ボルト1
目の前、というより周りが銀世界。ただの銀世界で雪しかなければまだ綺麗なものだったのだが、残念ながら今日は昼から大雨。
「今朝は雲一つない晴天だったのになぁ…」
と空を仰いだ。
雪に埋もれていた時計、時は先程刻み終え年月日と時刻は2xxx年12月24日12時34分13秒と液晶に消えかけの字で並んでいる。
「今夜はクリスマスか…鹿とおっさんが家と家族を届けてくれるならクリスマスってのもそう悪くないんだろうな」
独り言を呟いて雪をかき分け歩く。
ドーン パラパラパラ
「たーまやーーーじゃないか。」
花火の音ではない。そんな気分が上がるような物ではなく、答えは敵兵のミサイルが爆散する音だ。
「あ~くっそ…近くかよ…」
歩く足を早め焦げた木の森を無我夢中で走る。遠くから聞こえてくる女の金切り声。敵は女子供、降伏した兵も関係無く処刑。
足を止めれば殺される。
「はぁ、はぁ…」
…走っている内に何も聞こえなくなった、誰かの声も雨の音も。雪もさっき居た場所より少なく突然春になったように。
「ここは、どこなんだ?」
周りは緑一面に少し雪が積もり、頭上の太陽に照らされダイヤを適当に撒いたような美しい光景。遠くには大きな小屋があり錆びて柱と屋根しかない。
近くの小さな池に何故かヘルメットが浮かんでいる…横には…敵兵の戦機体!
「マジかよ、1番遭遇したくない奴に会っち待ったな」
しかしよく見ると所々錆びたり左腕が無かったりとボロボロで動く気配も人の気配も無い。
動かないからと興味本位で近づいた。
「なんだよ、動かねぇじゃん…驚いて損したわ。……とすると、あのヘルメットは搭乗者のか」
池に浮かぶヘルメットに手を伸ばして捕まえた。
カチッ
「なっ…」
ピピピピ
「まさか!」
「声紋認証、不一致。エラーコードs1224、敵と判断します」キュイーン
自分の足元にレーザーの点が出る。
「対象ロックオン完了…発射。」
バン
嗚呼これで人生終わりか…と思ったのだが全く痛くない
「ん?あ、あれ?死んでない…ん?」
『メリークリスマス、人間さん』
そう書かれた赤い紙が足元に落ちていた。
「…え」
「ゴメンナサイ、ウソデスヨコロシマセンw」
驚き過ぎて声が出ない。機械が話してる事より殺さなかったことに驚いた。
ギギギギ(_・ω・)_バァン
戦機体は俺の方へ倒れ込んできた。戦機体の顔が近づく
「ひっ」
怖い怖い怖い怖い…
「ウデケガシテマスヨ。コレツカッテクダサイ」
(´・ω・)つ
戦機体は腕から救急箱を出し渡してくる。どうやら走ってる最中、枝か何かで左腕を切ったようだ。
「……」
怖くて何も言葉が出ない
「ダイジョウブデスヨ、コワイカモシレナイケドワタシハアナタノコトコロシタリキズツケタリシマセン」
何故か相手は機械なのに、俺は戦機体が一瞬微笑んだ顔をしたように感じた。
「あ、あの、ありがとう…でいいのかな」
「イエイエトウゼンノコト シタダケデス。」
「敵じゃないんだよね?」
「ハイ。テキトイッテイルノハ、ソトデアバレテルヤツラノコトデショウカ?」
見た所レンズが赤で敵に見えたのだが、そうではないらしい。
「ジコショーカイタガイニシマセンカッ!イヤデシタラワタシダケデモシマスケド」
「いいよ、する」
「デハ、ワタシカラ。」
…ツヅイタライイデスネ。