5-1.舞踏会
「ワン、ツー、スリー......おわっ!?」
「ごめん」
「気にしない気にしない! いい感じだよリッド! かなり上手になってる! もう一回だよっ!」
「ああ」
とある空き教室。
今朝の武道場での一件の後、付きっきりでピスコにダンスを教わってるんだが......
「もう夕方かぁ......着替えの準備もあるし、次の練習でタイムリミットだね」
「ごめん、ずっと付き合わせちゃって」
「気にしないでっ! そ、そのっ、ボクもリッドの役に立てて嬉しいって言うか......」
「え?」
「な、なんでもないっ! さ、踊ろっ!」
なんかピスコの顔が赤い気がする。夕日のせいだろうか?
とにかく集中だ。これが最後の練習になりそうだ。
「いくよ? せーの」
ピスコの手を握って音楽に合わせてステップを踏む。
「ーーうん! 凄いよリッド! ほぼ1日でワルツができるようになった!」
満面の笑みでピスコが拍手してくれる。
「これで出来るって言っていいのかな?」
「大丈夫大丈夫! コンテストに出る訳じゃないんだから、楽しめればそれでいいんだよ。パーティなんだし、初心者って相手に伝えればリードしてくれると思う。てかもう時間ないよ! リッド着替え持って来てる?」
「一応、昼休みに寮に戻ってロッカーに入れといたけど」
というのは嘘で、持ってなかったからさっき休んだ時に保健室に行ってニナに調達するようお願いしておいた。
「急いで取りにいこっ! 着替えるの手伝うから!」
「え、そこまでしてくれなくても......」
「い、いいから早く!」
「あ、ああ」
ピスコのやつ、ヤケに押しが強いな。
だけど時間がないのも事実。申し訳ないけど手伝ってもらうか。
ロッカーに移動し、最低限の着替えを済ませてピスコと再度合流する。
「とりあえずその、ダサダサメガネは外してね?」
「ん、ああ」
「それとこれジェルね。オールバックでいいからその癖っ毛固めて。ボクはネクタイ結ぶから」
「ありがと」
テキパキしてるな。これなら余裕でダンスパーティに間に合いそうだ。
しかしオールバックなんて、ヴァンパイアハンターやってた時以来だ。自然と気合いが入る。
ひょっとしたらオレを知るヴァンパイアがいるかもしれない。
そんな風に思って入学時変装していたが、ニナ曰く、どうやらその心配ないようだ。
「ほあぁ......ねぇ、なんでリッドは普段身だしなみを整えないの?」
「単純にめんどうだから?」
「なんで疑問形!?」
「なんだっていいだろ。なんだよ急に」
鏡越しにピスコと目が合う。しかしすぐに目を逸らされてしまった。
「や、そのぅ......」
着こなしが変なんだろうか?
うーん、オレの見立てではちゃんとスーツも着こなせてるはずなんだが。
「この格好、やっぱ変か? はっきり言ってくれ」
振り返って壁に持たれるピスコの顔の横に手を置く。
すると顔をタコみたいに赤くしたピスコが肩をピクンと震わせた。
なんか詰め寄るみたいな格好だ。
「えっと、そのぅ............かっ、かっこいぃ............」
「え? なに?」
「なんでもない! リッドのバカぁ!」
ついに瞳まで潤ませたピスコが叫びながら詰め寄るオレを突き飛ばして教室を飛び出してしまった。
えー、なんだったの? 体調悪かったのかな。
風邪かなんかか? 顔赤かったし。大分外暗くなっちゃったけど、一人で帰らせて大丈夫だろうか。
「あ、お礼言ってない」
だが追うのもヤボだし、明日また言おう。
今はダンスを教えてくれたピスコのためにも舞踏会に集中せねば。
襟を正したオレは教室を後にした。
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