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93話:ヤス、罰を受ける

今日は7月15日火曜日だ。


憂鬱だ、昨日の凄くいい気分がどこかへ吹き飛んでしまったかのように憂鬱だ。

今、4時間目の授業が終わった所だ。


さ、行くか。富士山……。










今日学校へ来たら、当然のごとく職員室へ呼び出された。


昨日の事だよな、そりゃ。

学年主任の前で堂々と帰ったんだから。

頭を延々と下げ続けるつもりだったんだけど、職員室に入ったら何か様子が違う。


学年主任だけが顔を真っ赤にして怒ってた。

気の弱い先生達は『ガンバレ〜』と遠巻きに見てる。


えと……。俺、何かしたか?


「さて、近藤康明。何で呼び出されたか、わかってるよな?」


学年主任が話しかけて来た。


「……ええ、昨日サボった事です」


こ、こわー。


「ま、それもあるんだが……」


他に何かしたっけ?


「昨日、俺にぶつかったな」


……そういや、手に何かぶつけたような気もするが。


「お前のせいで……」


えーと? なんなんだろ?


「俺の趣味が先生全員にばれたじゃないか! 妻にも言ってないのに!」


……。


知らんがな!


いいじゃんか! 趣味ぐらい!!


「……俺の趣味はボードゲームです……これでおあいこですし、ゆるしてもらえますか?」


「そんなわけあるか!」


まあ、そうだろうな。言ってみただけだ。


「……どんな趣味ですか?」


「言えるか!」


そんな恥ずかしい趣味だったのか?


「ぬいぐるみ集めですよねー、センセ」


「室井先生! 言わないでください!」


室井? ああ、ウララ先生か。 ってかウララ先生……そんなはっきりと言わなくても。


「隠す事無いじゃないですか、かわいらしい趣味ですよねー」


まあ、隠すから余計にばれた時いたたまれなくなるんだけど。

……でも、ぬいぐるみ集めは公言したくないな。


「うるさい! 大体昨日も言ったが俺の趣味は本当はそれじゃない!」


「なに言ってるんですか? 写真集まで作ってたのにー、クマのぬいぐるみに猫のぬいぐるみ、他にもたくさんかわいらしかったですよ」


写真集? 

……ああ、昨日俺がぶつけたのってアルバムかなんかかな?


「ああもう! だからちがう! こうなったら全部言ってやる!」


……何を?

そう叫ぶと、学年主任はごそごそと鞄を漁り始めた。

いや、しかし意外と学年主任の先生もフランクだな。

宿泊研修のときの怖さは全くない。


とりだしたのは、ぬいぐるみ。

先生……いくら好きだからって学校まで持ってこなくても。

……しかし、また面白い顔の犬のぬいぐるみだな。


こういうの、サツキが喜びそうだなあ。


「これは自作だ!!」


自作? このぬいぐるみがか?

や、確かに市販されてなさそうな手作り感はあふれてるけど。


えと……つまり?


「俺は……ぬいぐるみ作りが趣味なんだあああっ!!!!なんだあああっ……だあっ……」













……凄いカミングアウトだったなあ。

バスにゆられながら、そのときの職員室の事を思い出す。


180cm越えで、体重も90kgはありそうな体育会系の人が、ぬいぐるみを抱えて編み編みしてる……。

やばいっ……光景を想像したら不気味すぎるっ!!

というか、なんであんないいタイミングでウララ先生は校内放送の電源をオンにしてるんだ!?


……あの瞬間


「ぬいぐるみ作りが趣味なんだああああっ!!!!」


という叫びが校内中に響き渡った。

学年主任の趣味、先生全員だけにしかばれてなかったのに、学校中に広まったんだよな。

学年主任、強面だけじゃなかった。お茶目な一面をかいま見れて楽しい。










今日は早く帰れそうにない事は既にサツキに電話で言ってある。

……まあ、富士山に行く事は伝えてないけど。昨日の事がばれたら気使わせちゃうし。

サツキは今日はクロちゃんの家で夕飯を呼ばれるから気にしないでって言ってた。


どうやら、昨日休んだ人は今日かわりに富士山清掃をするらしい。


俺の他にも何人かちらほらと同じバスに乗ってる。みんな1袋ずつゴミ袋を持ってる。

……俺だけ9袋なのが悲しい。

9袋と言うのは、苦(9)労しろと言う事らしいぞ。96袋最初は渡そうとしてたからなあ。学年主任の先生……

そんなん一日で終わるか!?


あれ? あそこに座ってるやつ……どこかで見た事あるような?

えーと……?


「何だよ? ヤス、人の顔じろじろ見て」


誰? 何で俺の名前知ってるんだ?


「おーい、俺の事覚えてないのか?」


会った事はあると思うんだが……。誰だっけか?


「毎日顔を合わせてるぞ」


えーと? 知らんなあ。


「ほんとに覚えてないのか? ノンキだよノンキ」


えーと……ああ、そういやそんなやついたなあ。

いつ以来だろ?


声も全然聞いた事ないんだけど。


「昨日は偶然風邪引いててさ。今日わざわざかわりに行かなきゃいけなくなったんだ。めんどい」


サツキと下校する為にサボった自分に比べやまともな理由だ。


「富士山ってそんなに汚いんか?」


いや、知らね。


「ってか、でお前、ゴミ袋そんなに持ってんの? ゴミ拾いが趣味とか?」


そんな訳無いだろ!? ペナルティと言うやつだよ。


「お前、一言もしゃべらんなあ。部活中もおんなじやつとしかしゃべったとこ見た事無いけど」


うっさい、人見知りなんじゃ。


「ま、いいや。頑張ってくれ」


お前こそな。

しかし、ノンキってどんなやつかまだよく分からん。




















「何でこんなにゴミがある……?」


マナーを守れ! 汚すぎだ! 特に岩陰に隠しているやつ! 見えないからいいって思ってるんじゃない!


「くぅ……生ゴミとかクサすぎ……涙でそう」


すぐに一袋一杯になったけど、富士山全体のゴミは全然減った気がしない。

とりあえず、ゴミでいっぱいになった袋は脇に置いといて、新たなゴミ袋を取り出す。


……はあ、どうすりゃこんな風にできるんだろなあ。

遠くから見るとあんなに綺麗なのになあ……。


「おお、頑張ってるじゃん! もう一袋終わったのか? すげえなあ」


ん、誰だ? ……ああ、ノンキか。


「このペースならさっさと終わるよな。はい、俺の分もよろしく」


は? 何言ってんだ? こいつ。


「おれさあ、まだ風邪気味なんだよね。 そんなやつに重労働させちゃいかんでしょ」


お前のどこが風邪気味なんだ? 咳もしてないし、声も枯れてねえじゃん!


「ほい、じゃあよろしく」


「……って、おい! 袋投げ捨てんな! これがゴミになるじゃん!」


「昨日お前もサボったくせに真面目だな。んじゃな」


「おいっ! 自分の分は自分でやれよ!」


大体お前『も』ってなんだ!? ノンキ、風邪って嘘なんじゃねえか!

ちくしょ、ノンキのやつ、もってるゴミ袋全部投げ捨てやがった。


ノンキを追いかけようと思ったけど、ゴミ袋が飛んで行ってしまう。

やばっ! 取りに行かないと!


慌てて追いかけた。

ゴミを拾いに来てゴミを増やすなんてありえん!





「てやっ!」


最後のゴミ袋をジャンピングキャッチ! さすがおれ!

ふぅ……危ない危ない。

ひぃふぅみぃ……全部で9袋ある。サボったやつは9袋って事か。


くぅ……ノンキのやつ、既に帰りやがった。

何であいつの分まで俺がやらなきゃいけない!?


「…………しょうがない、富士山の為だ」


ノンキがやらないからと言って、俺も帰ると言うのはありえないからな。

……頑張ろ。

































もう夜の20時だ。

ようやく15袋。もう周りは真っ暗で、ゴミを見つけるのも難しい。


「はぁ、なにやってんだかなあ、俺」


いつもなら今頃サツキと……サツキに会いたいなあ。


「やほ、ヤス兄。まだやってたの?」


「へ? ……ってサツキ!? 何でこんなとこにいんの!?」


「ケンちゃんに聞いたんだ。ヤス兄が富士山にいるって。それで、クロちゃんのお母さんが送ってくれた。クロちゃんとサキちゃんもいるよー」


「ども、ヤス先輩」


「昨日振りですねー、元気にしてましたか?」


おお、クロちゃんにサキちゃん。……びっくりだ、ライトまでわざわざ持って来てくれてる。


「ヤス兄、昨日、無理なら無理って言ってくれればいいのに。毎回毎回私のわがまま聞く必要ないよ?」


「あははは……」


結局ばれちゃったかあ。


「だから今日はヤス兄へのお礼って事で、手伝うよ!」


「え? いいのか?」


「もちろん! その為に来たんだもんね」


ありがと……サツキ。


「私たちも手伝いますよ」


「ヤス先輩、代わりに今度なんかごちそうしてくださいね」


「あ、うん……ありがと」


……ゴミ拾いみたいな単純作業でも1人でやってると楽しくないけど、みんなでやってりゃすぐだったな。

昨日といい今日といい、ほんとありがと。サツキ。


クロちゃんとサキちゃんもありがとな。

……うん、終わってみりゃ、いい一日だった。

こんにちは、ルーバランです。

2話連続で、ほのぼのと終わりました。

本来はこの話はヤス君が何かしらドジして終わりにするはずでしたが、気付いたらこんな話に。


後、ノンキ久々に出てきました。覚えてる人、いるでしょうか?

まともにしゃべったのは初めてです。

また全然でなくなると思いますが。その内活躍……するはずなんですけどね。するかなあ……。


ところで、富士山のゴミ。すごいらしいです。

こんなページとか見ると、結果が分かります。

http://fujisan1.docomo-sys.com/eco/Top.aspx


家電に家具、タイヤに車……観光に来てポイって感じじゃなくて、明らかに投棄を目的で捨ててますね。


きれいにしていきたいです。


それではまた、今後ともよろしくお願いします。

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小説内で使わせていただきました。ありがとうございます
カカの天下
オーダーメイド
ええじゃないか
うそこメーカー
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