95話:ユッチとおから
ケンとユッチと俺の3人で家に到着。
……よし、まだサツキは帰って来てないな。
「おし、それでは今日の献立を考えよう。ユッチは料理できるか?」
ケンに聞いてもしょうがない。ケンは全く料理する気がないからな。
「もちろん! 何を隠そう、ボクの趣味は料理だよ!」
「ほほう、それは楽しみだ」
「ヤスとサツキちゃんに今まで食べた事無いようなの食べさせてあげるからね!」
「や、創作料理は普通失敗するんだから。レシピ通り作れ、レシピ通りに」
「ええ? ……しょうがないなあ。で、今日は何を作るつもりなの?」
「んー、鮭のバター焼き、キノコのソテーにでもするつもりだったんだけど、4人分は無い」
「ああ、突然来ちゃったもんね。ごめん」
気にすんな、ケンなんて前もって泊めてくれって頼んだ事なんてほとんどないぞ。
「と言う訳で、野菜多めの鮭のチャンチャン焼きにでもする。鮭は少ないが我慢しろ」
「はいはい、了解。何か手伝う事ある?」
「いや? むしろ手伝うな」
ユッチはユッチで一品料理を作ってくれるのを期待してるんだから。
「なんでだよ!? ボクが手伝うのがそんなにやなのかあ!?」
いや、そんな事は言ってない。鮭のチャンチャン焼きだけじゃ寂しいから、もう一品作って欲しいだけだ。
「ボクの料理を馬鹿にしてるんだな!? そうなんだな!?」
「見た事無いから知らん」
「くそお! ヤスってばいっつもいっつもボクの事馬鹿にしてえ!」
今回は馬鹿にしたつもりは全くないんだが……。
「そんなに自信あるなら、1人で作ってみろ、冷蔵庫にあるやつ何でも使っていいぞ。批判してやるから」
「そこは批判って言う所じゃない! 『感想』とか言えよお!」
「ああ、ごめんごめん。わざと」
「ヤスの馬鹿あ!」
ま、ようやく何か作ってくれる気になったみたいだ。
俺の料理が主菜だから、ちゃんと副菜か汁物あたりを作ってくれると嬉しいが、そこはユッチの気配りに期待しよう。
「ただいまあ、疲れたあ……」
お、サツキが帰って来たな。
俺の料理もちょうど一区切りついた所だ。
「サツキ、お帰り」
「サツキちゃん、お久しぶり!」
「あ、ユッチ先輩じゃないですか!? 何でうちに?」
「サツキちゃんに会いたくなったんだよ!」
あ、そうだったんか?
「ありがとうございます! わあ、妹が出来たみたいです!」
「い、いもうとお!?」
サツキ、ユッチがちっちゃいのは認めるが、一応年上だ。
そこは嘘でもお姉ちゃんって言ってあげようよ。
「ユッチ、料理の方はいいのか?」
「あ、うん。今終わったとこ、ボクの料理を見てびっくりするよ!」
ユッチ! 料理にびっくりはいらん! 奇抜なアイディアは本当に危険だ!
……俺は居間でホットプレートで料理してたから、ユッチの料理がどんなんかまだ見て無いんだ。
まあ、楽しみだな。
『いただきまーす!』
とりあえず、みんなでいただきますだ。
「あ、ボクの料理持ってくるから先に食べてて」
「ほーい」
さてさて、鮭のチャンチャン焼きの出来はどうかな?
……うん、まあまあの出来だな。
この料理は、普段野菜を取りたがらない子供ももりもり食べるおすすめ料理だぞ。
とりあえず、冷蔵庫にある野菜、切ってぶち込めばいいだけだしな。
もやしやキノコ、人参にキャベツ、ピーマン、タマネギにねぎ。
後は……お好きなのどうぞ。 トマトとか入れてもいいけど、どうなっても知らんぞ。
ジャガイモとかアスパラガスとか入れてもあうんじゃないかな。
今回、俺はみそと醤油と砂糖とみりんで味付けしてる。
辛いのが好きな人は豆板醤とか入れてもうまいぞ。
「うん、なかなかだね、ヤス兄。クロちゃんとサキちゃんとで作ったお好み焼きもよかったけど」
「やっぱりホットプレートとか鍋で、みんなでつついたりわいわいしながらつつき合う料理っていいよな。ってかヤスってそう言う料理が多いよな?」
「そうだなあ、食事はみんなで食うもんからな」
そう言う料理は楽ってのもあるんだけどな、実は。
「おまたせ! ちょっとヤス! 持つの手伝って!」
は? ユッチ、何をお前は作ったんだ?
「こぼしちゃうからあ! 早く!」
「っておい! その量はなんだ!!」
「ちょっと意気込みすぎちゃって」
意気込みすぎだ!
どん! とテーブルに置かれたのは、卯の花、ハンバーグ、ほうれん草の白和え、春巻き……。
作りすぎ! というか、ハンバーグとか春巻きって何!? こんな量ほどひき肉無かったよ!?
「どうだあ!? びっくりしたか! ボクの料理『おからづくし』!」
確かにびっくりだ。違う意味で。
おから……確かにたくさん買っといたけどな。
安いし、栄養価は高いし、冷凍保存しとけば意外と持つし。
ああ、あのおから全部使われたのかな? 1月分のつもりだったのに。
「まずは基本の『卯の花』! これはおいしいよね!」
確かにおいしいさ! 1週間に1回は食卓に並んでるぞ! でもそんなに作ってどうする!?
「そして『おからハンバーグ』! 食べごたえあるのにヘルシー! しかも栄養もばっちり!」
そんなに食べたらヘルシーもくそも無いわい!
全部で……15個かあ。
「おからとほうれん草の白和え! 意外とこの組み合わせはあうんだよ!」
お、そのレシピはいただきだな。今度作ってみよ。
「そして、『おから春巻き』! 春巻きの中身はおからとミックスベジタブル! 1個だけトウガラシ入り!」
そう言うロシアンルーレットはやめて! サツキといい、何でそう言うのが好きなのさ!?
「ついでにいま、デザートに『おからクッキー』焼いてるから、楽しみにしててね」
いや、そんなに食えんから。誰が食うんだ?
…………当然ながら、食べきれなかった。
いや、ユッチの趣味が料理という話は本当だったぞ。
全部めっちゃ上手かったし。
ただ、作りすぎだ。とりあえず『おからづくし』は冷めてしまってもおいしかったり、あたため直せばおいしいから冷蔵庫に入れといた。鮭のチャンチャン焼きは今食べた方が確実においしいからな。
……ああ、ちなみにトウガラシ入り春巻きを食ったのは俺だ。
そう言うのが当たる運命なんだろうか? こう言うのは作った本人に当たるべきだ!
ユッチには悪いが、今は食いきれん。明日の俺たちの食事だな。
『ごちそうさまでした!』
うん、わいわいと楽しき食事だった。
相変わらずユッチがいじられてたけど。
こんにちは、ルーバランです。
鮭のチャンチャン焼き、おいしいですよ。
レシピは以下の所から、
http://cookpad.com/recipe/106025
食べてみたいと思ってくれた方、作ってみてください^^
親が料理してるなら、親に頼んでみてください^^
おからづくし、私卯の花大好きです。
母親に毎週リクエストしてたら、他の家族から睨まれました。
おから料理はここからどうぞ
http://www.okara.jp/oishii/oishii2.html
おからはヤス君は言ってる通り、安くて栄養価が高いので、おすすめです。
……1月分も買う必要はないですが。
それでは今後ともよろしくお願いします。