最終話、ある一つの世界が終わった後で。
【大日本第三帝国に関する、アメリカ国防省諜報部による、最終報告書】
・202×年、中央区銀座において、自衛隊の一部の部隊が武装蜂起を行う。
・もはや『内乱』と言ってもいいほどの、極めて重大な案件だというのに、在日米軍への報告は、一切無し。
・信じられないことにも、すべては『異世界転生』によるものと決めつけて、反乱部隊に対しては、原因究明もほとんど行わず、しかも裁判も無しに精神病の一種である『転生病』に罹患しているとの診断を下して、病院の名を借りた強制収容所に隔離する。
・自国民に対しても詳細を明らかにせず、ただすべてを『異世界帝国の侵略』によるものとするばかりで、憲法すら無視して、自衛隊の大幅増強を強行する。
・ここに至っても、もはや在日米軍なぞ存在していないかのように、協議を申し込むどころか、連絡や報告の類いも一切行われず。
・更には何を血迷ったのか、東アジア諸国に対して、『すでに異世界勢力の占領下にあり』などと断定してしまい、臨戦態勢に入り、自衛隊自体も、他国への先制攻撃が可能な、国防軍へと改編する。
・これと相前後して、『令和事変』同様に、国内各地で『異世界転生』によるものとされる、テロやクーデターが頻発して、そのたびに鎮圧に当たった自衛隊や警察の中に反乱軍が生じて、大規模な戦闘状態へと発展する。
・このような、いつ本格的な戦闘状態になるとも知れない『内憂外患』に対して、より適切に対応するために、平和憲法を完全に捨て去り、『大日本第三帝国』と国名を改めて、本格的な再軍備の道を歩き始める。
・一方東アジア諸国においても、完全に常軌を逸した新生軍事国家の脅威に対抗するために、イデオロギーを超えた大同盟が結ばれて、日本の侵攻に対して万全の構えをとる。
・この段階まで来れば、もはや在日米軍にできることは何も無いと、ホワイトハウスにおいて判断されて、全米軍は本国並びに太平洋上の各基地へと帰還して、事実上日本を見捨てる形となる。
・そして、昨年末の米国時間12月7日において、突如大日本第三帝国軍が、東アジア各国に対して先制攻撃を仕掛けたものの、それを完全に予期していた大陸各国が、迎撃に完璧に成功するとともに、その報復として、数十基もの核ミサイルを──




