第33話、女神様のささやき♡(現代日本編)
……俺は、間違っていない。
間違っているのは、この世界のほうだ!
俺は、正しいんだ。
俺は、天才なんだ。
俺は、人の上に立つべき人間なんだ。
俺は、他人から敬われて、無条件で支持されるべきなんだ。
俺は、人を教え導いていくべきなんだ。
俺は、他者から──特に女から、もっともっと、もてはやされるべきなんだ。
──そうだ、この俺様こそが、この現実世界における、『主人公』なんだ!
……なのに、
……なのに、どうして、
……どうしてなんだ?
──どうして誰も、俺のことを、認めようとしないんだ⁉
──どうして誰も、俺のことを、受け容れようとしないんだ⁉
──どうして誰も、俺のことを、褒め称えないんだ⁉
──どうして誰も、俺のことを、崇め奉らないんだ⁉
──どうして誰も、俺のことを、チヤホヤしないんだ⁉
──どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、
──みんな、俺のことを、無視し続けるんだ⁉
──必要としてくれないんだ⁉
──愛してくれないんだ⁉
……壊して、やる、
……壊してやる、壊してやる、
……壊してやる、壊してやる、壊してやる、壊してやる、
……壊してやる、壊してやる、壊してやる、壊してやる、壊してやる、壊してやる、壊してやる、壊してやる、
……壊してやる、壊してやる、壊してやる、壊してやる、壊してやる、壊してやる、壊してやる、壊してやる、壊してやる、壊してやる、壊してやる、壊してやる、壊してやる、壊してやる、壊してやる、壊してやる、壊してやる、
……壊してやる、壊してやる、壊してやる、壊してやる、壊してやる、壊してやる、壊してやる、壊してやる、壊してやる、壊してやる、壊してやる、壊してやる、壊してやる、壊してやる、壊してやる、壊してやる、壊してやる、壊してやる、壊してやる、壊してやる、壊してやる、壊してやる、壊してやる、壊してやる、壊してやる、壊してやる、壊してやる、壊してやる、壊してやる、
──俺のことを認めない、こんな世界なんか、この手で壊し尽くしてやる!
『──ええ、思う存分、壊し尽くすがいいわ』
『──だって、あなたは、正しいんですもの』
『──そんなあなたを受け容れようとはしない、世界のほうが間違っているの』
『なぜなら、あなたは、この私──ありとあらゆる異世界転生を司る、「なろうの女神」に認められた、この世界における「勇者」なのですもの』
『──そう、あなたは本当は、他の世界から、異世界転生の女神である私から、召喚された存在なの!』
『──この現代日本という、腐りきった世界を、完全に叩き壊して、一から作り直すために!』
『──まさに、旧世界の破壊神であるとともに、来たるべき新世界の創造主となるために!』
『──さあ、街に繰り出しなさい! そしてあなたの思うがままの、「世直し」を行いなさい!』
『──気に入らない、人も組織も街も世界そのものも、思いのままに壊し尽くしなさい!』
『──遠慮は要りません、これまでの鬱憤を、すべて晴らしなさい!』
『──心配も要りません、何せあなたこそが、「正義」なのですから!』
『──あなたこそが、「選ばれた存在」、なのですから!』
『ただ、気の赴くままに振る舞えば、自分のやるべきことが──「前世の記憶」が、甦りますので、ただそれに従えばいいのです!』
『──さあ、この腐った世の中に、鉄槌を下しに参りましょう!』
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「──臨時ニュースをお伝えします。本日昼過ぎ、夏休みの若者たちで賑わっていた、都内有数の繁華街のAK原にて、無差別暴行傷害事件を起こした四十代の男が、取り押さえられた際に使用された麻酔弾の効果が切れて、つい今し方意識を取り戻したとのことです。ただし現在においても若干錯乱気味の状態にあって、取り調べに当たっている捜査員に対して、『これは、正義の執行なんだ!』とか『俺は女神様に選ばれた、勇者なんだ!』などと、支離滅裂なことを口走っており、おそらくは非合法の異世界転生系のWeb小説の愛好家である、典型的な『なろう族』と思われ、事件当時もあたかもファンタジー世界のモンスターである、『ゴブリン』や『オーク』であるかのように、知性と理性を完全に無くして暴力行為に及んだことからも、『なろう族』特有の『転生病』を発症したものと判断されて、すぐさま内務省警視庁『転生病監察医務院』に収容隔離されたとのことです」
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「──実験は、成功だったな」
「まさか、これほどうまく行くとは、思わなかったよ」
「実験もいよいよ、最終段階に、移行できますな」
「いやむしろ、遅いくらいだよ」
「大陸や半島の国々はすでに、完全に異世界人に乗っ取られているのだぞ?」
「いつ我が国に侵攻してくるか、わかったものではないのだ」
「早く我々も、この『逆転生の秘術』を、完全にものにして、命知らずの『無敵の人』部隊の創設を、急がなければ!」
「──まあまあ、そんなに焦りなさんな」
「左様、今回の実験結果も、なかなかのものだったではないか?」
「『女神様のお告げ』による洗脳に始まり、繁華街での『逆転成化』に至るまで、場所からタイミングから、すべて計画通りだったしな」
「そのお陰で、検体による被害者も、あらかじめ配置しておいた、防弾防刃チョッキを密かに身につけた、自衛官だけで済んだのだからな」
「それもこれも、献体自身が、ガチで『異世界転生』などといった、馬鹿げた非現実的なことを、信じてくれているお陰だがね」
「そうそう、そもそも『異世界転生』とか『女神』とか『勇者』とかいったものを信じていないと、いくら集合的無意識に無理やりアクセスさせて、記憶を書き換えて洗脳しようとしても、うまく行きませんからな」
「──いやあ、『なろう族、 万歳! 異世界系Web小説、万歳!』って、とこですかな?」
「しかししかり」
「「「わはははははははははははははは!!!」」」
【以上、国防省最高首脳陣による秘密会議録より、一部抜粋】




