5-4. 舞踏会
体調でも悪いんだろうか。
ワイングラスを持ちながら立ち上がったアイラは、跪くオレを見て固まっている。
それにさっきまで騒がしかったダンスホールが今は音一つない静寂に包まれている。
「くくっ......」
「えっ?」
「あーっはっはっは! そうかお前だったかリッド! 見違えたじゃないか。誰かわからなかったぞ」
バシバシ肩を叩くアイラが目尻に涙を滲ませて笑う。
「あ、あれがリッド!? 眷属!?」
「てっきり高貴な方だと......」
「でも、カッコいい......王子様みたい」
やっぱみんな、オレだってわかってなかったか。
普段の変装の効果はかなり高かったらしい。
専門外の変装で純血のアイラ含め、ヴァンパイアを出し抜けたとわかってちょっと嬉しい。
「みんな見る目がありませんわね。私は一目で誰かわかりましたわ」
確かにシャルロットは気づいている様だった。階段登る時も特に警戒してなかったし。
やはりシャルロットにはアイラと違う凄さがある。要警戒だ。
「リッド、ダンスは習得できたのか?」
「はい......とは言いにくいのですが、多少は」
「そうか」
白いロンググローブに包まれたアイラの手が目の前に差し出される。
「お、おい! アイラ様が踊られるぞ!」
「嘘だろ、今まで誰とも踊らなかったアイラ様が!?」
「しかも眷属と!?」
騒つくダンスホール。
その様子を見たシャルロットが派手な扇子を広げて口元を覆う。
「あなたがダンス? 珍しい。よっぽどその従者がお気に入りのようね」
「ち、違うっ! 練習させたんだ、それを無下にするのは主人としてなんというか......ああもうっ! とにかく踊るぞ!」
差し出された手が逆にオレの手を掴み、跪く身体を引き起こされた。
「一曲、付き合ってもらう」
そんな顔、見たくなかった。
冷酷で冷徹なヴァンパイア。世界にとって殺すべき絶対悪。
お前の事、そう思っていたいのに。
髪と同じ色に染まった恥ずかしそうなアイラの表情に胸がざわつく。
覚悟を鈍らせるな。心をぐらつかせるな。
こいつのオレの仇。殺すべき存在だ。
ダンスホールの中心で耳障りのいい音楽とアイラのステップに身を委ねる。
「ほう。上手いじゃないか」
「......どうも」
吐息を感じる至近距離でアイラが笑う。
純血。『真紅』アイラ・ハニーシュナップ。
そんな彼女の表情は、オレ達と同じ、年相応の少女が楽しむ笑顔でしかなかった。
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