き。追撃の横薙ぎをステップで躱す。
えー。弱っ。
弱過ぎる。なにこいつ、素人? 動作に無駄が多過ぎる。
特にちょこちょこ入れてくるフェイントは隙だらけ。
まるで「殺して下さい」とでも言ってるようだ。
「どうしたどうした! 防戦一方じゃないか! 変幻自在の私の絶技に手も足も出ないだろう!?」
いや、手も足も出せる。
逆に殺し方の選択肢が多過ぎてどうやって仕留めればいいか困ってる。
オレの脳内シミュレーション上でなら、もう十回は死んでるぞお前。
「流石ザロード様だ! 上級生含め学生混血でザロード様の右に出る者はいないっ!」
ええっ!? こんなやつが学生混血最強!?
嘘だろ。過去戦ったヴァンパイアでもっと強いやついたぞ。
ま、まあ、だがそれはいい情報だ。
学生混血最強らしいザロードさんに負けるなら、アイラも許してくれるんじゃないだろうか?
「ほらほらどうしたぁ!」
よし、作戦変更だ。適当にザロードの剣を喰らって負けよう。
ザロードの繰り出したへなちょこな突きを左肩で受ける。
「ぐっ......!?」
予想外の痛みに慌てて距離を取る。
刺された箇所の衣服に血が滲んでいる。
このアホ、真剣使ってやがる。
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