96話:ケンの小説談義〜小説家になろう〜
「そうそう、今日ここに来た本当の目的を忘れてた」
ケン、今更何を言う。
「ヤスの『小説家になろう』への投稿作品を読まないとな!」
「え? ヤス兄、そんなの書いてたの?」
「ほら、以前『円陣戦隊オウエンジャー』って書いてたじゃん? あれのエンディングだけを『小説家になろう』ってサイトに投稿したらしいよ」
「小説家になろう? ケンちゃん、悪いけど知らない」
「サツキはそもそもパソコンに興味ないからな。俺も基本パソコン触らないし。パソコン使うのはウェブで調べものする時くらいだな」
「じゃあなんで『小説家になろう』に投稿したのさ?」
ユッチが聞いて来た。
ユッチは『小説家になろう』を知ってるんだな。
まあ、色々理由があるんだが……。
「んー、うちの学校文芸部ないから、ネット以外に見せれる場がなさそうだった。手軽に投稿できそうなサイトだったからな。評価してもらうんなら、いろんな人に見てもらった方がいいだろ?」
「と言う訳で、早速読むぞ!」
「読まんでいい! 読者数が全然伸びないから、最近放置なんだ!」
……ネタも思いつかんし。
「まあ、いいからいいから、読ませなさい」
「ボクも読ませてよ、ヤス」
「私も読みたい」
くぅ、3対1は卑怯だ。断れん。
「読んでください……」
やっぱ俺、ヘタレだ。
今、パソコンの前に4人で顔をつきだして、俺の投稿したオウエンジャーを読んでいる。
「ヤスってこんなに世の中に不満持ってんの?」
「や、理不尽な事はたくさんあると思うけど、ここまでは思ってないぞ。まあ、政治欄読んでると腹立ってしょうがないけどな」
どっかの党とか。ええ加減さっさと解散しろってんだ。
「はあ、ヤスは『小説家になろう』を分かってないな」
「なんでだ?」
「まず、これを『小説家になろう』に投稿する時点でおかしい」
「だから何でだって聞いてるじゃん」
さっさと教えてくれ。
「いいか、『小説家になろう』は『小説』の投稿サイトだ。『小説』だぞ。確かに『詩』や『エッセイ』も投稿してもいいとは書かれているが、大多数の読者は基本的に『詩』や『エッセイ』はもとめていない」
……確かに『小説家になろう』だもんな。
「『詩』はだから読者数が伸びないのは当たり前なんだ。よっぽど面白いなら知らんけど、それでも『詩』はきつい」
ケンの言う通りかもしれんが……。
「どうやってそれがわかるんだ? もしかして、『詩』の読者数も多いかもしれんだろ!?」
「簡単だ。『小説家になろう』の姉妹サイト『小説を読もう』にアクセスしてみろ」
ふむ、やってみるか。
「アクセスしたな。じゃあ、メニューから、『小説検索』をクリックだ」
ほうほう。ポチッとな。
「よし、んで小説が一覧でばーっと出力されてるだろ。今はこれは『新着順』になっているな。とりあえずこれを『昨日の読者数多い順』に並び替えてみろ」
おし、こうだな。
「上位は何人だ?」
「えーと……8000人超えてんなあ」
すげえなあ。どうやったらこんなに読まれるんだろ?
「まあ、1位は凄い読まれてるからな。とりあえず置いといて、200位くらいを見てみろ。20件ずつ表示されてるから、1、2、3って書かれている所の10をクリックして、一番下の作品が200位だ」
ええと、こう言う事か?
「ふむふむ、201人か」
ってか、ガクンと減るんだな。
「1位と比べたら少ないが、200位でもまだ200人くらいの人が読んでる。それに対し、『ジャンル』を『指定無し』から『詩』にしてみるとすごいぞ」
何が凄いんだ?ケン。
とりあえず、ポチポチと画面を動かす。
「『詩』の1位は何人だ?」
「えっと……22人」
すくなっ! ありえん! 何で『詩』はこんなに読まれないの!?
「わかったか? つまり、『詩』は『小説家になろう』のほとんどの読者は読もうとしないんだ。『詩』で投稿した時点で、読者数は諦めた方がいい。もちろん、そう言うのを読んでくれる人もいるけど、少数だな」
「はぁ、そっか……」
あれだけ頑張って書いたのになあ。
残念だ。
「『小説家になろう』の読者ははっきりとした傾向があるぞ。みんなに読んでもらいたいと思うのなら、自分の書きたい物を書くのではなく、読者に合わせる必要もあるかもしれん」
「ほうほう、どんな傾向があるんだ?」
俺はプロじゃないから、そこまではしたくないけどやっぱり読んで欲しいもんなあ。
「『昨日の読者数多い順』のまま、もう一度『ジャンル』を『指定無し』にして、1位から1個1個見てみな。分かり易すぎだから」
そうなんか? 投稿しかした事無いから知らんかった。
えと……こうだな。
よし、1個1個見てみるか。
「見るのはとりあえず『ジャンル』だけでいいぞ」
了解。えっと……。
1位のジャンル:ファンタジー
2位のジャンル:ファンタジー
3位のジャンル:ファンタジー
4位のジャンル:ファンタジー
5位のジャンル:ファンタジー
6位のジャンル:ファンタジー
8位のジャンル:ファンタジー
9位のジャンル:ファンタジー
10位のジャンル:ファンタジー
12位のジャンル:ファンタジー
13位のジャンル:ファンタジー
15位のジャンル:ファンタジー
…………はて? これは何だ? ああ、ぬけてる7位、11位、14位は『コメディ』と『恋愛』だ。
「すなわちそう言う事だな。確かにそれら上位の作品は面白いのかもしれん。だが、そんなに偏っているのは読者の傾向としか言いようがない。現在の読者の傾向は、『ファンタジー』を読むと言う事だ。だから、他のジャンルで書いてる人は明らかに不利になるぞ」
なるほど……。
「ついでに面白いページを見せてやろうじゃないか」
なんだそれは?
「『小説を読もう』の上のメニューの部分に『分類から探す』とあるのわかるか?」
ええっと……ああ、これだな。
「それをクリックしてみろ」
ほいほい、ポチッとな。
「そこのページを下にスクロールしてみると……」
スクロール? ああ、下に動かせって事か。
ほいほい。
「『人気のカテゴリ』と『人気のキーワード』がわかってしまうんだな」
おお、すげえ! ちなみに円陣戦隊オウエンジャーの『カテゴリ』は『社会問題』だったんだが……げ、7人しかいねえ!?
「まずはカテゴリ。とりあえず、1000超えの上位を見ると、異世界、架空戦記、性転換、らぶえっち、ファンタジー、恋愛だな」
えと……つまり?
「異世界、架空戦記、ファンタジーは基本的にジャンルは『ファンタジー』もの。性転換、ラブエッチ、恋愛は基本的にジャンルは『恋愛』ものだ」
うわ、読者の傾向丸分かりじゃん!
「『人気のキーワード』も、右隅に『もっと見る』をクリックする事で、何人が検索したか分かるぞ」
そうなのか、えと……これだな。ポチッとな。
「今度の1000超えの上位はハーレム、ラブコメ、最強、異世界迷い込み、異世界召喚だなあ」
……『最強』はいまいちよく分からんがやっぱり『ファンタジー』か『恋愛』なんだな。
「恋愛でも、読者の大半は基本ありえない設定が大好きだぞ。いきなり誰かと同居する事になったり、フラレタ直後に別のかっこいい人から告白受けるとか等々。主人公がモテモテなのに超鈍感、優柔不断というのは、ハーレム系の王道になってるな」
そうなんだあ……。
読者は現実で味わえない事を小説にもとめるんだろうか?
「ついでに『ジャンル』の検索回数とかも分かると面白いのにな。今度要望書でも送ってみよ」
ケン、行動派だな。
「はあ……せっかく頑張って毎日更新とかしてたけど、『詩』じゃどうしようもないなあ」
「ふっ、まだまだだな、ヤス」
何がだ?
「毎日更新では読者数は伸びん! むしろ下げるのだ!」
ほんとかよ?
「おし、じゃあシミュレーション開始だ。ユッチが演技するから」
「へ? ボク?」
今までぼーっとやり取りを見てたユッチにいきなり振るケン。
「おう! よろしく! ……さてさて、ある日、ユッチは『円陣戦隊オウエンジャー』というタイトルを発見しました。そのときの感想を一言」
「え? えーと? 『だっさいタイトル。よくこんなタイトル付けたねこの作者』」
うわ、むかつく!
「まだ2話しか投稿されてないので、もうちょっと投稿されてから読もうかと思ったユッチ」
わざわざ演技をしなくていいぞ、ユッチ。あたふたして面白すぎ。
「3日後、5話まで投稿されてます。さて、読んでみるかとユッチが行動を起こす」
慌ててクリックしてるなあ。
……げ、5話目、『円陣戦隊』じゃなくて『エール戦隊』になってやがる。
「さてさて、ここできちんと文章が書けているかを気にする人は、誤字や脱字、文章の書き方等でミスがあるとそのまま読むのをやめてしまいます」
くぅ、そうなのか?
「しかし、毎日更新だとどうしても推敲の時間がとれません。見直しの時間もとれません」
そうなのだ。本当にとれない。
「まずはそう言った読者を逃します」
な、なるほど……。
「そして、最近部活で忙しくて、全然ネットを見れなかったユッチ。なんとなく『円陣戦隊』を見てみたら、すでに14話まで行ってます」
ふむふむ、しかし……ユッチ、大根役者だな。
「ここで一言」
「え? また? え、えーと……『けっ、こんな進まれちゃ読む気もしねーよ』」
見事な棒読みありがとう、ユッチ。
しかし、やっぱりむかつく。
「そうなのです、毎日更新は一気に進んでしまうから、一時読むのをやめて、読み直そうとした時に読者の読む気がなくなるのです」
なんでデスマス調なんだ? 変だぞ?
「ここで第二の読者を無くします」
さっきから無くしてばかりじゃん。
「さあさあ、どんどん話が進んで、いつの間にか100話到達です」
そんなにいってないけどな。
「ユッチは立場を変えて、今初めて『円陣戦隊オウエンジャー』を発見した事にしましょう」
「ええ!? 何それ? ど、どうすればいいのさ?」
ユッチ、そんなに真面目にせんでもいいぞ、遊びなんだから。
「さあ、100話と言う数字を見て一言」
「あ、う、うーんと……『ながっ! そんなに長いの読む時間もったいないしな、他のよもっと』」
「そうなのです! 長くなればなるほど、後々読むのが大変です! 『小説家になろう』には1000話越えの話があったと思いますが、徹夜してしまいました」
ってケン読んだんかい! ってか1000話超えとかあるんか。
その作者すげえな。
「こうして、毎日更新は徐々に新規読者から読みづらくなって行くのです……第3の読者を失う訳ですね」
なるほど……。
「同じ10万字でも、30話で書いたのと60話で書いたのだと、30話の方が手軽に読める雰囲気があるからな。無理矢理毎日更新せず、不定期に、でも更新頻度は高くが読者アップの方法だな」
「何で不定期?」
定期的だと行かんのか?
「定期的にすると、1回でも更新されなくなった時読者が離れる可能性があるからな。最初から不定期にしとけば読者もその心構えで読んでくれる。また、定期的にすると、リピーターも更新日しか覗いてくれないから、ユニークアクセスが増えにくそうじゃん?」
ああ、不定期にすると『今日は更新されてるかな』ってリピーターが毎日のように覗いてくれる訳だな。
「ま、毎日更新は始めちゃうと大変だからな、頑張れ!」
もう円陣戦隊は不定期になっちゃったけどな。
こんにちは、ルーバランです。
自分の作品の首を絞めるような記述をしましたが、毎日更新は続けますので今後ともよろしくお願いします。
以下、調査結果^^
小説内のジャンルの順位や、カテゴリ、キーワードについては今日調べたわけではないので、変動があるのは了承ください。
そんなに大きく変わってないかと思います。
ちなみに、11月4日に『ユニークアクセス数の多い順』、1位〜100位までのジャンルの合計を調べましたら
ファンタジー 37個
恋愛 23個
ファインフィクション 13個
コメディ 11個
戦記 11個
学園 4個
冒険 1個
となってました。『小説家になろう』ではファンタジー、恋愛系がやっぱりすごく読まれますね。
同様に1位〜100位を『キーワード』や『カテゴリ』で、ファンタジー系、恋愛系が含まれてるもの(例:ジャンルは『コメディー』だけど、カテゴリに『恋愛』が含まれている)というもので分類しましたら、
ファンタジー 45個
恋愛 49個
ファンフィクション 12個
戦記・架空戦記 13個
上記以外 2個
という結果に……。(恋愛ファンタジーなど重複があるので合計100個にはなってません)
ジャンルは『コメディー』でも、ほとんどの作品のカテゴリに『恋愛』か『ファンタジー』が入ってました。
『小説家になろう』に投稿していて、読者数が伸びないと思っている小説家の方、次回作はカテゴリ、キーワード、ジャンルを狙ってみると、伸びるかもしれないです。(保証は出来ません、申し訳ないです)
それではまた。