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第3話、おかわりもいいぞ?(フラグ)

【内務省警視庁衛生部直轄、『転生病監察医務院』──秘匿実験場にて】



「──な、何だ、ここは⁉」


「こんな何も無い少々広めの閉鎖病棟に、俺たち『転生病』の患者を一堂に集めて、一体何をするつもりなんだ?」


「ま、まさか、とうとう毒ガスかなんかで、一まとめに『処分』するつもりじゃないだろうな⁉」




「──あはははは、まさかそんな。普段窮屈な独房生活──もとい、個室病棟暮らしをしている諸君に、たまにはリフレッシュしてもらうために、軽めの運動を行わせるだけだよ」




「リフレッシュって……と、ところで、あんた、誰だ? 病院の中だというのに、そんな軍服みたいな制服を着たりして⁉」


「おやおや、お忘れかな? この『転生病監察医務院』は、内務省警視庁衛生部の管轄なのだからして、本官のような制服姿の警察官がうろついていても、別におかしくはないだろうが。──おお、そうそう、運動の後には、私たち職員一同による手作りの、カレーライスをたっぷりと用意しているから、今日だけは遠慮なくたらふく食べてくれ。──もちろん、『おか○りもいいぞ』?」


「「「──軍服のような服を着たやつが、そのセリフを言うな! それって完全に、『毒ガスによる死亡フラグ』そのものじゃないか⁉」」」


「くくく、まあ、冗談はこのくらいにしておいて、そろそろ『真相』を明かしてやろう。──諸君、喜びたまえ、君たちの長年の宿願が、ようやく叶うのだよ」


「……へ? 俺たちの、宿願、って」




「決まっているだろう、『異世界転生』だよ」




「「「──なっ⁉」」」




「長い間、騙していてすまなかったな。実はこの『転生病監察医務院』は、けして諸君のような、『なろう族』と呼ばれる妄想癖の社会不適合者たちを、世間から隔離するための強制収容所なぞでは無く、自ら異世界へと転生したいと欲する、高邁なる意志の持ち主たちの希望を叶えるための、政府直轄の極秘実験場だったのだよ」




   ☀     ◑     ☀     ◑     ☀     ◑




「──『異世界転生』シークエンス、第三フェーズに移行します!」


「──『ユング型超自我領域』との、アクセスを開始!」


「──全検体(サンプル)の、精神状態、良好!」


「──現在のところ、すべては順調に進んでいます!」




「……よろしい、最終フェーズへの移行を、許可する」




「──最終フェーズ、開始!」


「──各検体(サンプル)の、『ユング型超自我領域』とのアクセスを、確認!」


「──脳内海馬体への浸食が、急速に進行!」




「──『転生』、始まります!」




   ☀     ◑     ☀     ◑     ☀     ◑




「──ぐああああああああああああああっ!」




「お、おい、どうした⁉」


「な、何だよ、一体?」


「急に変な雄叫びなんか、上げやがって」




「──うおおおおおおおおおおおおっ!」




「おいおい、こっちもかよ⁉」


「ど、どうしたんだ、いきなり頭をかかえて、うずくまったりして?」


「──ちょっと待て、周りを見てみろ!」


「「「なっ⁉」」」




「……ぐるるるるるるるるるるるるる」


「ぐぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ」


「くえっくえっくえっくえっくえっ」




「……こいつら、一体」


「どうなっているんだよ、これって?」


「ま、まさか、『実験』とやらが、失敗したんじゃないのか?」




「「「……あ」」」




「──お、おいっ、今すぐ実験を、中止してくれ!」


「今もリアルタイムで、ここの状況を『観察』しているんだろう⁉」


「せめて俺たちだけでも、ここから出してくれよお!」


「なあ、聞こえているんだろう? お願いだ、何か反応をしてくれえええ!」




「……ぐるるるるるるるるるるるるるる」




「な、何だよ、おまえら、よだれをたらしていかにも物欲しそうな顔をして、俺たちのことを見つめやがって?」


「わっ、来るな! こっちに来るんじゃない!」




「「「──うわあああああああああ、助けてくれえええええっ!!!」」」




   ☀     ◑     ☀     ◑     ☀     ◑




「──現時刻をもって、実験の終了を確認」


「──生存者は、転生化した検体サンプルの、三体のみです」


「──他の検体サンプルは、『転生体』の一部を含めて、すべて生命活動を停止」


「──以上をもって、全検体(サンプル)とも、『ユング型超自我領域』との接続を終了」




「……うむ、実験は、()()()()。たった十回目のテストの段階で、転生率の三割突破は、上々の結果だよ」




「──生き残りの検体サンプルは、いかがいたしましょう?」


「いつものように、すべて『処分』してくれたまえ」


「……よろしいので」


「いくら実験に成功しようが、このまますぐに『兵士』として役に立つわけでも無いのだ、『国防軍』のほうでも、引き取ってはくれないだろうよ。それに『転生病』の患者は、まだまだ腐るほどいる、検体サンプルの補充には、困りはしないさ」


「はっ、これよりすぐさま、『オーク体』及び『ゴブリン体』に『ハーピー体』の、三体の『転生体』の処分に取りかかります。──毒ガス『の13番』、噴射!」


「──『黄の13番』の噴射を、開始!」


「──『転生体』三体の、生命活動の停止を、確認!」




「……ふん、本当に、馬鹿なやつらだ。『転生病』の患者どもは、決まって異世界転生系の小説をゲリラ的に公開している、非合法サイトの常連ばかりだが、中には当然創作側の素人作家もいるというのに、()()()()()なんだよ。現代日本から異世界に転生して、スライムや蜘蛛やドラゴンの卵になれるというのなら、反対に異世界側から、オークやゴブリン等のモンスターが転生してきて、日本人の身も心も乗っ取って、本能の命ずるままに暴れだしたり、人を食い殺すことだって、十分にあり得るだろうが?」

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