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私の家族。 勇者の娘 アリス8歳

「た、ただいま」


「おかえりなさいお父様!」


「おかえり父さん」


「おかえり兄さん」


「おかえり貴方」


転移の魔方陣から出て皆の方を見る。

誰も私の方を見ていない。

みんなお父さんに駆け寄る。

それはいつもの事、みんなお父さんが大好きなんだから仕方ない。


「おかえりアリス」


「ふぇ?」


1人離れた私に掛けられる声、それは...


「...マキナ姉さん」


「おかえり、長旅お疲れ様」


にっこり微笑むマキナ姉さん、唖然とする私の荷物を素早く持ってくれた。


「ただいま...」


うつむきながらマキナ姉さんに返事をする。

姉さんは私をいつも見ていてくれている。

安心感と居場所を強く実感する。


「今回の旅はどうだった?」


荷物を降ろし一息する暇も無く姉さんは質問をする。

私お腹空いてるんだけど。


「はいどうぞ」


「ありがとうハーミラ姉様」


「ありがとう」


取り皿に料理を山盛りにし、ハーミラ姉様が私とマキナ姉さんに手渡した。


一口頬張る。


「美味しい」


「良かった、2人共沢山食べてね」


「うん!」


「はい」


にっこり微笑むハーミラ姉様、お父さんを見るとハリス兄さんと剣を片手に何やら話している。

ハーミラ姉様はお父さんをハリス兄さんに譲ったんだね。


「で、旅はどうだったのよ?」


マキナ姉さんは我慢しきれないようだ。

でもお父さんとお話しなくても平気なのかな?


「うん、今回はドラゴン討伐だったよ」


「へえ!?」


ドラゴンと聞いたマキナ姉さんの目が輝く。

お父さん譲りの赤い髪と切れ長な瞳、女の私でさえその凛々しさに目を奪われる。(妹なのにね)


「山間にオークが発生してるって聞いてね、お母さんとお父さん、私の3人で駆けつけたの。

そうしたらドラゴンまでやってきて」


嬉しそうなマキナ姉さんについ私も話に熱が入る。


「ほらマキナ、アリスからの話を聞くのも良いけどお父様にご挨拶なさい」


「えー今良いとこなのに~」


マリア様がマキナ姉さんの頭をトントンと叩くと不満そうに頬を膨らました。


「アリスちゃんごめんね、お父さんには挨拶をちゃんとしとかないと」


「あ、いいえ....」


慈悲深い笑みを浮かべるマリアさん。

さすがは現役の聖女様だ。


「一緒に行こ、話の続きをアリスとお父さんから聞きたいの」


「え?」


腕を掴まれお父さんの傍に私も走る。

それで良いの?


「お父さん!」


「お、マキナただいま」


「おかえり、今アリスから聞いたんだけどドラゴン退治したんだって?」


「こらマキナ、ちゃんとご挨拶なさい!」


ほらマリア様に叱られた。


「まあ、良いじゃないか。

そうだよ、でもお父さんは他の冒険者達とお母さん(クリス)とアリスの後ろを護っただけだ。

退治したのは2人だよ」


「それでも凄いよ!」


マキナ姉さんは更に目を輝やかせる。

確かにお父さんは凄かった。

ドラゴンのブレス(火炎)や襲い来る爪を的確に私達だけじゃなく皆に知らしてくれた。

だから仲間には全く被害は出なかったんだ。


「....そこで止めはアリスが最後の一撃を」


「「「わー!」」」


お父さんの話は凄い、私もその場に一緒だったのに話に引き込まれてしまう。


「すっげえ、アリスこの剣でか?」


「あ、そうです...」


いつの間にか一緒に話を聞いていたハリス兄さんが私の荷物から剣を抜いて眺めていた。


「さすがは勇者クリス様の娘ね、私の魔法じゃ止めまでは無理よ」


「そんな...」


「いやそうだよ、俺の剣じゃ斬りつけても仕留める事は出来ねえよ」


「ハリス兄さんまで...」


憧れに似た目を向けられ恥ずかしくなる。


「アリスは戦いに関しては...そうだな」


「お父さんまで」


お母さん達も頷く。

私はそんなに凄くない。

きっとお母さん譲りのスキルがあるんだろう。

(神託はまだだけど)


「...魔力を全く持たないのにドラゴンの前に立つお父さんの方がよっぽど凄いよ」


何とか勇気を出す。


「ありがとう、皆を護るのが父さんの役目だからな」


お父さんは優しく私の頭を撫でてくれる。


「あ、ズルい私も!」


「お、俺も!」


ハーミラ姉様とハリス兄さんがお父さんに抱きつく。

でも少し待ってて、もう少し...


「マキナは良いの?」


「私はいい...」


「マキナ?」


マキナ姉さんの元気が無い、どうしたんだろ?


「どうしたんだマキナ?」


お父さんが心配そうに聞いた。


「...私アリスみたいに戦えないし、ハリスみたいに剣士になれない。

ハーミラみたいな凄い魔法使えない。

お父さんみたいな勇気も無い...一番弱いもん」


寂しそうに呟くマキナ姉さん、拳を握りしめ目に涙が浮かんでいる。


「姉さ...」「それは違うぞマキナ」


「お父さん?」


「それは違う、お父さんだって怖いさ」


「...まさか」


「考えてみなさい、魔力が無いんだ。

ハリスの様に魔力を剣に乗せる事も、ハーミラの様な巨大魔法も使えない。

そしてマキナ、お前が使える簡単な治癒魔法すら使えないんだぞ?」


「「「....お父さん」」」


「「「貴方...」」」


「でもお父さんは諦めたくない。

過酷な運命だからこそ諦めたくないんだ。

お母さん達を、いやお前達子供を護る為、それがお父さんの勇気、強さの源なんだ」


「お父さん!!」


「わっ!」


マキナ姉さんがお父さんに飛び付く。

その勢いにお父さんが尻餅を着いた。


「ねえ、私も強くなれる?」


「もちろんさ、マキナはお母さんの娘なんだから」


「でも聖女の魔法って戦いに向いて無いもん」


「マキナ貴女ね...」


「マリア、待ちなさい」


お父さんはマキナを捕まえようとするマリア様の手を止めさせた。


「愛する人が倒れていたら、死にそうになっていたらマキナはどうする?」


「...助けたい」


「そうだろ?」


「でも一緒にも戦いたい」


あらら、マキナ姉さん諦めが。


「そうか、マキナは戦いたいのか」


「うん、私冒険者になりたい!」


「は?」


「マキナ貴女何を?」


「良いんじゃないか」


「本当?」


「「お父さん!!」」「「「貴方!!」」」


お父さんの言葉に一際大きな声が響き渡った。


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