5話:妹に新属性・・・?
四ノ宮の予想以上の好感度に、俺は公園のベンチで口をポカーンと開け放心状態であった。
それからしばらく時間が過ぎ、律華からの着信によって気を取り戻した。
『おにぃ今どこ!』
「わ、悪い! 今帰るところだ」
『早く帰って来なさいよ!』
「分かった分かった」
電話を切った俺は急いで家に戻るのであった。
急いで帰宅しすると玄関で仁王立ちする我が妹、律華がムスッとした表情をしていた。
「本当に、すんませんしたーーッ!」
俺は極めて自然の動作で流れるように土下座をした。
トントントンッとつま先で床を叩く音が聞こえ、俺はビクッと肩を震わせた。
「……今日は私が作ったんだよ?」
「仰る通りでございます」
「なんで遅れたの?」
「それは──」
妹に、告白(仮)をしていたとは断じて言えない。
ここは──
「じ、実はお腹が痛くてトイレに篭って居たんだ」
「……大丈夫?」
ゆっくりと顔を上げると、そこには心配な表情をする律華の姿があった。そんな律華の表情を見て俺の良心が傷付いた。
本当の事を話したらどうなる?
俺はそう言った時の律華の言葉を考えた。
『本当にキモイッ! マジで有り得ない! ご飯は別で食べてよね!』
うん。言わない方がいいな。
心の中で律華に「嘘ついてすまん」と謝った。好感度を確認するも変動はしていなかった。心配してくれただけだろう。
「大丈夫大丈夫。心配してくれてありがとうな」
素直に感謝するも律華はそっぽを向いてしまった。
「別に兄妹として心配するのは当たり前でしょ!」
そう言ってリビングに行ってしまった。
なんかツンツンしているが気にしない方が良いだろう。
立ち上がった俺は靴を脱ぎ自室へと着替えに向かった。急いで着替え下に降りると、律華が料理をテーブルに並べていた。
「ありがとう。手伝うよ」
「うん。それそっちに持って行って」
「おう」
テキパキと二人で料理を運び終え夕飯を食べ始めた。
食べていると律華が尋ねてきた。
「おにぃ」
「ん? どうした?」
「何か最近変わった?」
「ッ!」
好感度がバレてる!? ……いや、ただの感か。
「いや、普通だな」
「そう? 少し楽しそうにも見えるけど」
「そうか?」
「女の匂いがする……」
「……え?」
律華の顔を見ると、目からハイライトが抜け落ちていた。光の無い蜂蜜色の瞳が俺をジト目で睨み付けている。
や、ヤンデレ!? 俺の妹はヤンデレ属性があったの!?
そんな突っ込みを入れている場合ではない。この状況を切り抜ける方法は──そうだ!
「そんな訳ないだろ。俺は年齢=彼女いない歴だぞ?」
「………………そうだよね!」
律華の瞳に光が戻り俺は安堵した。
「おにぃに彼女なんて出来るわけないもんね!」
そんな律華の言葉が俺の胸を深々と突き刺さり抉った。
そんなに言わなくても良くない? 俺だって恋愛したいよ。ラブコメの主人公みたいにさ……ぐすん。
「そ、そんなことないぞ?」
それに関しては少し、いやほんのちょっとだけ反論させてほしい。
俺の言葉を聞いた律華の目から再びハイライトが失われた。
(不味い! これは、非常に不味い!)
俺の額から冷や汗が流れ落ちる。
まさか俺の妹がここまでだったとは思いもしなかった。言い方を間違えれば尖った得物を持って『おにぃ、じっとしててね?』とか言い出しそうな雰囲気である。
「俺だって彼女は欲し――って何持っているんですか律華さん!?」
いつの間にか律華の手に持つモノを指差しながら叫ぶように聞いた。
律華は見時からの手にもつモノに視線を落とし、もう一度俺を見て答えた。
「箸だけど?」
「片方だけ持たないで! 怖いよ!? 箸は二つで一つでしょ?!」
「……確かに」
そう言ってもう片方の箸をもう片方の手に持って俺を見た。
(違う、そうじゃない!)
「待て待て! そうじゃないから! こうやって持つのが箸の持ちか――」
「なんて?」
「イエ、ナンデモナイデス」
律華は席を立ちゆっくりと俺の方へと地数いてくる。
ダラダラと冷や汗が流れる。律華の好感度を確認すると10%まで落ちていた。
(なんだと!? まさか、ヤンデレ化したのか!?)
対処を失敗したら俺はどうなるのだろう。
「彼女なんて出来ないよね? ね?」
「それは、できるか――」
ドンッ
「出来るかもしれない!」
俺は恐れることなくそう言い放った。律華の箸を持つ手に力が入った。
「もうおにぃなんて――」
(こうなったらやけくそだ!)
俺は律華に抱き着いた。
「……え?」
そして耳元で囁いた。
「俺は律華のことが好きだぞ」
「……え?」
(家族としてだけど)
「……本当?」
「もちろんだ」
「本当に本当?」
「当たり前だ」
「うふふふふふっ」
律華は物凄いニヤニヤ、ニマニマしていた。それほど嬉しかったのだろう。
そして好感度を確認すると――80%まで急上昇していた。
律華は低下すればするほどヤンデレ化するらしい。俺は頭の中にそうメモをした。そして離れた俺は口を開いた。
「さて、夕食食べようぜ。冷めちまうしな」
「うんっ!」
律華は満面の笑みで頷いた。
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