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9話:家にて

あの後、俺とケンは一緒に下校した。


ケンの家は今日は昼は誰もいないらしいので、俺の家で昼食を一緒に食べる事にした。


家に着くと、もうサツキが帰ってきていた。


「ただいま」


「おかえり、ヤス兄。……って遅いよ。12時には帰るって言ってたのにもう1時だよ! 昼、ヤス兄が帰ってくるの待ってたから、もうおなかと背中がくっついちゃってるよ!」


「あー、ごめん……。入学式が1時間延びたんだ。新入生代表が誓いの言葉を言うのに、1時間以上もしゃべりやがった」


「言い訳はいいから、早く食べようよ。準備全部しちゃったよ」


「あ、そうだな。ごめんごめん、んじゃ食べようか」


「うん!」


サツキは嬉しそうにとてとてと戻っていった。

俺は靴を脱いで、玄関をあがって居間に向かう。


「おい! そこの2人、俺を無視するな!」


「ん? なんか空耳が……」


「きっと空耳だよ、ヤス兄、私には何にも聞こえなかった!」


「そだな」


「そうそう」


「お前ら、いい加減にしろ! このケンちゃんを無視するな!」


「自分でケンちゃんって言うなよな、気持ち悪い」


「サツキちゃんにはケンちゃんって呼ばれてるからいいんだよ!」


「ごめん、ケンちゃん、今のは私も気持ち悪かった……」


「おい……ほんといい性格してるな。おまえら兄妹は……」


軽くケンをへこませといて、居間へ行く。

今日、学校で散々いじられたお返しだ。

ケンは玄関で落ち込んでのの字を書いている……あんなんきっとポーズだろ、わざとらしいやつめ。

少し放っておいたら本気でへこみ始めたので、慌てて俺は玄関に呼びに行く。

同時にぴょこっと居間から、サツキが顔を出して、ケンに呼びかける。


「ケンちゃんごめんね、からかいすぎた。一緒に昼食べよ?」


「ほら、いつまでもうじうじするな。さっさと飯を食べるぞ」


それぞれがケンに声をかけると、途端にケンは嬉しそうな顔になり、居間へ入っていく。

……なんか、しっぽが着いてたら、おもいっきり振ってそうだな。今日、自分のことを犬って言ってたけど、本当に犬みたいだ。


居間の上のテーブルにはサツキが作ってくれたサンドイッチの数々がある。大皿2枚に山盛りになって載せられている。

急遽ケンを呼んだはずなのに、3人でも余裕を持って食べれそうだ。むしろ、食べきれるのか?

もしかして、俺がケンを呼ぶって感づいてたのかな?


「それじゃ、いただきまーす」


『いただきまーす』


手を合わせてそう言うと、各々が自分の好きな食材のパンを取って食べ始める。

俺はツナサンド、サツキは卵サンド、ケンはハムチーズサンドを取った。

やっぱりツナサンドは最高だ。ツナとマヨネーズが絶妙に絡まり合っている。どうやら、自分は油分が好きなようで、そんなんばっかり食べてると肥満になるよとサツキにたびたび注意されているがやめられない。


黙々と食べていた俺は、パンばかり食べていたからか、口の中がパサついてきて喉が渇いてきた。

サンドイッチにはやっぱり牛乳かな、と俺は冷蔵庫から牛乳を取り出し、右手に1リットルの牛乳パック、左手にコップを3つもって居間に戻る。


基本的に食事中の会話はケンとサツキの2人でしていて、お互いの今日の出来事をしゃべっている。この3人で集まると、俺は聞き役、もしくはツッコミに徹する事が多い。

今は、サツキが新入生について話しているようだ。


「……でね、新入生の子達の胸に花をつけてたんだけど、緊張しちゃってて反応が初々しくて、もーとってもかわいかった。あー、自分にもこんなときがあったんだなーとしみじみ思っちゃった」


「来年になったら、今度はまたサツキちゃんがその初々しい反応をする事になるよ。高校入学の時もやっぱり緊張してるから、慌てちゃったりするんじゃないかな」


「あー、やっぱりそんなもんなのかな? ヤス兄とケンちゃんはどうだったの?」


サツキが俺にも聞いてきたので、素直に答える事にした。


「ケンは全然緊張してなかったぞ。むしろ中学校の時と同様に、ハイテンションで付き合わされた俺はとても疲れた」


「ヤスも俺にツッコミしまくってたな。まるで緊張なんてしてなかった」


「別に高校生活に大した期待を抱いてないからじゃないかな? 適当に行事に参加して、適当に卒業するつもりだった」


「ヤス兄! まだそんな事言ってんの? 駄目だよ、もっと楽しまないと! 高校生活は人生で1回しかないんだからね」


「いや、別にそれでいいし。それより、高校でも部活に参加しないといけないってのが面倒だな。帰宅部ですませるつもりだったのに、帰宅部って部活ないかなー」


「ほら、青春を謳歌しなよ! 将来振り返ったときつまんないよ」


「おじさんみたいな事言ってるな、サツキ。とうとう精神年齢が40になったか?」


「老けてるヤス兄に言われたくない! ねえ、ケンちゃん。こうなったらケンちゃんだけが頼りだよ。ケンちゃん、このダメ兄にどうにか青春を感じさせてあげて」


「OK! サツキちゃんのお願いなら、ライバルどもを蹴散らして、たとえ火の中水の中、森の中草の中あの子のスカートの中……」


「スカートの中は犯罪! っていうか変なネタをいれるな!」


「ケンちゃん、ほんとに大丈夫? 私、結構真面目にお願いしてるんだけど」


「大丈夫、ちゃんとどっかの部活にいれて、きちんと参加させてやるよ。もちろん、俺と一緒の部活にいれて、さぼるなんて事させないから。な、俺たちは昔から2人で1つだったんだから、アキラ」


「ああ、シュウジ……ってだから、ネタをいれるな!」


「ノッたくせにー、責任転嫁するなー」


「うるさい!」


俺とケンの口論が始まった。と言っても、俺が一方的に怒鳴ってただけだが。


「まじめに考えてるのかな……ケンちゃんに頼むだけでいいか、ほんと心配……」


サツキがぽつりともらしたセリフ。しっかりと聞いたケンは素早く反応した。


「大丈夫! このケンちゃんに任せなさい!!」


『だから自分でケンちゃんっていうな! きもい!』


2人同時につっこまれ、ケンはへこんだ。まったく、学習能力がないやつめ。

こんな風にわいわいやりながら昼食は消化されていった。あれだけあって食べきれるかと思っていた量だったが、きれいに食べきってしまった。

昼食が遅くなって、腹のすきっぷりがよかったのかもしれない。


昼食が終わった後は、3人で夕方までボードゲームをして遊んだ。3人で遊ぶなら、やっぱりダイヤモンドゲームだ。

途中までは普通にやっていたが、ケンとサツキが途中から負けが込んでくると、2人でタッグを組んで邪魔し始めた。

一人が俺を妨害して、一人がその間に勝ちを目指す。妨害する人は、完全に勝ちを譲る形になるが、確実に2回に1回は勝てる算段だ。

そんな事されたら、俺に勝ち目はない。

なんか腹が立ってきたので、ケンの事を暴露する事にする。


「ケンってさー、巨乳好きだよなー」


「うえっ!? 何!? 突然!?」


「や、俺たちの担任の先生さ、めちゃくちゃ巨乳だったんだよ。一歩歩くたびにプルプル震えててさ。」


「そうだったかな」


「そうそう、ケンのヤツ、延々と胸を凝視しちゃって、もうすごい顔がにやけちゃってんの。まずいと思ったのか、顔を1回両手ではたくと、真顔になってさ。でも目だけはずっと胸を追ってんの」


「って、何で今ここで話すんだよ!? そんな事ばれたらサツキちゃんに白い目で見られるじゃん!?」


「ん? ただの憂さ晴らし」


「それだけのために話すなよ……それに、途中からはヤスの想像だろ? 別にそんなに凝視なんてしてねえよ!」


「またまたー、何言ってんだよ。あげくの果てには『俺はあなたの犬になります』って叫んでさ。しらふでよくそんなセリフが言えるなー」


「うわーケンちゃん、そこまで言うとさすがの私もひくよ……」


「あ、あの、でも、巨乳だぞ! サツキちゃんは見てないから分からないかもしれないけど、もう巨乳なんて言葉を通り越して、爆乳って感じだぞ! あれを見てドキドキしない男はいない! そうだろ、ヤス!」


「んーと……いや、俺は別に……」


ドキドキはしなかったな。あれだけでかいのは珍しいなーと思ったくらいで。


「はーっ? お前のほうこそありえねえよ、お前の頭にびっくりだよ! お前、どんな精神構造してるんだよ」


「だってヤス兄は、ちっちゃな胸のほうが好きなんだもんね」


くそ、サツキは突然何言い出すんだ!?


「え、そーなんだ?」


「いや、違うって! サツキも変な事言うなって!」


「違わないよー、本棚の本の中にカバーを変えて、さらに家族に見つからないように私たちじゃ手の届かない一番上の段に他の本に混ぜて隠してるでしょ。まだ中身はケンちゃんに教えてなかったんだけど、あれの中身ね……」


「いや、言うなって! ってかお前ももうちょっと恥じらいを持てって!」


「まあ、何となく中身を推測できたからいいけど、ヤスってそう言うのが好きだったんだな」


「だから、もうちょっとお前らさ……!」


「ヤス兄がむっつりすぎるんだよ。女には興味ありませんみたいな顔しちゃってさ。ケンちゃんほどにはならなくていいけど、もっとオープンにならなきゃ」


「たしかに、ヤスってむっつりだよなー。むっつりなやつほど、実はエロイってよくあるよな」


「そうそう、ヤス兄って絶対めちゃくちゃエロイんだよ!」


「…………」


くそう、ケンをいじるはずが何でこんな事に……ほんと、こいつらの相手は疲れるよ。

まあ、ケン1人でもサツキ1人でも手に余るんだから、2人そろったら、手に負えないのは当たり前だな。


結局いつの間にかボードゲームもいつの間にかそっちのけで、いろいろしゃべる事になった。

夜が更けて、ケンが帰り、俺たちも寝る事にした。


明日は部活紹介か……。俺にとってはサツキ、父さん、母さん、ケンとケンの家族くらいいれば十分で、他の人とは親しくなんてするつもりないんだが。

それ以外の人と嫌でも話したりしなきゃいけない部活は面倒でしょうがない。


なるべく、人と話さないですみそうな部活を探すかな。


こんばんは、ルーバランです。

やっと入学式1日目が終わりました。

長い……9話で1日ってどれだけ長いんだって自分にツッコミ入れたいです。

回想が4話入っているのを考えても、1日に5話かかってます。


だんだんと1日の経過は速くなると思います。


今後ともよろしくお願いします。

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小説内で使わせていただきました。ありがとうございます
カカの天下
オーダーメイド
ええじゃないか
うそこメーカー
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