第33話 軍務大臣の働き
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第33話 軍務大臣の働き
オーマバス神聖教皇国 首都 シンメネリア
この都市では、軍務大臣による軍事クーデターにより、一部ではあるが、混乱が生じていた。
首都にある政府の重要施設の1つ、議事堂が反乱軍に攻撃され、それが突然過ぎたことで議事堂にいた警備兵達は対応出来ず、あっという間に占領されてしまったのだ。
議事堂だけでなく、首都にある軍務局、憲兵本部、陸軍基地も反乱軍に占領されていた。
更には、反乱の首謀者が軍務大臣であるがゆえに、陸軍の幹部達がその反乱に加担することになっていたのだ。
勿論、教皇派の幹部もいたのだが、軍務大臣派の幹部に射殺され、首都に駐屯していた陸軍の総勢2000名がクーデターに加わっていた。
そして現在、議事堂では、軍務大臣が未だに見つからない教皇を必死に探していた。
「まだ見つからんのか!?」
落ち着きの無い軍務大臣の言葉に、彼の部下は申し訳なさそうに応える。
「はっ!現在、捕らえた警備兵や近衛達を尋問しているのですが・・・分からないとの一点張りでして。」
「ならば近衛の隊長らを見つけて、拷問してでも吐かせろ!奴等なら何かを知っている筈だ!」
「はっ!畏まりました!」
部下が走り去る様子を見て軍務大臣は、今後について考えた。
(どうする?・・・最悪教皇なしで降伏をするか・・・幸いこっちには、他の大臣達がいる。あいつらを説得してなんとかするか。)
彼がそう考えていると、捕らわれて連行されている大臣達が目に入った。
すると向こうも気付いたのだろう。こっちを見て声を上げた。
「貴様!こんなことをして只で済むと思っているのか!?」
「この裏切り者め!国民が黙っていないぞ!」
その様子を見て彼は、話し合ってみることにした。
「まぁ少し落ち着け。俺の話を聞け」
「黙れ!日本に屈するつもりか!」
「そんなことをすれば、我が国の地位が地に落ちるぞ!!我々ももう終わりなのだぞ!!?」
「だから落ち着け!・・・いいか?このままあの教皇に着いて行ったら最後は破滅だぞ?戦争を続けても第1師団を破った連中には、あっという間に負ける。だったらこれ以上、国が追い詰められる前に降伏すれば、国民の命を守れるじゃないか」
「綺麗事を言うな!!どうせ破門にされるのが怖くて日本に媚を売ることにしたのだろうが!?」
その通りだが、彼はそれを顔に出さずに説得を続けた。
「よく考えてみろ。すべての責任をあの男に擦り付ければ、このまま戦争を続けて敗北するよりも、幾分かは助かる可能性があるだろう?」
「・・・だが、それをした所で国民が納得するのか?」
ようやく話を聞いてくれそうになって、彼は内心ホッとしながら続けた。
「それは心配ないだろう。国民も疲れてきてる。今までに経験したことの無い、敵への恐怖。それから逃れたいと願っている。そこで我々が戦争を終結させたという事実があれば、後はどうにでも出来る。日本側の印象も、少しは良くなる筈だ。既に軍にも根回しはしている。心配ない。問題があるとしたら・・・教会勢力だな」
その辺は、流石は軍務大臣といったところだろう。失踪した時に、在任中に築いた人脈を駆使して、軍の幹部に掛け合ったのだろう。
教会勢力に関しては、宗教国家である為にかなり有力な力を保持しており、無視は出来ない。
「降伏をすれば、日本は間違いなくメンリルバス教を潰すか、その勢力を削ぐはず・・・説得は困難だな。」
「それに国民の中には、当然熱狂的な教徒達もいる。」
「それはもう仕方ない。説得は不可能と考えて、降伏をするべきだ。その後は日本が何とかするだろう。」
「・・・教皇は捕らえたのか?」
財務大臣からの質問に、軍務大臣は、少し躊躇した後に応えた。
「・・・いや、今のところはまだ捕まっていない。恐らくだが、秘密の通路を使って既に逃げている可能性がある。誰か知ってる者はいないか?」
その質問に、彼等は互いの顔を見合わせた。中から宰相が発言する。
「確か・・・地下に緊急用の通路があると噂が流れていた時期があったな。その時は単なる都市伝説として扱われていたが・・・事実かも知れん。」
「となると、やはり手遅れか・・・仕方ない。外務大臣、日本に降伏をすると伝えてくれ。こうなったら既成事実をつくって奴の立場を崩す。」
「あ、あぁ解った。正直私はそうしてくれて助かってる。アトランティス帝国からはいい返事が貰えなかったからな。だが・・・教皇なしで、大丈夫なのか?」
「既に教皇の権威は地に堕ちた。この戦争に勝ち目が無くなった事も、もうはっきりしている。我々が勝手に降伏しても、他の政治家達は反対しないだろう。」
和解が成立した為に、彼等は拘束を解かれた。そして外務大臣は、見張りと護衛の役割を果たす数人の兵士と共に外務局へ向かった。レムリア連邦経由で日本に降伏を宣言するのだ。
その後も反乱軍は議事堂を捜索するが、教皇は見つからずにいた。その代わりに宰相の言葉を聞いた兵士が地下を集中して探した所、幻術で隠された通路を発見。教皇は既に逃げたことが判明した。
その通路を使い追いかけるが、途中で落盤でふさがっており、それ以上行くことができなかった。
教皇が何処に逃げたのかはわからない。
そして教皇の行方が分からないまま、反乱軍は主要な政治施設を占領した。その後、大臣らを取り込んで暫定政権を立ち上げ、日本・地球連合軍・レムリア連邦に降伏を宣言した。
列強2ヶ国が新興国に降伏・講和をした。日本に負けたと、あるいは勝てないと、自らはっきり認めたのだ。その事実に、世界中のあらゆる国が衝撃を受けた。
特に衝撃が大きかったのは、ヨンバハーツ大陸のメンリルバス教同盟側の国々であろう。
この同盟諸国は、今までオーマバス神聖教皇国の威を借りて、勢力を広げてきたのだ。その国が降伏をした。更には、同盟を結んでいた筈のレムリア連邦が裏切ったのだ。
その相手が先日、連合を組んで侵攻した日本なのだから、各国の首脳部は全員が青ざめた。今度はこちらが逆侵攻を受けるだろうと察したのだ。
そのためメンリルバス教同盟国は、オーマバス神聖教皇国が降伏を宣言してからさほどの時間を掛けずに、日本に降伏や講和の打診をしてきたのだ。
更に、すぐ攻めてくるだろう反メンリルバス教同盟国からの侵攻に備えて動き出した。
そして反メンリルバス教同盟国は、その情報に歓喜した。今まで苦しめられてきたメンリルバス教同盟の中心、オーマバス神聖教皇国が降伏したのだ。
1番の驚異が無くなった事に、どの国も安堵した。反メンリルバス教同盟の盟主であるパースミニア王国は、国境付近にて交戦していたオーマバス陸軍も同時に降伏した為、大陸内のメンリルバス教同盟国への対応を始めた。
ドバラキ公国は、長らく使節団と連絡がとれずに困惑していた。しかしレムリア連邦経由で、メニア公女率いる使節団が無事に日本と接触を果たした事を聞き、安堵した。
日本が筆頭の地球連合軍は、オーマバス神聖教皇国の降伏を外務省経由で聞いた後、すぐさまマッケラの占領を開始。その後またすぐに首都シンメネリアに向けて進軍を開始した。
マッケラには、約5000名程の軍を監視役として置いていた。
首都に進軍する部隊は、既にオーマバスの主力は殆ど壊滅した為、大規模な攻撃を受ける可能性は低い。しかしゲリラ戦を仕掛けられる可能性がある為、警戒しながら進んでいた。
陣地にいる防衛部隊とマッケラの部隊を差し引いて約5万強の兵士と、数百両もの軍用車輌の進軍は、オーマ島の現地人にとって、さぞ恐ろしい光景だろう。
道中にある都市や町を通り、2日間を掛けて首都へと到着した。
首都へ到着した地球連合軍は、まず最初にオーマバス神聖教皇国の宰相らからの歓迎を受けたのだった。
少し時は戻る・・・
オーマバス 首都シンメネリア
この都市内に張り巡らされている下水道を十数名程の者達が歩いていた。
彼等は教皇とその近衛兵達である。議事堂の隠し通路を抜けた後、この下水道で反乱軍の目の届かない場所まで逃げて再起を図ろうとしていた。
「猊下、もう少しでこの下水道から抜けますので、ご辛抱下さい。」
「あぁ・・・分かった。」
教皇は、覇気の無い声で応えた。暫く歩くと、突如護衛していた近衛兵達が銃を前方に構えた。そのいきなりの行動に、教皇は驚いて隊長に尋ねる。
「ど、どうした!?」
「お静かに!・・・そこにいるお前達!一体何者だ!!ゆっくり姿を見せろ。少しでも妙な動きをすれば、発砲する!」
そう隊長が言うと、前方の何も無かった筈の場所から突然、数人の男が現れた。そしてその1番前に立っていた、30代程の微笑みを浮かべているエルフの男性が発言した。
「ふむ。流石は近衛兵といったところか。・・・あぁ待って下さい。私達は、アトランティス帝国の者ですよ。教皇猊下。私は、その外交大使の部下です。」
その言葉に教皇達は目を見開いた。だが近衛兵達は、警戒を解かなかった。
「本当にアトランティス帝国の者だと証明して見せろ!・・・猊下、少し御下がりください。」
後半は、彼等に聞こえないよう 小さな声で伝えた。脳に直接声を伝えられる伝言の魔法があるのだが、彼はそれを修得していなかった。
「そう警戒をしないでください。そうですね・・・証拠なら、これでよろしいかと。」
そう言い、彼が出したのは、教皇がアトランティス帝国大使に送った、ペンダントだった。
教皇が送ったペンダントは、高純度の魔法石と高度な魔法を籠められたことによって製作された貴重な物で、魔力の高い者ならば、近くにいるだけで、その存在を察知できる程、多くの魔力が籠められていた。
「・・・猊下、間違いありませんか?」
「あぁ、間違いない。あれは、私が大使に送った物だ。」
教皇もそこら辺の神官よりは、ずっと高い魔力量を持っている。ゆえに察知できた。
それを聞いた近衛兵達は、ようやく警戒を解いた。そして教皇が謝罪の言葉を述べた。
「私の部下が失礼しました。どうか許して頂きたい。」
その謝罪の言葉に男は、やや大袈裟な身振りで手を振った。
「いえいえ、何を仰いますか。彼等の行動は、護衛として当然のことをしたまでです。」
「そう言って頂だけると有難いです。して、一体何用でここに?」
男は、その言葉を待っていたかのように応えた。
「それは勿論。教皇猊下を御迎えに来たのですよ。我々アトランティス帝国は、貴方様の亡命を歓迎します。」
「亡命ですと!バカな、私は逃げませんよ!まだこの国には、私を支持する者達がいます。彼等を使い、日本と戦いますよ!異教徒達に負けたままでいられますか!」
「猊下」
教皇は怒りながらそう言うが、男は微笑みを浮かべながら喋った。
「もうこの国は終わりですよ。国民も疲れている、軍も壊滅、その上レムリア連邦までが敵となった。・・・どうやって倒すのです?」
その言葉に何も言い返せなかったが、教皇も負けていられない。
「確かにそうですが、貴国には、何度も救援の要請をした筈ですよ!」
「その点についてですが・・・上層部は、日本とは戦争をしない方針にしたのですよ。流石にあのレムリア連邦が日本に鞍替えするというのは、無視できない事態ですのでね。申し訳ありませんでした。その代わりにと言ってはなんですが、貴方を保護しますよ?身の安全を保証します。」
「しかし、それでは再起ができn」
「これを受ければ、我が国の手厚い支援を受けられるのですよ。如何です?その方が再起も図りやすいのでは?」
教皇は、しばらく悩んだ後、亡命することを決意した。
「解りました。亡命をします。」
その言葉に男は、嬉しそうに反応した。
「決断をしていただき、誠にありがとうございます。さぁこちらへ、大使が待っておりますよ。」
男はそう言い、教皇達を歓迎した。教皇はアトランティス帝国にて手厚い保護を受けることになった。
如何でしたか? ここまで読んでくださり、ありがとうございます!
遂に戦争終結しましたね。いやはや・・・長かったなぁ。
そして、誤字脱字報告いつもありがとうございます!




