ピンボケ青春譚
昔書いたシナリオです。小説形式で書いてないので読みづらいかもです。誰か映像化して
scene1 流星群
流星群を映している。
綺麗だね。
綺麗だけど、どこか恐ろしい。
何それ。
あれが落ちてきたら怖いなって。
怖くないよ。むしろ、悲しい。
なんで?
だって、燃え尽きて死んじゃうんだよ。
死ぬって‥‥。感情移入しすぎじゃない?
そうかなぁ。
でも、ちょっと憧れるな。
燃え尽きて死にたいの?
そうじゃないけどさ、死ぬ瞬間彼等は輝けたんだ。
やっと輝けたのに、死んじゃうんだよ。
それでも、僕等は星を見てる。
そう、だね。
だからせめて、この星空を覚えていよう。
scene2 変死体
事件現場(血や立入禁止のテープ、死体チョークなど)を映す。
こりゃひどい‥‥。
世紀末、って感じだな。
21世紀はまだまだ続くってのに。
この世の終わりって、いつ来るんだろう。
ざっと50億年後だろうね。
確か、地球の寿命だったか?
そうだよ。
そんな長くは、生きられそうにないな。
本当、人生なんて一瞬だ。
‥‥なんかさ、失敗した時に「この世の終わりだ」って言う奴いるだろ。
まあ、いるね。
あれ聞くたびに思うんだよ。一人で勝手に終わってろって。
でもさ、意外と真をついてる気がする。
何故だ?
自分が終われば、世界も終わるってこと。
よく分からん。気の持ちようみたいなことか?
まあ、そんな感じだよ。悪くないって思えば、世界は案外悪くない。
よくそんなこと言えるよ。あそこで、人が死んでんのに。
scene3 街並み
歩きながら町並みを映す。賑わっている。
また、怪人が出たらしいよ。しかも今度はこの近くで。
怪人?
あれ、知らない?ほら、最近世間を騒がせてる殺人事件。人間離れした手口から、怪人の仕業なんて言われてるんだよね。
ああ、あれか。本当、怖いよね。
見に行かない?現場はまだ、死体チョークあるらしいよ。
あんたも怖いよ。不謹慎とか、そういうのないの?
そりゃあ、そうなんだろうけどさ。なんか、現実味がないっていうか。
まあ、分からなくはないよ。あまり無残だと、現実とは思えないよね。
結局さ、どこかの誰かが死んだなんて、私には関係ないことなんだよ。
そんなこと、ないと思うけど。
みんなは、そうは思ってないみたいだよ。だからみんな、追ってるんでしょ。
追う、って‥‥。
怪人の正体。結構はっきり映ってるやつもあるんだよ。
それって、誰が?
さあね。名もない誰かが、電子の海に投げ込んだ。
あんたがそういうの好きなのは知ってたけどさ。危ないことだけは、しないでね。
‥‥わかってるよ。
scene4 予言
YouTuber風。
礼華 あれ、もう撮ってる?
ぼく うん。
礼華 はいどうも。おはようからおやすみまで、暮らしを見つめるライカです。今回予言するのは、 巷を騒がせている怪人についてです。これまでの出現場所、出現周期、目撃証言や私の第六感から独自予想してみました。その場所とは、なんと!塩川埠頭周辺です!
ここで「個人の見解です」とテロップが出る、と。ちゃんと入れてね。
ぼく わかった。
礼華多分近いうちに、もっと言えば明日の深夜のことになるでしょう、近隣住民は、くれぐれも気をつけてください。では、次の動画でお会いしましょう。さようなら。
ぼく カーット。
礼華 まだ撮ってるんでしょ?
ぼく まあね。
礼華 この預言当たってたら、また有名になっちゃうかな。
ぼく 多分預言云々は、あんまり関係ないけどね。
礼華 そうかな、そんなことないと思うけど。
ぼく 女目当てが多すぎる。預言を本当だと思ってるやつは、極一部しかいない。
礼華 だからこそ、だよ。実力で証明すればいい。
ぼく そんなこと言ってる時に限って外すじゃん。
礼華 大丈夫、考えはある。
scene5 友人
教室。窓から空を映しながら話す。
智也 何してんの?
ぼく 特に何も。
智也 何もってことはないだろ、いつもスマホばっか見てさぁ。
ぼく 記録、してるんだよ。
智也 記録?何を?
ぼく 見たものとか、感動したこととか。
智也 そんなことして、何になるんだ?
ぼく 死んでしまうから、かな。遺書を書き続けてるんだ。
智也 遺書、ねぇ。死ぬなよ。
ぼく わからないよ、いつ死ぬかなんて。現にこの前だって、罪のない誰かが惨殺された。
智也 罪のない誰か、か。確かにそうだな。でも、それじゃお前は映ってないよな。
ぼく 被写体になれるほどの、大した僕じゃない。
智也 まあ、うん。
ぼく 否定しないんだね。
智也 気休めは、嫌いなんだ。言うのも、言われるのも。
ぼく 気が休まって、何が悪いの?
智也 気休めの言葉じゃ、誰も救えない。そう思い知らされた。
ぼく 何か、あったの?
智也 俺、人殺したことあるんだ。
ぼく 嘘だね。
智也 なぜ、そう思う。
ぼく 勘。そういうこと言うやつに限って、蓋を開ければ「あいつは俺のせいで死んだ」の類なんだ。
智也 よくわかったな、そんな感じだよ。どこかの誰かを見殺しにした、俺は人殺しだ。
ぼく よくわかんないけど、しょうがないんじゃないかな。
智也 わかってはいるんだが、俺なんにも出来ねぇなって。惨劇を前にして、見てることしかできなかった。あれも、怪人の仕業なんて言われてたっけ。
ぼく そう、なんだ。
智也 なんて、嘘だよ。
向きを変える。
ぼく ‥‥あのさ。
智也 なんだ?
ぼく もし、怪人が次に出る場所がわかるとしたら、どうする。
智也 まあ、どうにかしたいとは思う。
ぼく これ、見て。
scene6 凶行
暗い屋外。港かどこか。
智也 結局、警察は取り合ってくれなかったな。
ぼく しょうがないよ、一介の高校生の戯言を信じる方がどうかしてる。
智也 本当に、出るんだろうな。
ぼく ああ、多分間違いない。
智也 どっちだよ。
ぼく うまくいけば、凄いものが撮れるかもしれない。怪人の正体なんて、センセーショナルでしょ。
智也 そこで何が起きても、撮るだけなのか?
ぼく わからない、でもきっとそうだと思う。僕にできるのはそれだけだから。
智也 そう、か。役に立つかはわからんが、武器を持ってきた。見つからないとは限らないんだ、持っとけ。
ぼく ありがとう。
礼華 (悲鳴)
ぼく あの声、礼華?
智也 警察、あと救急車も呼ばないと。
ぼく ‥‥行ってくる。
智也 お前、何を。
ぼく 待ってたらきっと間に合わない。
智也 気持ちはわかるが、お前が死ぬかもしれないんだぞ。
ぼく それでも、見殺しよりはずっといい。
智也 危ないだろ、やめろ。
ぼく 立場が変わったらこれか。
智也 あの時とは事情が違う。
ぼく 僕だってそうだよ。礼華だったかもしれないんだ。
智也 礼華?それより、お前の命だ。
ぼく ああそうだろうな、礼華とは面識ないもんな。
智也 そういうことじゃないだろ。
ぼく じゃあどういうことだよ。
智也 ‥‥わかった。死ぬなよ。
ぼく ああ。
ぼく、携帯をポケットに入れて走り、倒れている礼華を見つける。
ぼく まだ‥‥息がある‥‥。
サイレンの音。
scene7 告白
youtuber風。
礼華 はいどうも。おはようからおやすみまで、暮らしを見つめるライカです。今日は、あの事件の被害者として声明を出します。私は、危険に晒されました。私は預言しましたが、大人達は信じてくれませんでした。だから、私に何ができるかは分かりませんが、それでも、行くしかないと考えました。怪我はしましたが、後悔はしていません。こうして、多くの人に危機感を持っていただけたのですから。危険だとしても、私は預言を続けます。私の力で、誰かを救えるかもしれないから。次に現れるのは三日後の深夜、玄鐘通り。よく理解し、正しい選択をしていただけることを期待しています。それではまた、次の動画でお会いしましょう。さようなら。
ぼく カーット。
礼華 これは、伸びる。
ぼく 本当、礼華はすごいよ。不幸も動画のネタに変えちゃうんだから。
礼華 計算通りだけどね。
ぼく あそこで襲われることも、ってこと?
礼華 まあ、うん。
ぼく 怪我は、もう大丈夫なの?
礼華 苦労したよ、それっぽく傷つけるのは。
ぼく え?
礼華 まだわからないの?怪人は、現れなかった。
ぼく でも、それって、
礼華 いいよ、誰も聞いてないでしょ。
ぼく そうじゃなくて、まだ撮ってるけど。
礼華 消して。
この辺でカメラが下を向く。
ぼく そしたら、僕も共犯者になる。
礼華 お願い、何でもするから。
ぼく じゃあ、こんなこともうやめてよ。
礼華 でも、そしたら、私は、どうなるの。
ぼく チヤホヤされたくて、預言してたの?誰かを救うんじゃなかったの?
礼華 私なんかには、誰も救えないよ。
ぼく そんなこと、ないんじゃないかな。
礼華 あるよ。
ぼく でも。
礼華 ‥‥。
ぼく ‥‥わかった、消すよ。
礼華 消して、くれるの?
ぼく 今までのも、チャンネルも全部。全部、終わりにしよう。
礼華 なんで?
ぼく だって、そうでもしないとさ。
scene8 最期
街を歩いている。
ぼく 預言の日、預言の場所。何か起こる様子はない。
怪しげな男にフォーカスする。
男、刃を取り出す。
ぼく 危ない!
ぼく、走って男を阻む。刺さる。スマホを落とす。
ぼく そうか、全ては、悪意、だったんだ。彼女は、それに、敏感、だったんだよ。だから、呑まれた。
男 何言ってやがる、イカれてんのか。
ぼく ヒーローも、怪人も、いないんだ。だけどさ、
人が倒れる音。ざわめき。サイレン。
音が止む。
(以下、画面上に文字が出る)
「悪意が敏感で、預言がユーチューブ?よくわかんねえよ」
「通り魔を止めようとして入院とか、無茶しやがって」
「一人を救おうとして死んでも、偉くなんかねえからな」
「とにかく、生きてて良かったよ」