02-1.今日からオレはアイラの奴隷!?
「と、言う事なんだよリッド」
「へー」
「ねぇ、ちゃんと聞いてる?」
プンプンという擬音がそっくりのままくっつきそうなピスコが声を荒げる。
思わずため息が出る。
ホールから教室に向かうまで同じ話の繰り返し。
ピスコは面倒見がいい。だけど正直、鬱陶しい。
「いい? 今年は異例中の異例なんだよ! 純血であるお2人がご入学されたので、特別なシステムが導入される」
「あー、うん」
また始まった。もう3回目だぞこの説明。
「混血、もしくはボクたち眷属の内1人が純血様の従者ーーつまりお世話係になれる。従者は常に純血様の側にいられる大変名誉な役職なんだ! それだけじゃない。従者は学園内の様々な特権を得られる」
学費無料、食費無料、施設使い放題、上流階級イベント参加権......
ペラペラつらつらと人差し指を立てたピスコが気持ちよさそうに語る。
「だけどなれたとしても、純血様の気分次第で即『クビ』もあり得るんだろ?」
「なんだ。ちゃんと聞いてるじゃん。そうだけど、純血様の従者になれたんなら、それだけで一生自慢できる! 目指さなきゃ損だよ! ほらシャキッとして! この後すぐに純血様と面会だよ!」
「へいへい」
「もーっ! そんな言葉遣いじゃ絶対従者になれないよ! ああ......もうすぐアイラ様とシャルロット様に会える。きゃーっ! 想像しただけで気絶しちゃいそう!」
興奮してるピスコには悪いが、従者なんぞやりたくない。
シャルロットの従者なら100歩......いや、万歩譲って飲み下せるが、アイラの従者? やつの身の回りの世話? そんなことするぐらいなら死んだ方がマシだ。
だがまあ、感情を捨てて考えれば、メリットがない訳でもないんだけどなぁ......
奴の懐に潜り込める。
謎に包まれた純血、『真紅』のアイラ・ハニーシュナップの懐に。
「なあ、ピスコは従者になるならアイラとシャルロットどっちがいいんだ?」
「しーっ! こらっ! 様つけてよ様を!」
「すまんすまん」
「むー。その反応、悪いと思ってないね。まあいいや。ちなみにボクは断然『真紅』のアイラ様! 『黄金』のシャルロット様は高貴過ぎてボクには釣り合わないと思うからさ。あはは......」
「奇遇だな」
虎穴に入らずんば虎子を得ず。毒を食らわば皿まで。
感情はこの際捨てろ。これをチャンスと捉えろ。
なれる機会があるなら狙ってやる。
『真紅』のアイラの懐を。
「オレもアイラ様、一択だよ」
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