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強化日本異世界戦記  作者: 関東連邦
第4章 大戦の前触れ
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第63話 それの代償

すんごいお待たせしました・・・スミマセン。

第63話 それの代償


    バフマン王国 王都 ソウバリン



王都の民が暴徒化して、日本大使館が包囲されたが、これは日本以外の列強国大使館も同じ状況だった。


チェーニブル法国の大使館には、暴徒化した民衆と冒険者に補捕庁の役人に国軍までもが、参加して包囲をしていた。


そんな大使館にはリバイリナ大佐が自身の指揮下にある陸軍、1個大隊を指揮して敷地内への侵入を阻止していた。


「1個小隊は狙撃隊を援護しろ!郊外にいる戦車中隊が間もなく到着するから大通りで封鎖している部隊を戻らせろ!」


リバイリナ大佐は、前線である大使館の敷地とバフマン王国との境界線となる敷地の入口の門近くで兵士達を指揮していた。


「大佐っ!ここは彼等に任せて大佐は中に入って大使の護衛をお願いします!」


それをリバイリナ大佐の副官が止める。しかし大佐はそんな副官を蹴り飛ばす。


「馬鹿者っ!大使よりもこの場をどうにかするのが先決だろうが!」


リバイリナ大佐は壁をよじ登って敷地内に入ろうとした暴徒の1人を撃ち殺しながらそう言った。


「ドイットル大使が大佐をお呼びなんですよ!?速くお連れしないと私が責められます!」


副官は大佐を羽交い締めして大使の元まで連れていこうとする。


「知るかそんなもの!暴徒共の中には冒険者も居ると聞いたぞ!昼間の連中が居るのならば俺が出なくてはならんのだぁ!!」


そう言ってリバイリナ大佐は抵抗する。圧倒的な身体能力を持つ大佐に不利を感じた副官は、近くにいた部下を動員して連れて言った。





そんなリバイリナ大佐を呼び戻すよう命令を出した、チェーニブル法国の大使であるドイットルは自身の執務室の窓の景色を見ていた。


「全く・・・さっさと暴徒共を片付けないか!法国軍人がたかだか低文明国相手に何を手間取ってるのだ。情けない!」


「はっ!現在、近郊に駐屯していた部隊を再編成してここに向かわせております。」


大使館の警備隊長がドイットル大使にそう報告する。


「リバイリナ大佐は何処にいるんだ!?奴はなぜ私の近くにおらんのだ!」


ドイットル大使はそう隊長に問う。この国に駐屯させている中でも最大戦力を持つ彼が大使の護衛を務める筈が近くにいないことに怒りを表す。


問われた隊長は困惑したように報告する。


「た、大佐殿は、現場に出て兵達の指揮を取っておられます。副官殿が呼び戻してますので直にここへ・・・」


「来たぞ大使殿っ!用件はなにか!?」


隊長の言葉の途中でリバイリナ大佐がドアを蹴破るように開けた。その表情は非常に不機嫌だということが分かる。


「大佐!一体なにをやってるのだお前は!自分の職務を忘れたのか!?」


「なぁに?俺の仕事は目の前の敵を殺すのが仕事だ!護衛なぞ他の者にやらせろ!

第一、こんな安全なところで閉じ籠ってる癖になにを偉そうに!」


大使に対しても尊大な態度を使うリバイリナ大佐にドイットル大使は怒りで肩を震わせるが、それを見ても大佐は態度を変えることなく続ける。


「俺がこんな所にいる間に冒険者共が門を突破して来たらそれこそ一大事だぞ!」


「なにを大袈裟な。例え門を突破されともあの数の兵士を相手に何が出来る?

冒険者なんぞ部下に任せてお前は常に私の側にいろ。私のもしもの事があればすぐに更迭されるというのを忘れるな。」


ドイットル大使の言葉に大佐は眉を潜める。冒険者に対する評価が低いことに不満があるようだ。


「これだから文官は・・・そんなに自分の身が心配なら、もっと他に良い方法があっただろう。あんな強引にやるから現地人共が暴れるんだ。」


大佐は、バフマン王国に対する圧力のやり方に苦言を言う。


「外交に知恵のない素人は黙っとれ!まさか冒険者共があんなふざけた事を仕出かすなど、誰も予想しとらんかったのだ!まぁ、それも直ぐに終わろう。そうだな?」


「まぁな。郊外にいる戦車中隊と大通りにいる歩兵部隊を合流させて蹴散らす。それで暴徒共の大半は消えるだろうな。だが、冒険者は別だ。あれは油断ならんぞ。」


その大佐の言葉にドイットル大使は鼻で嗤う。


「ふんっ・・・冒険者ごときに何が出来る?剣を持った連中に銃で武装した兵士が負けるとでも?お前達はそんなに軟弱なのか?」


「いや、そんな事はないさ。其処らの冒険者は脅威ではない。問題はミスリル級以上の冒険者共だ。連中の実力は大使殿が思ってる以上に厄介なのだぞ。」


「それが何だ!ミスリルだろうが、銃弾に当たれば傷付くし死ぬ。それに何の問題があるというのだ!?」


「その銃弾を潜り抜け斬り殺す。それが出来るのが彼等だ。奴等と戦った俺がそれを保証する。」


「だから何だと言うんだ!?銃が駄目なら戦車の大砲で始末すればいい!!それでも駄目なら数百の兵を使って殺せばいいだろう!大佐の癖に随分と弱気じゃないか、噂とは宛にならんものだな!」


「すばしっこい冒険者相手に大砲で当てる?たったの数百で殺す、か・・・確かにそれならミスリル程度なら可能だろう。あと勘違いするな。俺ならミスリル程度、簡単に始末出来るさ。だがな・・・」


大佐はズイッと一歩歩きドイットル大使の顔を覗き込むようにして言った。


「オリハルコン級はそう上手く行かないぞ?彼等には数千の犠牲は覚悟せねばな。」


大佐の評価にドイットル大使は呆れたような表情をする。外交官の彼には、軍事的な知識や冒険者に関する知識を持たないので想像の出来ない話だ。


「何を馬鹿な事を・・・いい加減な事を言うな。」


「大使殿には分からんか?冒険者を下に見てるといつか痛い目を・・・むっ!」


「何の音だ!?」


そこへ外から轟音が響いた。その瞬間、大佐は飛ぶ勢いで窓の方へ向かい外の景色を確認した。


「な、何があったんだ!?さっきのは何の音だ!?」


後ろでドイットル大使が騒いでるがそれを無視して、大佐は外を見る。そこで異常に気付いた。


「黒煙・・・あれは爆発した煙だな。」


視線の先には、何かが爆発したような煙が見えた、その煙元は大使館を囲む壁のせいで見えないがさっきの轟音はあれが原因だろう。


『視覚強化』


より詳細を調べる為に自身に視力を上げる魔法を詠唱して更に情報を集める。そして大佐は何かを見つけて、口元が笑みで崩れた。


「な、何を笑ってる!?」


ドイットル大使がそんな大佐を見て気味悪そうに反応した。そして大佐は大使の方へ振り向き、嬉しそうにこう言った。


「大使殿、噂をすれば、だ。俺が相手をするからそこで見学しておけ。」


その言葉にドイットル大使は目を見開いて止める。


「お、お前は何を言ってる!?私を守らないか!あ、おいっ!何処へ行く!?戻れっ!戻らんか!?」


だが大佐はそれを無視して、執務室から出ていってしまう。ドイットル大使は完全に怒り心頭である。そのまま近くにいた隊長に指示を出す。


「あの野蛮人めぇ!!何をやっている!?ここの警備を増やせ!もうあの男は信用出来ん!」


「か、畏まりました!」


隊長は慌てて部屋を出て待機させていた兵士を集めに向かった。心の片隅で大佐への怒りの言葉を思い浮かべながら。





執務室から飛び出し、外へ出てその先の光景を目の辺りにした大佐は上機嫌な表情で歩き出す。


その視線の先には、大使館を囲んでいた壁の一部が崩壊していた。


その崩壊した壁の手前で大勢の部下達が集まって、その向こう側の相手に銃を向けていた。


そのうちの1人が大佐に気付いて、明らかに安堵した表情を向けた。


「た、大佐!?」


「おう。お前等は下がってろ。奴は俺の客だぜ。邪魔すんな。」


銃を構えている部下達を掻き分けて、最前列に出た大佐は、目の前の相手に視線を合わせる。


「久し振りだな?また会えて嬉しいぜ。」


そう相手に話し掛ける。話し掛けられた相手は、首を傾げてこう返した。


「昼間会ったばかりだろうが?」


「はっはっは!俺にとっては何ヵ月にも感じたよ。そっちから来てくれるとは嬉しいね。」


大佐が話している相手、それは昼間、戦ったあの時のミスリル級冒険者の剣士であった。その後ろには他の冒険者達がいた。


彼は大佐の言葉を失笑した。


「勘違いするな。ここに来たのはお前に会いたいからではない。お前の主人に用がある。」


その言葉に大佐は機嫌を害する様子はなく、寧ろ面白そうにニヤリと笑った。


「はっはっは!ならば、俺を殺さねばそれは叶わないぞ?」


両者は互いに構え、戦闘態勢に入る。周りが固唾を飲むなか、2人は視線をそらすことなく目を見続けた。


「・・・む?」


大佐が先に動こうとした時、それは防がれた。上空にある存在を見つけて。


思わず上空に視線を向ける。ミスリル級の剣士も同様に上空から感じる気配を察知してだ。そしてそれを見て彼等、バフマン王国側の人間は例外なく驚愕する。その理由は・・・


「ドラゴン?」


冒険者の中で誰かがそう呟いた。彼等が見ているのは、天空の支配者であり、この世界でも最強の種族の1つであるドラゴンであった。


「むぅ・・・ガーハンスが動いたか。」


大佐はそう小声で呟いた。だが小声でも目の前の剣士はそれを聞き逃さなかった。


「ガーハンス?まさかあの噂は本当なのか?

ドラゴンを従えているというのは・・・」


「そうだ。奴等め、これ見よがしに飛んでいるな。全く、目立ちたがり屋はこれだから嫌いだ。」


大佐は、ガーハンス鬼神国の空竜を見てそう不機嫌そうに話す。


あの空竜は時折、こちら側を威圧するかのように唸り声を響かせたり、低空飛行をしたりしていた。


暫くそれを続けていると、空竜は突如として軌道を変えて、ソウバリンから離れていった。それを大佐は訝しげに首を傾げる。


「ん?・・・なぜ離れる?ここの攻撃が目的じゃないのか?」


ドラゴンの攻撃手段は空での戦闘がメインだが、それでも地上に対する攻撃方法も持っている。


攻撃範囲の広いブレス攻撃や、急降下からの直接攻撃などが代表的だ。特に後者ならばガーハンス大使館を包囲している暴徒達に対して限定的な攻撃も可能だ。


なのに、大使館を守るのではなく、そのまま何処かへ飛んでいった空竜に大佐は違和感を覚える。


しかし彼は、その理由を考える暇は無くなる。何故ならば正面の敵がそれを許してくれ無かったからだ。ミスリル級剣士は、大佐の顔に向けて剣を振り下ろした。


「おっとっ!」


大佐は上半身を反らして、その攻撃を避ける。そして大佐は楽しそうに表情を歪んで答えた。


「そうだったな。考え事はいまするべき事ではないな。さぁ・・・殺ろうか!」


その瞬間、互いの剣と拳が交差した。チェーニブル法国の魔術将校とバフマン王国のミスリル級冒険者との決闘が始まる。







時を同じくして、バフマン王国の領空に入った海征団所属の航空隊ブラブォ隊は、編成を組んで飛行を続けていた。


『ブラブォ隊に告ぐ。いま先行していたアルファ隊が地上への援護を開始した。我々は作戦通り、ソウバリンの暴徒達の主力を妨害する。』


『ブラブォ02、了解。』

『ブラブォ03、了解。』

『ブラブォ04、了解。』

『ブラブォ05、了解。』

『ブラブォ06、了解。』


僚機全員からの返答を確認した隊長機は、満足したように頷く。その瞬間、レーダーに動きがあった。


『っ!ブラブォ隊、未確認機が此方に向けて進路を変えた。注意せよ!』


数十分前からレーダーで映っていた国籍不明の未確認機の進路が変わった事を部隊に知らせた。


『ブラブォ01、例のドラゴンか?まさかこっちに気付いたのか?驚いたな。』


『どうやってかは知らんが、恐らくそうだろう。距離は60、速度は430ノット、数分で目視圏内に入るぞ。』


その言葉に興奮したように反応する者が1人いた。この面子で1番のお調子者であるブラブォ02だ。


『ふぅ!念願のドラゴンを拝めるのか!こいつは皆に自慢できるぜ。』


『味方とは限らないんだ。集中しろ。』


『駄目だとは分かりきってるが、無線は駄目か?』


『さっき迄、ブラブォ05がやってるが応答は無しだ。』


『そうなのか?ブラブォ05』


『あぁ。何度やっても反応無しだ。ガーハンスは魔術文明国だとしても無線機くらいは配備していると思ったんだがな。無視してるのかどの周波数で試しても駄目だ。』


『どうするブラブォ01、格闘戦の訓練なんてこっちは受けてないぞ?』


『・・・04と05は後方に下がれ。02と03が接近して確認をとれ。俺は上がって動きをみる。』


その指示に各機は従う。2機は速度を下げ、別の2機は速度を上げ、隊長である01は高度を上昇して、直に見えるであろう未確認機を警戒する。


ほんの数分も飛行すればあっという間に件の未確認機の目視出来る距離に入る。


『ブラブォ隊、間もなく未確認機は目視圏内に入る。警戒を怠るな。』


各機にそう警告を発し、彼はもはや至近距離過ぎて意味を成さないレーダーから目を離して肉眼で周囲を見渡し、そして発見する。


彼の平均以上の視力で漸く発見した程に小さな物体が何かを羽ばたいているかのように飛行しているのが見えた。


『っ!こちらブラブォ01、未確認機を視認した。方位は0ー9ー0 真正面にいる。』


『ブラブォ01、こっちも確認した。これより接近してコンタクトを図る。』


『ブラブォ02、注意しろよ。相手はこの世界での空の支配者だ。』


『ブラブォ03、俺達だって地球では空を自由に飛ぶことの許された者だ。任せろ。』


そう聞き取った瞬間、下方にいた2機の戦闘機は速度を上げた。向かうべき場所は目の前を飛ぶ未確認機だ。







速度を上げて件の未確認機と距離を縮めた2機のブラブォ隊は、無線で情報を展開する。


『こちらブラブォ03、未確認機の腹に国旗を確認した。紫の交差したドラゴンに銀の剣の紋章、間違いなくガーハンス鬼神国だ。』


03は、ガーハンス鬼神国の国旗の特徴を口にして目の前の飛行物体を注視する。


その瞬間、交差するようにすれ違ったガーハンス鬼神国のドラゴンは羽ばたいていた翼を思いっきり広げて速度を落とし、うねるような動きで進路を間反対である03と02のブラブォ隊へと変えた。その背中に人を乗せた状態で。


『ブラブォ03、あれがドラゴンか!デカイぞっ!ワイバーンの数倍はある!オマケに機動力も高いぞ!?』


02は、先程の動きを見て、そう驚いたように声を荒げる。しかもあのドラゴンはかなりの大きさだ。体長にすれば数十メートル級、少なくとも中型のワイバーンの倍以上はあるだろう。


『こちらブラブォ01、此方からも見えている。あれは本当に生物か?』


『ブラブォ01、信じられない事に背中に人らしき物が乗ってるのも確認してる。恐らく操縦者だ。なぜ振り落とされないんだ?』


03は、すれ違った際に見えたドラゴンの巨大な背中に乗っていた人を思い返す。


(いや・・・あれは人間ではない?異種族か?初めて見たな。)


異種族を初めて見た彼はそう反応する。あの人物は魔法だが何かは分からないが、あの無茶苦茶な機動力を前にして振り落とされないようにドラゴンを操作しているのだ。


そう考えている内にドラゴンは、彼の真後ろにまでに近付いていた。機動力だけじゃなく、加速力も生物のそれを超越している。


(っ!マジか!なんて速さだ!)


これには彼の同僚も慌てた様子で無線越しで注意を促す。


『ブラブォ03っ!真後ろに着かれてるぞ!奴めっ!なんて加速力だ!』


『ブラブォ03っ!対象に攻撃の様子はあるか!?』


『こちらブラブォ03、今の所はそんな様子はない。向こうも此方を観察しているんだろう。』


ドラゴンは03の機体にビタリとくっついたまま、飛行しており、それ以外には何もしてこなかった。だが、その視線は彼の機体を見逃すまいと鋭い眼光で睨んでいた。


『こちら日本国航空隊、ガーハンス鬼神国機に告ぐ。貴機の行動は我が国への挑発行為に値する。直ちに離れよ。繰り返す、直ちに離れよ。』


01が無線でそう問い掛けるが、相手は聞こえてないのか、はたまたは応える気はないのかそれ以上の動きは無かった。


03のパイロットは、真後ろを映す小型のモニターから視線をずらすと、両手に握りしめていた操縦桿を強く握り、こう呟いた。


『上等だよ・・・俺に着いてこれるならしっかりと着いてこいよ。』


『ブラブォ03?何をするつもりだ?』


ドラゴンの斜め後方を飛行していた02が心配そうに聞いてきた。


『なぁに、ちょっとドラゴン様に地球での作法を教えてやるんだよ。』


そう言った瞬間、彼は操縦桿を操作して機体を急降下させる。それに後方のドラゴンも後を追うように翼を動かして急降下をする。


急降下により急加速状態の両者はあっという間に音速の壁を越え、衝撃波を生み出す。しかしドラゴンはそこから翼を畳み込み更に加速をし出す。


高度数千メートル上空にいた両者は下の海面へとグングン近付き、このまま海面に突っ込むかに思われたが、その前に先頭を飛行していた03は操縦桿を上に動かして降下をやめる。


『ぐぅっ!』


急激な機体の動きに、身体中にGが加わるが、訓練の賜物かそれに耐える。後方を映すモニターを見れば、やはりあのドラゴンはしっかりと着いてきていた。


『03っ!無茶するな!』


『01、スマン。それで、どう思う?』


そこへ隊長機から叱咤の声が掛かる。彼はそれを適当に返すと、観察をしてくれていた同僚に聞く。


『・・・機動力は明らかに奴の方が上だな。それに見たか?あの加速力。』


『見た。急降下とは言え、明らかに音速を超えていたぞ。生物で、しかもあの巨体であの速度をだせるもんなのか?』


『何よりもあの背中に乗ってる奴は何者だ?あの動きで振り落とされないなんて、どう考えても可笑しいだろ?魔法なのか?』


『こちら05、奴の研究は結構だが、俺達の任務を忘れるな。国籍が判明したなら、さっさとソレを引き剥がして仕事に戻るぞ。』


『こちら04、右に同じ。映像は撮れたんだ。これ以上は外交問題になるんじゃないか?知らんけど。』


『あぁそうかよ・・・なら、さっさと戻るか!』


03はまだ興奮の覚めない状態で、アフタバーナーの点火ボタンを押して速度を上げる。


『加速力は大したもんだが、此方にはこれがあるんだよ!』


彼はそう聞こえもしない相手に吐き捨てるように言い、後ろのドラゴンを引き剥がす。


突如として速度の上がった彼の機体を見て、後ろのドラゴンは慌てたように大きく翼を広げて羽ばたき始める。あんなに空気抵抗を受けながらどうやって速度を上げてるのか?


見る見る内に離れていく様子を見た02が嬉しそうに声をあげる。


『いいぞ03!奴は加速力はあるが、そこまで長くは維持出来ないようだ!この発見はデカイぞ!』


『よっしゃ!あばよっ!ドラゴン!あまり人間様を舐めるな!』


03は見えもしないドラゴンの操縦者に向けて中指を立てて編隊に戻った。







彼等の後方には、既に目視圏内から離れた彼等の方向を注視するガーハンス鬼神国の特権種族である鬼神族の男とそれを操るドラゴンがいた。


「あれが日本だと?・・・まさか連中にあれ程の航空機を保有していたとはな。」


そう呟く男、ガーハンス鬼神国内でも一握りの者しか成ることの出来ない戦竜騎士の1人であるガオバ・オットン・フィースドは先程の日本国旗を纏った航空機を思い出す。


都市上空を優々と飛行していた時に、ある方向に他とは隔絶した探知能力を持った戦竜が自分達とは違う何かを探知したと知らされた時、興味本意でその方向へ向かったのが幸いした。


噂の異世界から来たという謎多き国家日本。その航空機の性能を一端とは言えども知ることが出来たのだから。


(中々の性能だった・・・あれが我らとは異なる世界から来た国の航空機か。だが、あれはプロペラ機ではないのか?それに最後の加速力・・・機動力も航空機としては充分過ぎる物だったが、何よりもあの速度は明らかに異常だ・・・)


彼はおよそレシプロ機では出すことの出来ない機動力と加速力を見せつけた、あの日本の航空機の正体を探ろうと考える。


速度だけなら上位の戦竜に匹敵するであろう、あの航空機。それだけでも間違いなく強力な兵器だ。恐らく日本でもトップクラスの性能を持つ物に違いない。


暫く考えるが明確な答えが出ず、彼はそこで諦めると、こう戦竜の背中の上でこう呟く。


「ふっ・・・あれこれ考えても仕方あるまいな。そろそろ我も仕事に戻るとしよう。」


彼はそう呟くと戦竜に新たな指示を出して、速度を上げる。目指すはバフマン王国首都ソウバリン、そこの身の程知らずな現地人を恐怖のどん底に落とす為に彼は向かう。


 世界最強の種族がいま正に、暴れだそうとする。






場所は戻り王都ソウバリン、日本国大使館


バフマン王国の法の通らない日本国の領域であるこの大使館では現在、敷地内を大勢の暴徒達がひしめきあっていた。


敷地の正面入口の真正面に位置する大使館1棟は既に1階の一部を占領されており、これ以上の侵入を食い止める為に、壁1枚を隔てて大使館防衛を勤める国防隊員達がいた。


この壁の向こう側には、次々と暴徒や役人、兵士や冒険者が建物内に集結しつつあり、監視カメラのモニターから見る限り、既に100は下らないであろう人数が集まっていた。


その様子をモニター越しで凝視していた井上軍曹の元に、部下の1人が報告をしてきた。


「軍曹、ドローン班からの報告で、他の大使館を包囲していた暴徒の一部が、こちらに向かっているようです。」


「なに?それは確かか?」


「はい。ソンボド広場を伝って次々と合流しながらこっちに向かっています。」


「ソンボド広場か・・・近いな。だが何故、急にこっちに来る?まさか、ここの連中が呼んだのか?」


「それぞれの暴徒がほぼ同時に動き出したところを見ても、概ねそうでしょう。どうしますか?」


井上軍曹は自身の顎を撫でるように指をかざし、暫く考え事をしてから口を開いた。


「直に救援部隊が来る。彼等に対応をさせろ。噂に聞く特急部隊が噂通りなら、それが最も有効な使い方だろ?」


「了解しました。それと軍曹はもっと後方に下がるべきでは?大使の近くにいるべきかと・・・」


「俺は現場指揮の方が向いてるんだ。だから、この大使館警備の責任者を任されてる。それよりも早いとこ連中をどうにかしねぇと・・・っ!」


井上軍曹の言葉は途中で途切れた。何故ならば、壁の向こう側、つまり暴徒達に占領された方角から自動車のエンジン音と歓声が鳴り響いたからだ。


ブオオォン


おおぉぉ!!


そう自動車特有の重厚な音と大勢の人間による雄叫びを壁越しから井上達の耳に入るや否や、井上軍曹は飛び付くようにカメラのモニターを見る。


「奴等・・・まさかあの車を動かしやがったのか!どうやって操作方法を知ってる奴を集めた!?」


井上軍曹の目に映ったのは、正面玄関口を突破される原因となった壊れたと思われた自動車が、ぐちゃぐちゃになったバリケードを、踏み潰しながら動き出す光景だった。


その自動車の周りでは暴徒達が、大喜びしている様子が見れた。


ボンネット部分がひしゃげていても、それがどうしたと言わんばかりにゆっくりと方向をこちら側へと変える様子を見て隣にいた部下が思わず呟く。


「流石は日本製・・・」


「褒めてる場合かっ!お前等っ!車がまた突っ込んでくるぞっ! 備えろ!

第1分隊、連射モードで待機だ!第2分隊は、そこの柱で待機だ!奴等が雪崩れ込んだら援護しろ!」


井上軍曹は、連中がやろうとしていることを瞬時に察して部下達に迎撃態勢をとらせる。


「糞っ、ここが正念場だぞ。日本人の力を異世界人に見せつけろ!」


井上軍曹の言葉に部下達は、頷きをもって応える。それぞれの隊員達の顔には、今まで以上に緊張に満ちた表情を浮かべて。






ブオオォン


「うおぉ!? 動いたぞっ!!」


「おおぉぉ!!」


若きミスリル級冒険者の魔術師ネサームが遂に、列強の象徴の1つである自動車を動かした瞬間を目の辺りにした彼等はみんな身分に関係なく歓声の声をあげた。


その後、ゆっくりとハンドルを操作して向きを、目標である恐ろしく頑丈な扉へと修正しているのを見て、ネサームのチームメンバーでもあり、リーダーでもある重騎士エルブリッドは、安堵する。


「ふぅ・・・」


「凄いわね、あの子。本当に動かしちゃうだなんて・・・」


そんなリーダーを見て神官騎士ネイティアは、微笑みを浮かべながら声をかける。それにエルブリッドは、ネサームの方を見てこう言う。


「あぁ。あいつは間違いなくこのバフマン王国の魔術師を率いる器の持ち主だ。あの才能ならばきっと列強とも互角に渡り合えるだろう・・・」


そう言うエルブリッドに、方向の修正を終えたネサームが運転席から腕を振って声をかけた。


「リーダー!準備出来たよっ!これでいつでも行ける!」


「あぁわかった!ならお前はそれに降りるんだ。」


「え?」


エルブリッドからの言葉に、ネサームは困惑したように反応する。これを動かしたのは自分だ、なら最後までこれを操るべきなのに、降りろと言われるとは思いもしなかったからだ。


その反応を見てエルブリッドは続けてこう言った。


「そのままぶつけるなんて、危険過ぎるだろ。それにお前は魔術師だ。魔術師が俺達よりも前に出てどうする?」


エルブリッドからの正論に、ネサームは納得はするが、それでも引き下がろうとしない。


「で、でもこれを動かせる奴なんて・・・」


「いるだろ? 一番乗りでこの大使館に突撃した英雄達が。」


エルブリッドはそう言うと後ろを振り返る。それに連られて全員の視線がとある人物に集まる。


「・・・お、俺達っすか・・・」


そこには、ヨレヨレの国防隊員の装備を着込んで、突っ立っていたノストがいた。その隣にには、こめかみに手を付けて何かを諦めたような表情をするバサソンもいた。


「頼んだぞ、英雄君。君達ならきっとあの扉を破れるはずだ。引き受けてくれるな?」


どう考えても危険な任務に、バサソンは断ろうとするが、微笑みを浮かべているエルブリッドの目を見て、断りの言葉を喉から出すことは出来なかった。


(断ったら殺される・・・)


ノストは泣きそうな表情で頷いた。





「はぁ・・・なんで俺もなんだ・・・」


思わぬ巻き添えを喰らったバサソンはそう呟いた。ふと、隣に視線を動かすと、ネサームから一通りの運転方法を教わってるノストがいた。


「足元の左側のペダルを踏みながら、このレバーをその文字に合わせると前に動くから、合図をしたらそのまま右のペダルに踏み変えて。」


「わ、分かりました・・・」


2人とも顔面蒼白なのを見て、ネサームの後ろにいたエルブリッドが励ます。


「安心しろ。扉が開いたらすぐに俺達も一緒に突入するから。」


「は、はぁ・・・」


ノストは思う。果たしてその時には、息があるのだろうか・・・と。


そう思案していると、準備が整ったようだ。ネイティアがエルブリッドの肩を掴んで頷く。それを見たエルブリッドは、ノストに合図を送る。


「よし、出してくれ。」


その言葉を聞いたノストは、ネサームから教わった手順通りに操作を行う。


「えっと・・・これをこうして、これを踏めば・・・」


「あぁ・・・嫌だ・・・なんでこんな事に・・・」


バサソンは目を瞑って己の運命を呪うが、それもすぐに終わる。


一通りの操作を終えた自動車は、AT車特有のクリープ現象を起こして、緩やかに動き出した。それを見た周囲の仲間達は、また、歓声の声をあげる。


「おぉ・・・また動いたぞ!」


「本当にクルマというのは誰でも動かせるのか?列強人じゃなくても動かせれるのか!」


「お、俺、外に行って探してくるよ!」


「馬鹿野郎!またあの地獄に戻るつもりか!屋上の連中がまだ健在なのに外に出る奴があるか!」


「それに他のクルマは、殆どメチャクチャにしちまったからな・・・こんな事ならやるんじゃなかった。」


(糞っ!他人事だと思って・・・)


ノストは呑気な周囲にそう悪態を付くが、すぐに気持ちを切り替えて、アクセルを思い切り踏み込む。


「ぐぅっ!?」


「ひえぇぇっ!」


アクセルを踏み込んだ事により、急加速し出した自動車は、あっという間に速度計の針が40キロメートルにまで上がる。


室内とは言えども、広大な敷地を利用して建設された大使館1階のエントランスは広く、速度を出すには充分過ぎる程の余裕があった。


数百キログラムを優に越える鉄の塊が、人間の足では到達出来ない速度にまで達した瞬間、膨大な運動エネルギーを目の前の扉に向けて放たれた。


(あ、死んだ。)


ハンドルを握り締め、瞬きすをすることすら恐怖で忘れていたノストはその瞬間、全てを諦めた。


日本とバフマン王国を隔てる扉に、自動車が接触した時、辺りに轟音が鳴り響いた。






「な、なんだ!?何があった!?」


地下へ避難している岩井大使は、突如として上の階から聞こえてきた轟音に思わず隣にいた国防隊員に聞く。


聞かれた隊員は、上に視線を向けており、その鋭い目を岩井大使の方へ戻し、こう言った。


「・・・1階には多くの隊員が居ます。大使はこのまま進んでください。」


そう有無を言わさぬ表情の彼を見て、岩井大使は唾を飲み込み、静かに歩き出した。最悪の状況を想像して・・・


(職員エリアが突破されたのか?

 だとしたらさっきの音は爆弾か何かか?もしかしたら上は既に・・・)


岩井大使は、国防隊員の死体を踏みながら狂気の表情でこちらへ近付いてくる暴徒達の姿を想像して身震いした。もし自分が彼等の手に渡れば人質か死かのどちらかだろう。


死は怖い、だが人質も不味い。日本政府の足枷になるなんて真っ平御免被る。


そして、仮に無事に帰れたとしても暴徒達の人質となった外務省職員にはもう出世の機会など訪れないだろう。


(糞っ!やっぱ辞退しとけば良かったんだ!こんな辺境の国の大使なんて何の価値も無かったんだよ!)


そんな岩井大使の心配を他所に、彼の護衛を井上軍曹から任された隊員の耳に無線が入る。


隊員は、無線の声が岩井大使の耳に入らぬように無線機を調整する。そしてその内容を耳にした時、彼の無表情な顔に一筋の汗が流れた。


『各隊員に告ぐ。大使館1棟にある職員エリアの扉の一部が破壊された。あと数分で暴徒達は侵入すると思われる。

 地下へ通じる全ての通路を施錠せよ。1棟の上階に待機している隊員は直ちに1階へ集結せよ。繰り返す、1階に集結せよ。』


隊員はそこで無線を切り、自身の手に持つ20式自動小銃の安全装置を外した。これから迫り来るであろう暴徒達を撃退する為に。






「軍曹っ!扉が・・・不味いですよ!?」


「分かってる!」


井上軍曹は、隣でそう大声で叫ぶ部下を黙らせて、目の前の状況に舌打ちをした。


「ちっ!第1分隊っ!射撃用意!最初が肝心だ!奴等の玉を縮み上がらせてやれ!」


自動車からの突進により、自分達を守ってくれていた装甲扉はひしゃげ、装甲壁と扉との間に隙間が出来てしまっていた。


人が通るには小さな隙間だが、暴徒達が雪崩れ込む為に布石には充分過ぎる程の大きさだ。事実それはすぐに叶うことになる。


ギギギッ!


「っ!?軍曹っ!奴等、なんて力を・・・っ!」


その隙間から鋭利な剣が射し込まれると、テコの原理で扉を抉じ開けようとしているのか、剣に力を込めて動かせているのが見えた。


ひしゃげたとは言えども、頑丈な素材で造られた筈の扉は、その常人では無い存在によって加えられた力に負けるように徐々に扉が曲がっていく。


だがそれを黙って見ている程、井上軍曹は呆けていない。


「第1分隊、発砲しろ。」


「了解。」


井上軍曹の命令により、小銃を構えていた4名の隊員が一斉に発砲を開始する。


数十を越える鉛の銃弾が扉の隙間から突き出た剣の向こう側目掛けて放たれる。それに慌てたのか剣が引っ込む。


「第4分隊っ!続けて催涙弾を放てっ!」


対暴徒対策として保管されていた催涙弾を装備した隊員が、穴に向けて投擲する。


これで暫く時間稼ぎが出来ると踏んだ井上軍曹は、隣の部下に指示を出す。


「地下の連中に伝えろ!地下室の通路を完全に封鎖するんだ!それと上の連中もここに集めさせろ!ここを突破されたら上を警備しても意味がない!急げ!」


「はっ!」


指示を受け取った部下が無線機を取り出し、通信を行うのを見送った井上軍曹は再度、正面の破損した扉を凝視し、手に持つ小銃に装填をした。


「ふんっ・・・魔法か。実に厄介だな。」


その目に映った光景は、催涙弾と銃弾を弾く蒼白い膜が、破損した穴の先で展開されているのが見えた。


「さて・・・救援部隊が先か、それとも全滅が先なのか、いっちょ神に祈ってみるかね。」


その瞬間、井上軍曹はその手に持つ小銃を構えて発砲を開始した。






「ゲホッ!ゲホッ!何なんだよこれ!?」


「い、いぎがでぎなぁいっ!!」


「おいっ!その煙を吸うな!みんな結界の中に入るんだ!」


冒険者の1人が、敵の放った謎の煙を吸わないように大声で叫ぶのを尻目に、エルブリッドは、ネイティアが展開した結界魔法の中で思考する。


「ふむ・・・魔力を感じないところを見ると撹乱魔法の類いではなく、物理的な手段でこんな典型的な攻撃をするとは・・・」


「考え事をしてる場合?速いとこあの扉を抉じ開けてくれないかしら?」


ネイティアは辺りに充満している煙を、どうにかしているのに呑気に考え事をしているエルブリッドに眉を潜めながら苦言を申した。


「もちろん分かってる。それも同時に考えてるさ。とは言えども、流石にひしゃげたとは言え、あれを力任せにやるのは迂闊だったな。」


エルブリッドは先程の剣を使っての行動に、苦笑いしながら言う。


「ところであの2人は無事か?」


「?・・・あの2人って誰のことよ?」


「あそこの2人組だよ。」


エルブリッドは、扉とぶつかった衝撃で更に大破した自動車の中にいるノスト達を指差す。それにネイティアは魔法を行使しながら応える。


「あぁ、あの子達ね・・・ネサームが事前に加護を付与してたから多分、無事よ。あそこから出てない所を見ると気絶してるだけかしらね。」


「そうか、なら使えないな。」


「リーダーっ!持ってきたぞ!」


そう会話していると斥候のリキシタが両手に大きな袋を持って来る。それを見たエルブリッドは笑顔を溢した。


「来たか!よしっ!それを連中に浴びせてやれ!ネサームっ!リキシタを結界で守ってくれ!」


「わ、わかった!」


ネサームとリキシタは、自身のリーダーの指示を聞いてすぐに動き出す。


破損した扉の穴からは、今もあの煙を噴出する物が一定のタイミングで出てくるが、それに怯むこと無く近付く。


「何をするの?」


ネイティアは訝しげに、リキシタが手に持つ袋を見てエルブリッドに聞いた。それに彼はニヤリと口角を上げて言った。


「いやなぁに、列強人に我が国の特産品を送ってやろうと思ってな。ちょっと市場の薬屋から拝借したのさ・・・奇しくも連中と被っちまったけどな」


そう言い終えると、充分な距離まで近付いたリキシタが袋の口を開けて中身を広げた。


中身は薬効成分を持つ大量の薬草であった。リキシタはそれに特殊な魔法効果を持つ液体薬品をそれに掛け、着火を始める。


すると薬品が掛かった薬草から煙が吹き出て、それを確認したリキシタは大急ぎでそれを丸め、破損した穴から勢い良く、そして正確に向こう側の日本兵に投擲する。


リキシタが投げたのは、井上達と同様に催涙こうかのある薬草であった。それに更に効果を上げてくれる魔法薬を混ぜて投げたのだ。


投げられたソレは、すぐに効果を発揮して日本側にも煙を充満させる。


「よし。お前らっ!あの扉を抉じ開けるぞ!」


それを見たエルブリッドは、背後で待機していた冒険者達に指示を出す。


指示を聞いた冒険者達は、後衛の魔術師から様々な強化魔法を掛けて貰い、煙で混乱しているであろう日本兵の隙を突いて扉に各々の武器を突き立てて抉じ開けようとする。


だが・・・


「うおっ!」「ぐえっ!?」「奴等っ攻撃してくるぞ!!対策をしてやがったな!」


その穴からまたもや銃弾が飛来して来た。油断していた下位の冒険者達の何人かがその銃弾に倒れ伏す。


「ちょっと、平気そうなんだけど?」


「まぁ連中も同じような攻撃をして来たからな。その対策もしてるだろうよ。まさか被るとは思わなかったんだ。」


エルブリッドとネイティアがそう話している間にも銃弾は絶え間なく撃ってくるが、熟練の冒険者達は、それに怯まずに扉を攻撃する。


「ちいっ!魔術師は、結界魔法を強化してくれ!」


「火縄銃を持ってる奴は援護しろ!」


次々と飛んでくる銃弾に被弾をするが、それを無視した甲斐もあって扉と壁との隙間の大きさが先程よりも大きくなっていく。


それを確認したエルブリッドは、大きく息を吸って、隣のネイティアに後ろで煙と格闘している民衆達を指差して言う。


「俺が入ったら彼等を突入させてくれ。全員でなくても良いから加護を付与してな。」


「わかったわリーダー。」


それを聞いたエルブリッドは、魔術師達に合図を送り、自身に強化魔法を掛けて貰った後、床を勢い良くーー蹴った。


一呼吸の間で数十メートル先の扉にまで近付いた彼はその勢いのまま、広がった隙間に向けて体を小さく畳み込んで、多数の銃弾もかい潜りながら、職員エリアに入った。


更に彼は、勢い良く隙間を通過した際に、剣を扉に思い切り振っていたので、変形していた扉は更に形を変えて、遂には人が通り抜ける程に隙間を拡大させていた。


「な、マジかよ・・・」


そんな一瞬の間に人間離れした一連の行為に、思わず見入っていた国防隊員達を嘲笑して、こう彼等に対して口を開いた。


「さて、ようやく会えたな列強人共。いや、仲間を見捨てた卑怯者共。」


それを聞いた井上軍曹は、小銃を彼に向けながら真顔でこう言い返した。


「身分証をお持ちでない方は入室を拒否してるんだ。お帰り願おうか。」


その瞬間、大きくなった隙間から雪崩を打って突入してくる民衆を尻目にエルブリッドは井上軍曹と目を合わせてこう言った。


「そう言うなよ。これから皆殺しにされるんだ。楽しもうや。」


「やれるもんなら殺ってみろよ。」


井上軍曹は、小銃の引き金に力を込めて銃弾を発砲し、エルブリッドは剣を勢い良く振った。


真正面からの真っ向勝負がいま、始まった。







       ソウバリン近郊 


真っ暗闇となった空に向けて双眼鏡を使い、夜空を見上げている男がいた。


彼の後ろでは、火を付けられて赤い光を出している都市ソウバリンがこの夜空を明るく照らしていた。


暴動によって炎上している首都をこの国の者が見れば己の国の惨状に膝を屈して嘆いているであろう。


しかしこの男は生憎バフマン人ではない。ここより遥か先の他国の人間である。


彼は暫くの間、後ろの燃えているソウバリンを無視して夜空を監視する。


「おっ。」


やがて目当ての物を発見したのだろう、ソレを見つけた彼は懐から携帯を取り出して仲間に伝える。


「こちら17番、西東より鳥を発見。お待ちかねの本国からのプレゼントだ。あの中に噂の特急もいるんだな?一目見てみたいね。」


そう仲間に伝える。仲間はそれを聞いてすぐに通信を切った。それを確認した彼は無言で切った仲間に対して、つれないな、と呟く。


彼が先程まで見ていたのはこの美しい夜景ではない。


彼が見ていたのは、余りにも高性能である故に日本国がかつて居た地球諸国を驚愕させ、畏怖の念を集めた大型輸送高速回転翼機、名称『隼』とその姉妹機である『雷鳥』だった。


「・・・所属は違うが同じ日本人だ。速く助けてくれよ。」


公安の最高機密部署所属の彼はそう聞こえる筈もない彼等に対してそう言った。


「これより次の段階に入る、かね。」


彼はそう言い、近くに止めている馬へ乗りソウバリンの方角へ走らせた。


自らの任務達成の為に、ひいては祖国の安寧の為に

如何でしたか?


お久し振りですね・・・久し振り過ぎて内容なんて忘れちゃったよって方には本当に申し訳ないです。


なんとか仕事のピークは過ぎた?のかな。計画がコロコロと変わる会社ですが、ここからは投稿頻度を上げて行きたいですね・・・


また、次にお会いしましょう!・・・うぅ速く大合戦を描きたい・・・



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― 新着の感想 ―
[一言] 正直縁ギリで良いやーなんだよな 近くにあるわけでもメリットがあるわけでもないし 裏社会の秩序ある狩り場にした方がましっていう。 というかこいつらでも部族社会でなく 国同士の約束は一応守れる…
[良い点] 一度衝突してもまた動くとはやっぱり日本車は優秀ですね。 [気になる点] チェーニブル法国大使館での大佐と大使のやり取り、まさに「現場を知り深く理解する良き将校」と「紙の上の文字だけで理解し…
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