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じゃんけん




廃校の一階にはマーガレットとクオン、二階にはシイロとライア、三階にはアイシャの寝室がある。


香に廃墟の案内をする上で、それぞれの寝室がある階の紹介は、そこに寝泊まりしている人物がやることになった。つまり、一階はマーガレットとクオンが、二階はシイロとライアが、三階はアイシャが担当することになる。


そしてその順番はじゃんけんに委ねられることとなった。



「よーしいくぞー!」

「ぜったいに勝つ!」


じゃんけんに出場するのはマーガレットとシイロとアイシャだ。二人グループからは話し合いの末、シイロとマーガレットが選出された。


じゃんけんで勝った人のグループが好きな順番を選べる。勝ち抜き形式で順番を決めていく形だ。


シイロは考える。この紹介、一番最後のグループをとった方が有利だ、と。シイロが以前読んだ本の中に人間は一番直近の記憶の方が鮮明で、同時にそれの評価も高くなるということが書いてあった。そして今回の部屋決めにおいてはより良いイメージを抱かせたほうが良い。ならば、シイロが狙うのは三番目、一番最後のグループだ。


マーガレットの掛け声に、シイロとアイシャが身構える。


香はそのやけに白熱したじゃんけんを呆けた表情で見ていた。なぜこんなにじゃんけんに熱くなっているのか分からなかった。みんなじゃんけん好きすぎるでしょ、と思っていた。


対してアイシャは腕を交差させながら頭をかかえるようなポーズをとった。顔の半分が腕で隠れ、腕の隙間から目を出すことになる。


アイシャは今日は目の前に香がいるので少し気合が入っていた。本人はこれがかっこ良いと思っているのだ。本人以外の女性陣の評価は微妙だが。


しかし香は割と好印象を持っていた。痛い子ながらもアイシャは紫髪のツインテールの良く似合う美少女である。その美少女が中二病という幼さを隠せない病を患っているのだ。かわいい、というのが本音だった。あくまでも痛い子枠だが。


そしてそのポーズのままアイシャは自信満々に言う。


「我はパーをだす!」


アイシャは考えた末、自分の出す手を言い相手に揺さぶりをかける作戦に出た。


そしてアイシャは思考する。


自分がパーを出すと言ったならば、グーは出しずらい。ということは、グーに負けない手を出せば良い。そしてグーに負けず、かつ相手がパーを倒すために出してくるチョキにも勝てる手、グーが最強である。私はグーを出す! とアイシャは考えた。



対してシイロはその一言に思考の海に沈む。


アイシャは何を考えている!?


宣言し、揺さぶりをかける方法は一対一、タイマンのときにこそ輝く。しかし多数でやるときは全員の思考が同じになるとは限らない。私とマーガレットという別のタイプがいるならばなおさらだ。つまりあいこになることや予想できない不確定要素が多く、あまり良い手だとは言えない。


こっちに少しばかりの情報を与えてしまうことになることにもなるからだ。


アイシャはパーを出すと言った。ならばこちらとしては、アイシャがそのまま裏をかいてパーをだすことを予想し、チョキを出したい。しかし、それをアイシャが読んでグーを出してくるかもしれない。ならばこちらはパーを出せば良い。パーならばアイシャが裏をかいてパーをそのまま出してきたときもあいこにできる。先ほど情報を得られると思ったが、実際は違った。相手の読みの深さが分からないので結局意味がない。


シイロは歯噛みする。


パーが一見最善手だ。しかしこれを読まれていたら…。


いけない。思考がループしてしまう。どうすればよい?


シイロはふとマーガレットの方を見る。


これは一対一のじゃんけんではない! 不意にシイロはひらめく。


一対一で無いということはアイシャの手を読み切らなくても、マーガレットに勝てればよい! マーガレットに勝っていれば、アイシャがどんな手を出しても、私の一人勝ちか、アイシャとの決戦にもつれ込むか、全員違う手によるあいこになる。負けることは無い。


つまりマーガレットの手を読めればよい。


シイロは考える。


マーガレットはアイシャよりも単純だ。ということは、チョキを出すに決まっている!!


シイロは少しばかりマーガレットの知力を甘く見ていた。


故にシイロはグーを出すことを選択する。また、これはアイシャがこちらはグーを出しずらいと思っているだろうからこそ選択した一手でもあった。


結果は、シイロがグー、アイシャがグー、マーガレットがパーだった。


マーガレットの一人勝ちだ。


「やったー!」

「なん…だと」

「まけた」


三者三様にリアクションをとる。マーガレットは喜びはねる。


対してアイシャとシイロは苦い思いを味わっていた。格好つけて相手の手を読んでみたは良いが、ことごとく予想を外してしまったからだ。


「へっへー! アタシはアイシャがパーを出すって言ったから、これはパーを出すしかないなって思ったんだよ」

「予想ですらなかった」

「勘だよねそれ。まあ勝ったなら良いけど」


ライアとクオンがそれぞれツっこむ。


マーガレットは誇らしげに自分の予想を話す。いや、予想でもなかったが。しかしシイロとアイシャにそれを指摘することはできない。敗者は敗者なのである。


「じゃあアタシは一番初めを選ぶぜ!!」

「分かった」

「な!」


マーガレットは順番を宣言する。シイロは内心ガッツポーズを決める。そうだ。なにしも皆が最後狙いというわけでは無い。


その後またしても宣言をしてきたアイシャに対して普通にシイロは勝利し、無事三番目を勝ち取った。


アイシャは恥ずかしさやくやしさを精一杯こらえて、遠い目で「まあこういうときもあるよな」と言っていた。さすがに宣言しておいて全部負けるのは恥ずかしいようだ。






「よーしっじゃあ一階の案内を始めるぞ」

「よろしくね」


香は初めにじゃんけんの勝者、マーガレットとクオンに一階の案内を受けることになった。


さっきのじゃんけんはこの順番を決めるためのものだったのだろう。香は納得する。


それと同時にあることを確信する。


シイロ、マーガレット、クオン、ライア、アイシャ全員は自分に好意を抱いている。


なぜならばマーガレットはじゃんけんに勝ったことのみでガッツポーズを決めていたし、そもそもじゃんけんにこんな白熱することもおかしい。食事中女性陣はずっと香の方をチラチラと見ているし、クオンと二人っきりのときはクオンの鼻息が荒かった。


これらから察するに、自分はやけに皆に好かれている、としか言いようがない。


思い返してみれば、見ず知らずの自分の正体を確認するまでもなく拠点に招き入れたこと、やけに熱のこもった目で見られることなど、思い当たる節はいくらでもある。


ならばなぜか? それは僕が男だからだろう。今までこの世界に来てから男を一人も見ていないのはおかしいし、彼女らと違うことと言えばそれしか思いつかない。そういえば獣人に連れていかれそうになったときも同じような結論を出した気がする。忘れていた。


突然飛ばされた異世界。


男女比が偏っていて、男があまりおらず、男というだけでモテる。


超能力のようなものが存在し、世界は荒廃している。




…最高じゃないか。


香は即座に結論を出す。ただ男というだけでモテまくり、相手は美少女しかいない。これを最高と言わずして何と言おう!? 


香は興奮しながら思う。


ああ自分は最高な世界に来たんだ。そして最高のハーレム生活を始めていこう! と。



香は目の前の女性二人を見据える。一瞬マーガレットが目をそらしたのを香は見逃さなかった。やはり自分は好かれている、と香は思う。


「よろしくお願いします」


香は黒い笑顔でマーガレットとクオンに言葉を返す。










どうしてこうなった…


初めはすぐに紹介に入る予定だったんだよ。しかもじゃんけんのくだりを書き始めたは良いけど途中で飽きるってどういうことよ…


一体どうしてこうなった…


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