7-1.くたばれ、初恋
『厄介なことになったわね』
耳につけた無線からニナの声がする。
寮の自室に隠していたヴァンパイアハンターの装備を身につけ、ジェルで髪を固める。
「だがやることは明確だ」
久しぶりにロングソードを腰に帯刀したが、やはり無いよりあった方がしっくりくる。
『そういえば本部から任務の通達が来てるわ。読み上げるわよ』
「頼む」
やつらがいるのはアルカーノ学園、迎賓館。
ダンスホールで待つと去り際、丁寧に告げられた。
窓から飛び降りて周囲を見渡し、駆け出す。
やけに静かだ。
『ブラッド・ラバーの殲滅。および、アイラ・ハニーシュナップの抹殺』
「了解」
『気をつけて。今回の騒ぎに便乗して、一部生徒が暴徒化してる』
「抵抗するやつは殺すまでだ、問題ない。それよりニナ、そろそろ交信を終わるぞ。お前は姿をくらませ」
『言われなくてもそのつもり。私、非戦闘員だし。そっちこそこの無線器、ちゃんと隠滅してよ?』
「わかってる」
『最後にお節介。リッド、わかってると思うけど、ピスコ・マールも純血と見た方がいい。シルバー・バレットの弾数は?』
「一発だ」
懐にしまった拳銃を触りながら答える。
シルバー・バレット。純銀製の拳銃だ。
純血でも一撃で殺せるヴァンパイアハンターの切り札。
だがその分、弾薬生成が難しく、弾は一発しか渡されていない。
『シルバー・バレットはピスコかアイラのどちらかにしか使えない。外すなんて、もってのほかよ。使う局面はくれぐれも気をつけて』
「わかってる。切るぞ」
無線を外して握り込んで粉々にする。
ここから迎賓館は目と鼻の先。
見えてきた迎賓館の玄関口に当たる広場がなにやら騒がしい。
どうやら複数人で乱闘しているようだ。
どちらもアルカーノ学園の制服。そこにさっきの黒いローブが五人混じっている。
「力ある長い物に巻かれるとは、ヴァンパイアの面汚し共めっ!」
「ザロード?」
集団の先頭でレイピアを振り回しながらザロードが叫ぶ。
しかし、数で劣るザロード側は明らかに劣勢。
ジリジリと包囲されている。
「囲まれた......ザロード様っ! 敵の数が多過ぎます! このままではーーぎゃあっ!?」
「くっ......私は最後まで諦めんぞ! アイラ様とシャルロット様は私が助ける!」
「なにやってんだお前?」
「下僕!? お前こそこんな所でなにをしている!? その格好、アイラ様達を助けにきたのか!?」
断じて違う。
ピスコを倒しにここに来たんだ。
「眷属ながら見上げた根性だ。よかろう! ならば私と共に戦え!」
「は?」
冗談だろ。
お前と共闘なんて、むしろ足を引っ張られそうな気がする。
「おっと」
話の途中で襲ってきた男の攻撃を躱す。
それを皮切りに、ヴァンパイア共がオレに次々攻撃を仕掛けてくる。
ザロードと話すオレをどうやら敵認定したようだ。
ロングソードを抜剣し、襲いかかってくるヴァンパイア達を迎撃。命を刈り取る。
優位な状況で突然仲間を斬殺されて萎縮したのか、動きの鈍ったザロードを包囲する連中を二、三人屠ったその隙間からザロードに合流する。
「け、眷属のくせに、中々やるではないか」
「そりゃどうも」
「お前の腕を見込んで、学園混血最強であるこのザロード様の背を貸してやるっ!」
いや、いらん。
だがそんなオレの気持ちを知らないザロードは、自身の背中をオレに押し付けてくる。
「ちょっと待て。オレはあんたの腕を信用していないんだか」
しかし抗議する時間は貰えそうにない。
例の黒づくめのローブ姿のやつらが前に出てきた。
「ザロード、あの黒いやつはオレがやる」
ザロードが死ぬのは1ミリも問題はないが、ある程度雑魚を足止めできるなら共闘する価値は多少はある。
「ふん。手練か。いいだろう、お前にくれてやる」
「......どうも」
偉そうに。お前が戦ったら一秒も持たないだろうけどな。
「行くぞっ! 下僕っ!」
ザロードの掛け声と同時に一斉に襲いかかって来たヴァンパイア達をため息混じりに迎撃した。
お付き合い頂きありがとうございます!
現在、鋭意作品執筆中です。
皆様のコメント・評価はモチベーションです!
よろしければ、コメント・評価、ブックマークお願いいたします(土下座)




