僕と俺
新作です
この世に僕が2人居るなんて現象、この世界に体験した人が居るのだろうか。
ドッペルゲンガーなんかの、自分自身の姿を自分で見るなんて幻覚ではない。
幻覚……いや、幻聴であればどれ程良いものだろうか。
僕は、僕の中に僕がもう1人いる。二重人格だ。
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今、僕の目の前には一学期中間テストの結果が大きく張り出されている。
周りにはたくさんの人がよりだかり、自分の名前が無いかと探す。
僕の通う高校は、偏差値は68と割と高い進学校である紅蘭学園。
そんな高校では、殆どのものが学年順位を気にするものである。
いや、別段進学校でなくとも結果が張り出されれば皆、興味を示すだろう。
「すげぇぞ、篠宮のやつまた学年1位だ」
「やっぱり、天才は違うんだな」
そう言って2人の男子生徒はその場を離れる。
僕は、僕は天才なんかじゃないのにと唇を強く噛み締める。
これは、僕の力じゃない……。
そうして俯くと、また周りから僕の名前が聞こえる。
「篠宮のやつ、嬉しそうじゃねぇよな」
「そりゃそうだろ、あの天才は満点でないとお気に召さないんだからな」
僕が取った点数は500満点中489である。
2位とは10点以上の差をつけて居るものの、僕の力ではないと思っている僕は素直に喜べない。
恐らく、その僕の表情が気に入らないんだろう。
彼らの気持ちが自分にもわかる分、より惨めな気持ちになる。
その場に居ずらくなった僕は、そそくさとその場を離れる。
今は昼休み、昼食を取るべく僕は食堂へと向かう。
長い列だ……
少し来るのが遅かったのか
(おい、俺はカツ丼が食いたい)
聞きなれた声が聞こえる。
これは、僕だ。
何を言っているのだろうと思うだろう。
僕が他人なら僕もそう感じる、それが当たり前だ。
(おい、聞いてんのか! )
(ぼ、僕はカレーライスが……)
(はぁ? お前、俺に逆らうのか? )
(ご……ごめん。分かった、君に体を渡すよ)
(それでいい。分かってるじゃないか)
ふと、僕は意識を失う。
それは時間にして、ほんのコンマ数秒でしか無い。
「次の人、注文どうぞ」
優しそうなおばちゃんだ。何時もここで食堂のおばちゃんとして働いている、西村さん。俺は、1度見たもの聞いたものは忘れない。
「おう、カツ丼くれ! 」
「はいよ、350円ね」
俺は財布から350円を取り出すと、カツ丼の引換券を貰った。
ここの食堂では、出来上がるまで奥で待つシステムだ。
それにしても、この髪型は鬱陶しい。
僕のやつも、よくこんな髪型で居られる。目にかかる前髪がウザったくて仕方がない。
俺は俺は前髪にかかった長い髪の毛を上にあげ、横に流す。
(ちょ、ちょっと! なんで前髪……)
(なんか文句あるのか? 僕 )
(お、俺はいいかもしんないけど、僕が明日面倒な事に……)
ブツブツという僕を無視して、俺は出来上がったカツ丼を受け取り席へ向かい食事を始めた。
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