02-2. 今日からオレはアイラの奴隷!?
「次」
「次、ですわ」
異様な光景だ。
教室の中央にはおおよそ学舎には似つかない豪華な椅子が2つ。そして跪く人。
豪奢な椅子に偉そうに足を組んで座るのはアイラとシャルロット。
その表情は揃って不機嫌。誰がどう見てもそうわかる。
「もう充分! 私に従者は必要ございませんわっ!」
息を吸う事すら憚れる、異様な空気を吹き飛ばしたのはシャルロットだ。
手に持つ扇子を勢いよく閉じて教室から出て行った。
「はわわ......シャルロット様、相当怒ってました。こ、怖いですぅ......」
オレの制服の袖を握るピスコが震えている。まるで小動物だ。
「別にシャルロット様がいなくなっても問題ないだろ。オレ達の本命のアイラ様は残ってるんだし」
「リッドはこの状況でなんでそんな冷静でいられるのさ。みんな震えてるよ」
本当だ。混血も眷属もみんな俯いて震えてる。
慌ててオレもみんなに習って俯く。
「次......どうした? 誰も来ないのか?」
誰もアイラの前に出ようとしない。そりゃそうだろう。
とにかくプレッシャーが半端無い。
ヴァンパイアと何度も戦い、人並み以上に死線を潜り抜けたオレでも尻込むぐらいだ。
ここで出ればあまりにも目立つ。引き続き怯えたフリが得策だろう。
「ザロード・カルヴァドスです」
そんな空気を破ったのは一人の男。
「ほう」
礼から跪く一連の所作に淀みがない。
身なりから察するに、混血のヴァンパイアの中でも上位に位置する者だろう。
この空気に臆せず出られるのは中々の度胸ーーというより、それだけ家柄や交友関係といった太い後ろ盾があるんだろう。
アイラの従者はこいつで決まりだろう。
「ピスコ、行こう」
「えっ、えっ、まだ決まった訳じゃ」
周りの空気もさっきの鉛みたいな重たい空気と打って変わって、すっかり浮ついている。
結果は見るまでもないだろう。
「私はアイラ様を崇拝しております。あなたの期待に必ず答えてみせます。どうかお側にーー」
「次」
「え?」
なん、だと?
教室の戸に手を掛けて動きが止まる。
間の抜けたザロードの声。そして再び凍りつく教室。
刺す様な残酷なエメラルドの瞳が跪くザロードに突き刺さる。
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