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7-3.くたばれ、初恋




「よく来たね、リッド。主催として歓迎するよ」


 耳障りのいいオーケストラの演奏。

 それに合わせて不気味な仮面姿の複数の人が青の絨毯(じゅうたん)の上で優雅に踊っている。

 

 声の主、ホール内ステージに立つピスコを睨む。

 先の黒いローブ姿とは打って変わって、今は(あで)やかな紫のドレス姿だ。

 アイラとシャルロットはピスコの(そば)で手足を縛り上げられ(ひざまず)かされている。


「なんの真似だ?」


「だからパーティだよ。ここで踊る人は全員君に恨みを持つヴァンパイア。今日はその恨みが晴れる記念すべきパーティ」


 踊っていた1組のダンスペアが武器を手に襲いかかって来た。


「あははっ! この数のヴァンパイア、一人で(さは)けるかな?」


 全方位から仕掛けてくるヴァンパイア達の波状(はじょう)攻撃を剣でいなしつつ迎撃する。


「あははっ! すごいすごい! さすがリッド!」


 躱して斬る。

 これの繰り返し。


 舞う血飛沫。飛び交う断末魔。

 戦うごとに増していく血の匂い。


「優雅だね。まるで踊るよう。ああ......濃い血の匂い。ゾクゾクしちゃう」


 頬を蒸気させて自分自身を抱くような仕草で(もた)えるピスコ。

 ダンスホールに充満するこのむせ返る様な血の匂いは不快でしかないが、ピスコからしたら逆の様だ。


 ブラッド・ラバー。まさに血を愛する者。


「すごいね。そんな返り血浴びてるのに息一つ切れてない」


 ピスコの乾いた拍手が静まり返ったホールに虚しく響く。


「んー、やっぱこんな雑魚じゃ、束にしてもリッドを倒すのは無理かー。しょうがない」


 アイラを拘束していた手足の(かせ)を外した。


「次はボクの切り札で勝負だ。アイラちゃん、やれるよね?」


「断る」


 今にも喉元を噛み切りそうな獣の表情。

 そんな顔を向けられてもピスコは涼しげだ。


「えー。じゃあシャルロットちゃん殺そっかなー」


「この卑怯者が」


「卑怯かな? リッドは君を殺す気なんだよ? 拘束されたまま殺されるより、戦わせてあげるボクかなり優しいと思うんだけど。はい、これ」


 笑顔になったピスコが差し出したのは細剣だ。

 アイラは無言でそれ受け取って立ち上がり、オレにその切先を向けた。


「そうそう、それでいいんだよ。さあリッド。次の相手は宿敵、純血『真紅』のアイラだよ。勝てるかなー?」


 血糊(ちのり)がべっとりと付着したロングソードを構えてアイラと対峙する。


 瞬間、アイラが視界から消えた。


 疾風(はやて)の如く突撃してきたアイラの突きが頬を(かす)める。

 それだけでは終わらない。

 腰を沈めたアイラが間髪を入れず、まるで弾幕の様な突き見舞ってくる。


 強い。だが隙はある。


 弾幕の様な突きを()い潜って、横薙ぎで反撃に転ずる。


「ちぃっ!」


 大きく後方にバックステップしたアイラに躱わされ、空を切る。いい判断だ。


「避けなければその首、はねてやったのに」


「生意気な......そんな大振りな剣、当たらんぞ」


「どうかな?」


「なっ......」


 膝をついたアイラの頬から血が滴る。


「アイラの突きを掻い潜って反撃......しかも手傷を負わせるですって? 強い。あれがヴァンパイアハンター......」

 

「あははっ! 面白い! 面白いよ二人とも! こんな最高のショーが間近で見れるなんてボクら幸せ者だね! シャルロットちゃん!」


「どうした? もう来ないのか? ならこちらから行くぞ!」


「来いリッドッ!」


 剣と剣の応酬。

 己の直感で剣を捌き、時に躱す。


 まるで二人でワルツを踊っている様だ。

 時折、生き残っていたヴァンパイアがオレ達のダンスに乱入するが、すぐに血を撒き散らして離脱していく。


「同級生にも容赦なしか はっ! 最強と名高いヴァンパイアハンター様は冷徹でいらっしゃる」


「お褒め頂き光栄です、お嬢様」


「こんな時だけお嬢様呼ばわりか! くたばれリッド!」


 不思議な感覚だ。


 楽しい。

 

 お互いを(ののし)り、殺し合ってるはずなのに。

 対峙しているアイラの表情も明るく見える。


 もし、彼女がオレの仇じゃなかったら。


 よそう。

 そんな事考えるのは無意味だ。

 そして認めよう。

 オレはアイラに惚れている。

 

 この試合がもっともっと長く続いて欲しいと願ってしまう。

 だが不意にその幕は降りる。


「ーーしっ!」


「あうっ!?」


 オレの剣が届いた。

 真紅の絨毯に倒れ込んだアイラに詰め寄り、剣の切先を喉に突きつける。


「終わりだ、アイラ」


 真っ赤なドレスのスリッドから覗く、白く絹の様な足が赤く染まる。

 懐から銀製の拳銃を取り出す。


「シルバー・バレット......くそ、ヴァンパイアハンターめ」


「さよならだ。アイラ」


 トリガーにかけた指を引く。

 雷鳴の様な鈍く低い発砲音がダンスホールを飲み込む。


 硝煙(しょうえん)の匂い。倒れるアイラ。

 全てがスローモーションに見える。


「くたばれ、初恋」


 さよなら。世界で一番憎んだ人。

 さよなら。世界で初めて好きになった人。








お付き合い頂きありがとうございます!


現在、鋭意作品執筆中です。


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