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第六幕 核心

「……なんて言うか……やっぱり捕盗庁ポドチョン茶母タモなんだな、お前」

 自室(正確に言えば自室ではないのだが)へ戻って、室内に二人きりになると、上座に座った桂城君が感嘆しきりに漏らした。

「どういう意味でしょう」

「いや……ユクファに比べて気が強いっていうか」

「それはどうでしょう。あの子も中々にお転婆な一面があったそうじゃないですか」

「例えば?」

「柿を採ろうとして、木に登ったはいいけど、降りられなくなったことがあったと、カン尚宮サングン様に伺いましたよ」

「あー、あれね……」

 どうやら、桂城君にも思い当たるものがあるらしい。その美貌に、何とも言えない微苦笑が浮かぶ。

「それはそうと、内医院ネイウォンのほうは、その日誌を付けたキム・ビガンに当たるとして……水刺間スラッカンのほうはどう致しましょう」

「んー……直球で訊ければ一番早いんだけどな」

 言いながら、桂城君が、手にしていた包みを開く。

 ソルファは、その中からもう一度、水刺間の業務日誌を手に取った。

「とにかく、一日の記述が長いですよね、水刺間って」

 パラパラと、紙をめくる乾いた音が、室内に落ちる。

「まあ、仕方ないさ。小さい奴はまだこの景福宮キョンボックンにいるし、父上と王妃様や側室の料理を一手に担ってんだからな」

「小さい……って?」

「腹違いの弟とか妹。まだ結婚が決まってない奴は、父上も手元から離したくないらしいし……一番下の妹はまだ二歳だしな」

 冊子を、開くともなしに開いた桂城君は、頬杖を突いて苦笑を浮かべる。

「あの……そう言えば、ご側室って全部で何人いらっしゃるかご存じですか?」

「んー……」

 瞬時、考え込んだ桂城君は、「十四人だったと思うけど」と言った。

「子供がいないのも含めてな」

 目眩がした。

 つまり、容疑者は十四人もいることになる。いくら何でも、絞りきれない。

「どした?」

「ああ、いえ……全員に聞き込みしないといけないのかと思ったら、ちょっと」

「まあ、聞き込みも簡単じゃねぇよなー。女官からしてさっき言ったような有様だったし」

「あの……じゃあ、チョン貴人クィイン様とオム貴人様ってどんな方か、ご存じですか?」

「チョン貴人とオム貴人?」

 鸚鵡返しに問うた桂城君に、一つ頷く。

「んー……そうだなー……俺の主観で構わないか?」

「お願いします」

「できれば近づきたくねぇ感じ」

 あっさり言われて、ソルファは呆れたように目を細めた。

「……もうちょっと具体的に」

 すると、桂城君は、立てた膝に肘を突いて、ソルファをのぞき込むようにしながら、言葉を継いだ。

「ただの勘だよ。実際に彼女たちと話をしたことは一度もないからな。けど、多分ソリは合わない気がする」

「左様ですか。他に、お二人のことでご存じのことはありませんか?」

 話を戻すと、彼は「うーん」と唸って、考え込むように天井へ視線を向ける。

「あとは、お祖母様と仲がいい、くらいのコトしか知らねえよ」

「……お祖母様って……大妃テビ様ですか?」

 ソルファは、眉根を寄せた。ここでも、また“大妃”か。

 宮中入りしてから、何かとその名を耳にするのは、なぜだろう。

「ああ。って言っても、知っての通り、俺はほとんど宮殿にはいなかったからな。たまに宴とかで父上がわざわざご招待くださった時は顔見せに戻ってたけど……あの二人は、割としょっちゅうお祖母様の席に挨拶に行ってたからそう思っただけだ。本当のところは分かんねぇ」

 お手上げ、というように桂城君は肩を竦める。

「じゃあ、あの……ホン昭容ソヨン様のコトは?」

「右に同じ。顔見たことある、ってぐらいしか彼女についての知識はない。先代の王妃様がちょっとぶっ飛んでたんでな。緊急避難的に皆離宮の昌徳宮チャンドックンに行ったり、母親の実家に行ったりしてて、兄弟姉妹きょうだい間の交流も密じゃねぇんだ」

「そう……なんですか」

「そうなの。だから、他の王子王女に訊いても、大体答えは同じだと思うぜ。知ってるのは、皆自分の母親くらいだ」

「何か……寂しいですね」

「え?」

「あっ、いえっ……申し訳ございません。忘れてください」

 慌てて胸の前で手を振り、誤魔化すように手にした日誌に視線を落とす。

 王室とは言え、他人の家庭のことには違いない。踏み込むようなことが、思わず口から出たのは、全くの失言だった。

(だけど……)

 ふと、兄を思う。

 兄のチオンは、ユクファ、ソルファ姉妹と違って、父の正妻の子だ。つまり、異母兄妹になる訳だが、互いの存在を知ってからは親しく交流してきた。

 兄は、ソルファ達をとても可愛がってくれる。それは、両班の家の異母兄妹としては、ごく稀な例だろう。

 通常、両班宅の妾と言えば、大体はその家の私婢サヒ〔個人所有の女奴隷〕であることが多い。そして私奴婢サノビは、その家の財産であって、人ではない。

 人でない者から生まれた子供もまた人ではないという意識が、両班の中にはあるから、父親が同じでも、正室の子は妾の子を蔑むのが普通だ。

(それでも、あたし達兄妹は、当たり前みたいに家族として思い合ってるのに……王室って寂しいところね)

 そう脳裏で呟いたのが、聞こえたのか何なのか、桂城君は追及の手を緩めなかった。

「何が寂しいって?」

「いえ、別に」

「言い掛けてやめられたら、気になるだろ」

「気になるって……そもそも桂城君様はユクファにしか興味がないんでしょ。同じ顔で同じ声でもあたしは別人ですから、お間違いなく!」

 語尾が、自分で思うよりもきつく響いて、一瞬ドキッとする。

 思わず顔を上げて見た桂城君の表情は、ひどく傷ついて見えた。

 目のやり場に困って、下げた視線の先にあったのは、手にしたままの調理日誌だ。

 誰に供した献立かは分からないが、毒味係の尚宮の名前が記されているのが目に留まる。

「あっ……」

 不意に思い付いて、素早く日誌をめくった。

 最初の被害者の毒味係を調べれば、と思ったのだが、パク・ダヨンの亡くなった日の毒味係の尚宮の欄には何も書かれていない。

「嘘……」

「何だ?」

 桂城君の声音は、先刻の傷心を引きずっていないように聞こえた。しかし、ソルファは取り敢えず無視して、次の被害者の亡くなった日付を探す。

 王の毒味係の欄は、やはり未記入だった。

「何で……」

「何か分かったのか」

「これ、見てください」

 桂城君に、第二の被害者と王の夜食の毒味係を記す欄を示す。

「他の日はすべて、毒味係の名が記されています。毒味係も、きっと当番制なんでしょうね。でも」

「……書かれてない。毒味係は一日変わらないみてぇだけど……」

 桂城君が、素早く他の日誌を開く。

「ユクファが死んだ日も、第四の被害者の日も……狙ったみたいに毒味係の名前が抜け落ちてる!」

「でも、あとで調べたらこうやってバレるのに、何でわざわざ空欄にしたんでしょう」

「バレたからって調べようがねぇからさ。勿論、どの部署も王室のものだから、日誌なんて門外不出だけど、万が一を考えたんだろうぜ」

「行きましょう」

 言うなり、ソルファは立ち上がった。

「どうする気だ」

 続いて立ち上がりながら、桂城君が問う。

「あまり時間がありません。桂城君様は、内医院からキム・ビガン医員を引っ張って来てください」

「引っ張るのは構わねえが、どこにだよ。それに、時間がないってどういう意味だ?」

 ソルファは、覚えず微苦笑した。

「先刻、あたしは派手に殿下とぶつかってしまいましたからね。喧嘩吹っ掛けるのも本意じゃなかったんですけど」

 さっきはつい、頭に血が上って、相手が国王だということも忘れて、言いたいことを言ってしまった。

 けれども、冷静に考えれば、王にもの申したのだ。しかも、仮の姿とはいえ、女官の身分で。

(女官ならまだマシかも。本当のあたしは、捕盗庁の茶母だもん)

 茶母は通常、官公庁所属の女奴隷である、官婢クァンヒが就く仕事だ。

 養父が、身分低くとも両班である以上、ソルファが今その職に就いているのは、はっきり言えば異常なことだ。

 しかし、実状がどうあれ、茶母として仕事をする限り、この国では底辺の身分であることに変わりはない。

 その底辺の、人でさえないような自分が、国の王という、神にも等しい存在に刃向かったのである。

「どうにかして、今日中に蹴りを付けます。ああは申しましたが、殿下が本当にお召しを断念してくださるかは、何とも言えませんし」

「まあ、詰めようと思えば詰められそうだけどな……調査始まったばっかじゃん」

「そりゃ、あたしだってもう少しいるつもりでしたよ。でも、まさかあんなに早く殿下が、夜のお召しを言い出すなるなんて思ってなかったですもん」

 病み上がりの女捕まえて、いきなり床入り迫るとか、バカなのか。

 といったことは、流石に口には出さなかった。が、桂城君は、敏感に察したらしい。

「好色なおやじが、迷惑掛けるな」

「……ホント、口悪いですね、桂城君様も」

「悪いが、これが地だ。じゃ、ちょっと行ってくる。どこに引っ張ればいい?」

「では、取り敢えずこちらへ。最終的な所については、女官を連絡に寄越します」

「分かった」

 踵を返し掛けた桂城君は、チラとこちらへ視線を投げると、「気をつけろよ」と短く付け足した。

「……はい」

 気遣うような言葉に、思わず呆気にとられて、返事が少し遅れる。しかし、彼はもうそれには頓着せずに、部屋を出ていった。


***


 桂城君の背を見送ったあと、ソルファもまたチマを絡げる。

 今日一日――今日中に何としても、勝負を決めなければならない。

「アン尚宮!」

 大声で呼ばわりながら、部屋の外へ出る。

「アン尚宮はおるか!?」

「はい、尚宮様。御前に」

 通路の下で、控えていたアンスンが頭を下げた。

提調チェジョ尚宮の元へゆく。案内せよ」

「提調尚宮様……でございますか?」

 提調尚宮とは、全ての女官を統べる、長の地位にある尚宮のことだ。

「そうだ。急ぐのだ。早くせよ」

「は、はいっ!」

 凛と告げたソルファに、頭を下げたアンスンの後ろから声がしたのは、その時だ。

「何故、そのように急ぐのだ」

 顔を上げると、そこには何と王が歩み寄ってきている。

「殿下!?」

 また面倒な時に、と思いつつも、ソルファは沓脱石の上にあった靴に足を突っ込む。

 地面へ降り立ち、王の手前で会釈するように辞儀をした。

「これは、殿下。こちらへは何用でございましょう」

「何用はないであろう。そなたの不満を解消しに参ったというのに」

 は? と思わず言い掛けて、ソルファは危うく、一瞬口を閉じる。

「あの、それはどういう意味でしょう」

「明日、そなたに淑媛スグォンの宣旨を下すこととした」

「はい?」

「早く側室になりたいのなら、そのように申すがいい。わざとつれなくしなくとも、余はそなたの願いなら、何でも叶えてやるぞ?」

 訳が分からない。なぜ、いきなりそのような話になるのか。

「ただし、桂城君と添うことと、自死すること以外ならな」

 ボソリと耳元に落とされ、ソルファは目を見開いた。

 しかし、顔を伏せていた為、王にはソルファの表情の変移は分からない。

「そなたも、覚悟を決めた筈ではないか。何故そう、余の気を引く為に危ない橋を渡ろうとするのだ」

「……殿下」

「よいな。そのように、王妃にも伝えておく。抜かりなく準備を進めよ。よいな、アン尚宮」

「は、はい、殿下」

 アンスンは、無論、王には逆らえないのか、従順に返事をする。

「分かったら、すぐに部屋を移る支度に掛かるのだ。今日一日、私室から出ることは許さぬ。今宵は、余がこちらへ参るとしよう」

(……何なの、この男)

 唐衣の下で組んだ手に、思わず力が籠もる。

 同時に、承恩スンウン尚宮に昇格したことを伝えてくれた時のユクファの顔が浮かんだ。

(……嫌だったのね、ユクファ)

 姉もまた、桂城君を愛していたのだ。心底、慕っていたのだ。だのに、王に気に入られ、寝所に召された。

 自死も禁じられ、思いの宛のない男と床を共にすることに、どれだけ苦痛を感じていただろう。

 承恩尚宮として召された為にユクファが死んだのなら、姉の死の原因は、目の前の男にもある。

「……でしたら、殿下」

「何だ」

「一緒に来ていただけますか」

「どういう意味だ」

「これから、わたくしを含む承恩尚宮を害した者を、捕らえに参ります」

「何?」

「殿下に来ていただければ、解決が早うございます。おいでくださいませ」

「そなたはいったい」

「罰がありましたら、これが済んでからいくらでも甘んじて受けます。ですから、殿下がご案内くださいませ。提調尚宮の元へ」

 ソルファは、頭を上げ、毅然と王を見据えた。

(責任をとって)

 叫び出しそうになるのを、理性を総動員して堪える。

(ユクファが死んだのは、あんたの所為でもあるのよ。責任をとって)

「そなたはまさか……提調尚宮が毒を盛ったと、そう言いたいのか」

「いいえ、そうではございません。ですが、何らかの事情はご存じでしょう。アン尚宮」

「はい、尚宮様」

「部屋の中に散らばっている書物の中から、水刺間の業務日誌を取ってきて」

「はい?」

「急いで」

「は、はい」

 アンスンが、室内から日誌を持ってくるのを待つ間に、ソルファはここへ残る女官に、桂城君への伝言を頼んで、王を促した。


***


「これは、殿下。それにチョン尚宮様まで……いったい、どういった御用向きでしょう」

 部屋を訪ねると、提調尚宮こと、ク・スクジンは、恐縮しきりで地面へ降り、頭を下げる。

 ソルファは、前置き抜きに、日誌の中の一冊を突きつけた。

「チョン尚宮様?」

「わたくしが倒れたその日の記録がある、水刺間の業務日誌だ。この日の毒味係の名が、なぜか未記入でな。そなたなら、理由を知っているのではないか?」

 スクジンは、頭を下げたままだった。しかし、ソルファより大柄な彼女の顔は、ソルファからは丸見えだ。

 唇を口腔へ巻き込むように噛みしめ、目をウロウロと落ち着きなく左右へ動かしている。

「どうなのだ。殿下の御前であるぞ。早く答えよ」

「それは……」

「先に申しておく。嘘偽り誤魔化しは要らぬ。一つ嘘を吐けば、その嘘を守る為に更なる偽りを申さねばならなくなるぞ。殿下の御前で、醜態を演じるのが嫌なら、最初から正直に申せ」

「尚宮様」

「何だ」

「は?」

「そなた達は、困ったら相手の名を呼ぶ。それは誤魔化しだ。必要ないと言ったのに、早速実行か。耳が遠くなったのなら、早々に後進へ道を譲るがいい」

 再度、『尚宮様』と言いそうになったのか、口を開いた彼女は、空気を呑むように口を閉じた。

「もう一度訊くぞ。この日の毒味係の名が記入されていないのは、単なる記入漏れか?」

「……左様でございます」

「では、もう一つ訊こう。他の三人の承恩尚宮が亡くなった日も、それぞれ毒味係が未記入だった。他の日には、記入漏れなどないのに、だ」

 クス、と嘲るように笑うと、王には見えていない角度に俯いた顔の中で、目だけがこちらを射抜くように見据えた。

 しかし、その程度の睨みにビビるほど、ソルファも潜った修羅場の数は少なくない。

「どうなのだ」

 問いを発したのは、王だった。

「正直に申せ。何か知っておるのか?」

「殿下」

「当日の毒味役を教えてくれるだけでよい」

 王の質問を、ソルファが引き取る。

「チョン尚宮」

「殿下はしばし、ご静観を」

 黙ってろ、クソおやじ。と言いたいのをぐっと我慢して、辛うじて丁寧に黙らせる。

「……提調尚宮」

「はい、尚宮様」

「悪くない取引だと思うがな」

「は?」

「そなたは、うっかりこの四日分の毒味役の名前を、わたくしの前で呟いた。その独り言を、わたくしが偶然聞いただけだ。たったそれだけで、そなたはその地位も名誉も守れる。高くない相談であろう?」

 それは無理がある、という空気がその場に(スクジン本人からも発せられて)満ちるが、ソルファは構わずスクジンを見据えた。

「チョン尚宮」

 直後、後ろから桂城君の声が掛かる。

 全員が振り返ると同時に、地面の空いた場所へ、人が一人放り投げられた。

 うわっ、と悲鳴を上げて転がったのは、服装からすると薬剤庫の下級役人に見える。

「桂城君様」

「この男が、キム・ビガンだ。この者が、全て吐いたぞ」

 父王と女官がいる前なので、桂城君はしっかり王子様ぶりっこしている。

「私に申したことを、もう一度申してみよ。父上の御前でだ」

「ヒッ……わ、わたくしはただ、提調尚宮様に従っただけです! 所詮、承恩尚宮程度の死因を、くどくどしく書き立てることはない、と仰って……」

「それだけか?」

「い、言う通りにすれば、伝を頼って医官に取り立てていただけると」

 男――キム・ビガンの言葉が途切れると同時に、スクジンに冷ややかな視線が集中する。

「……何か、申し開きしたいことはあるか」

 王が、厳かに口を開くと、スクジンは遂にその場に膝を折った。

「お許しください、殿下! わたくしは……いえ、三人の亡くなられた承恩尚宮様、及びチョン尚宮様がお倒れになった夜食の毒味係は、コン・ジユ尚宮でございます! ただ、それを日誌に記さぬように水刺間の筆頭尚宮へ指示せよと仰せつかっただけでございます!! それ以上のことは、わたくしは存じません!! 誓って、本当でございます!!」

「仰せつかったって……誰に?」

 ソルファは、うっかり素の口調で問い質した。

「“仰せつかった”って言ったよね。提調尚宮様に“仰せつける”ことができるような人間は多くないわ。まさか、王妃様か……」

「いいえ! 王妃様ではありません!!」

「王妃でなければ、誰だ! まさか」

 消去法で行けば、全ての女官を統べる長である提調尚宮より上は、王妃以外には一人しかいない。

「お許しください! これ以上はどうか……どうか、わたくしを殺してくださいませ、殿下!!」

 必死に頭を地面へ擦り付ける彼女の、悲鳴のような懇願が、後宮の庭先に響いた。


©️和倉 眞吹2018

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