第8話、モンスター転生は、ほどほどに。
『人間を食べたい。人間を食べたい。人間を食べたい。人間を食べたい。人間を食べたい。人間を食べたい。人間を食べたい。人間を食べたい。人間を食べたい。人間を食べたい。人間を食べたい。人間を食べたい。人間を食べたい。人間を食べたい。人間を食べたい。人間を食べたい。人間を食べたい。人間を食べたい。人間を食べたい。人間を食べたい。人間を食べたい。人間を食べたい。人間を食べたい。人間を食べたい。人間を食べたい。人間を食べたい。人間を食べたい。人間を食べたい。人間を食べたい。人間を食べたい。人間を食べたい。人間を食べたい。人間を食べたい。人間を食べたい。人間を食べたい。人間を食べたい。人間を食べたい。人間を食べたい。人間を食べたい。人間を食べたい。人間を食べたい』
『でろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろでろ…………早ク、人間ニ、ナリタイ』
『──何だよ、これって? 身動き一つとれないじゃないか? 俺は一体「何になった」んだ? 何も見えないし、何も聞こえないし、言葉一つ発せないし、身体をピクリとも動かせないし、暑くもないし、寒くもないし、少しも腹が空かないし、眠気もないし、排泄欲もないし、これってもしかして、人間では無いどころか、生き物でも無いんじゃないか? こんなんじゃ、せっかく異世界転生したのに、何の意味も無いじゃないか⁉ お願いだ、神様だか悪魔だか知らないが、俺を異世界転生させたやつがいるのなら、もう一度、最初からすべてをやり直させてくれ!』
『……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………タ・イ・ク・ツ・ダ、孵・化・ハ・マ・ダ・カ』
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【全異世界統括組織、聖レーン転生教団直営、某異世界『転生病監察医務院・極秘研究所』にて】
「どうだね、『彼ら』の様子は?」
「──どうもこうもありませんよ! 一体何を考えているんですか、ゲンダイニッポンのWeb小説家の連中って⁉」
「……そんなに、ひどいのかね?」
「ひどいも何も、どうしてよりによって、『蜘蛛』なんかに転生させるんですか? 身体構造的に差異があり過ぎるのはもちろん、生物としての本能的にも、蜘蛛型の魔物であるゆえに、人間族に対して『食欲』を覚えざるを得ず、『元人間』としての自己矛盾のために、今やほとんど精神崩壊を起こしかねない有り様ですよ!」
「……ううむ、そんなにひどいのか? そうすると、『スライム』なんかになると──」
「言語道断ですね、肉体的にも精神的にも、蜘蛛と人間との差異なんてレベルじゃないし。現在辛うじて残っている、『人間としての前世の記憶』についても、そのうち完全に消失してしまうでしょうな」
「そ、それじゃあ、『剣』のほうは、どうだい?」
「無機物に対して、何をどう、コメントしろと?」
「……あ、はい、すみませんでした」
「まあ、残る『ドラゴンの卵』については、頭ごなしに否定できませんけどね。このように卵の段階において、『ゲンダイニッポン人としての前世の記憶や知識』をインストールされることによって、別々の種族の肉体と魂とを無理やり融合させることによる弊害を、多少なりとて緩和できるでしょう。……とはいえ、これもどうせ『偶然の賜物』でしょうけどね。むしろ元々獰猛なドラゴンに、狡猾なるゲンダイニッポン人の知恵が加わることで、更に手に負えなくなるわけだし。──ほんと、テンプレか何か知らないが、何でゲンダイニッポンのWeb小説家って、軽い思いつきだけで、人間をモンスターや無機物に転生させようとするんだ⁉ いくら先行作品がウケたからって、どうしてそんなに安易にパクリばかりするんだよ? もっとオリジナリティを大切にして、ちゃんと自分の作品の『登場人物』の立場に立って、作品づくりをしろよ! おまえ自分が異世界に転生して、蜘蛛とかスライムとか剣とかドラゴンになってしまっても、平気だと言うのか? フィクションとは違って現実においては、御都合主義的展開なぞけしてあり得ず、人間とはまったく異なった行動原理を強いられることになって、転生したその瞬間にでも、人格が破壊されてしまってもおかしくはないんだぞ⁉ どこかの世界の不条理作家の『ヘンシーン』な作品でもあるまいし、そこまでとことん救いようのない『恐怖』があるか! ──いいか、おまえらは単に小説を書いているだけのつもりだろうが、おまえらの世界の物理法則の中核をなす『量子論』に則れば、小説家が小説の中で異世界を生み出すごとに、それとそっくりそのままの本物の異世界が存在するようになって、しかも小説内の記述そのままの、異世界転生イベントが実現しかねないんだぞ? ほんと、頼む、お頼みしますから、これからは安易にテンプレやトレンドに乗っからずに、ちゃんと自分の頭で考えて、まともな作品を創作してください! そうじゃないと、俺たち異世界の住人にとっては、おまえらの生み出す頭の狂った『異世界転生』イベントなんて、『ホラー』以外の何物でも無いから!」